あとがき
このあとがきは6月9日のblogと同じ内容+αです。
「8分前の太陽」31話をもって本日完結。
今の想いを言うならば、安心したが、一番大きい。
それくらい、気持ちを割いた連載だった。
「8分前の太陽」の話は確か友人がしてくれたものだった。
視覚と光と時間のとても論理的な話は、私にとってはとても倫理的なものだったのを今でも覚えてる。
私たちは1cmの距離にさえ過去を見ている。
それを実感させるのは今見えている8分前の太陽。
頭じゃわかるけど不思議な感覚だった。
いつか「8分前の太陽」を題材に話を書こうと決めた。
「クローバー」を書き上げたとき、自分と同じように、大切な人を亡くしたことのある人が思っていた以上にいることを知った。
書きたくて、書かずにいた大切な人を亡くしたあとの話。
再び大切な人に出会う話。
書きたいと想うようになったら、あとは行動が早かった。
元ネタは宍戸夢「さよなら」
本当は宍戸の元に亡くなった彼女そっくりのヒロインがやってくるという設定だった。
元々死ネタの短編のつもりだったので、大幅に内容を抜粋。
一番書きたかった部分は書けないままだった。
宍戸夢の設定を変えて、名前を一緒にして外見は雰囲気だけが似ていることにする。
言葉の持つ力を借りようと思った。
外見だけじゃなく、音や声の持つ力。
それに頼るようにして、ヒロインの想いにそって、ブン太の気持ちを追いかけ、もう1人のヒロインの想いを重ねていった。
設定だけに頼って、先の話をあまり深く考えていなかったためか、
10話をこえたあたりから言葉に詰まることが多くなる。
ブン太に、かける言葉が見つからない。
ブン太の気持ちが見つからない。
ブン太の想いに届かない。
ずっと人を好きでいるってどんなことなんだろう。
忘れないってどういうことを言うんだろう。
何がブン太を動かすのか。何がブン太を変えるのか。
一度書き終えた話を全部消したときは、自分で自分に驚いた。
確か17話。赤也視点の話。
ヒロインだけの言葉じゃ足りない。
考えた末に赤也に暴言を吐かせることにした。
ブン太を追い詰めさせようと思った。
それでもやっぱり言葉が足りない。喉に詰まる。
描写が乏しい。何かが足りない。
書いて、書いて、書いて。
納得がいかないのに、それ以上は見つからない。
「文才ないな。」がくちぐせで。
仁王も動かした。
ブン太を動かせるのはこの人だけだった。
私の中のブン太はいつも、まわりが差し出しているはずの手を振り払ってた。
「放っておいてくれ、俺は大丈夫だから。」
誰かを好きになることが、彼女を忘れていくことにつながると、無意識のうちに考えていたブン太は、ヒロインに知らずに魅かれていくことが怖かった。
文にすればこんなに単純なのに。
いざ、彼の気持ちになると複雑すぎた。
保守的なブン太に対抗するには、多少なりともヒロインに頑固になってもらうしかない。
しっかりしてるようで、抜けてて。
自分の気持ちに誠実で、素直で。
自分を曲げない。
そんなヒロインにしたかった。
29話が一番ドキドキした。
こんなに単純でいいのか。
私の今までの描写が繋がらなくてはならないはずの29話。
更新してからも何度も何度も書き直して、読んでくださっている方に申し訳なかったことは記憶に新しすぎる。
30話は30話でブン太に言わせたいこと、私がブン太に伝えたいことがありずぎて困っていた。
・・・困っていたんだ。
「8分前の太陽」を書いている間、ずっと。
言いたいことがたくさんありすぎて、その割りに、言葉にならなかった。
私の想いがそのままヒロインやブン太にでてることもある。
「言葉にならない。」
この言葉、連載で多用して。
でも、それが本心だった。
背伸びも、後ずさりもしなかった。
かなり私の精一杯だった。
ブン太、辛いよね。
ヒロイン、辛いよね。
赤也、辛いよね。
仁王、辛いよね。
幸村、辛いよね。
柳、辛いよね。
ジャッカル、辛いよね。
柳生、辛いよね。
真田、実は辛いよね。
悪者なんかいないのに、なんでこんなに苦しいのか。
背中を押すこと。
見守ること。
拒否すること。
突っぱねること。
悪態をつくこと。
ふざけあうこと。
ケンカすること。
騙すこと。
傷つけること。
泣くこと。
笑うこと。
怒ること。
誰かを失うこと。
誰かを好きになること。
誰かを想うこと。
いろんなことを書いた。
最後。これだけ言いたい。
・・・疲れた。
考えて、考えて、考えて。
それでも最後まで納得のいかない連載だった。
言いたいことがまだある気がする連載だった。
自分の未熟さを痛感する連載だった。
人の気持ちの重さを改めて考える連載だった。
・・・また、書き直すこともあるのかな。
ここまで読んでくださった皆様、
「8分前の太陽」を見守ってくださった皆様、
web拍手の企画に参加してくださった皆様、
本当に本当に
ありがとうございました。
皆様のおかげで完結できた連載です。
無事にと言うには、少し管理人が自身へのダメだしが大きすぎるのが難点ですが、
それでも、ここまで書けたことが奇跡に近い連載です。
最後まで読んでくださった皆様に心から感謝しています。
ありがとうございました。
最後に。
ブン太。
よくがんばってくれました。
ありがとう。
+α・Message For You
ブン太へ
今はいない人を想い続けることはとても辛い。
もう、どこを探しても会えないから。哀しくて、切なくて。
でも、大切だった人を想い続けようとするブン太の姿。
書いていてもどかしいのに、ブン太に何度もがんばれって言っていた自分がいます。
お別れはできなくても、受け止めて、前を見て「ありがとう」を声にして。
今度は繋いだその手を離さずに歩いていけると思います。
最後まで一緒に駆け抜けてくれたブン太へ、ありがとう。
赤也へ
あなたの一途さがなかったら、この話は終われなかった。
あなたの笑顔がなかったら、涙がなかったら、誰も進めなかった。
いつもみんなのことを考えて助けてくれた。
自分の想いをしっかり見つめながらも、人の想いに敏感で。
今度は幸せな話を書くよ。
私の背中さえ押してくれた赤也ヘ、ありがとう。
仁王へ
詐欺師。その異名を意識したかった。
あなたなら悪者さえかっこいいと思った。
だから、辛い役回りをさせました。
本当は全てを見ていて、すべてを見透かしていて、ブン太に気付かせてくれた。
いろんな想いを、大切にしようとしてくれた。
苦しい役割を果たしてくれた仁王へ、ありがとう。
ジャッカル&真田へ
何を言えばいいんだろうか。
何をすればいいんだろうか。
人が人のためにできること。それをずっと考え続けてくれたジャッカル。
自分にできること、自分なりに探り当てた真田。
口数が少なくて、行動も私がうまく書いてあげることができなかったけれど。
それでも、2人がいたから。今みんながコートにいられるんだと思う。
あるべき場所でいてくれた二人へ、ありがとう。
同じ名前の彼女へ
春のような人。
ブン太がたくさんたくさん好きになって、愛して、想い続けていた人をどう描こうか迷ってた。
執筆を続けるうちに、自然に形になったのは、あなたも私の中で勝手に動いてくれたから。
あなたも、私の手を離れて、きちんと想いを持った人物だった。
死ネタはたくさん書いてきたけれど、あなたの死ネタが一番頭に残ってる。
好きな人の幸せを願うこと。・・・本当は辛いことなんじゃないかと思う。
それでも、いつも、待っていてくれた。
ブン太の想いを待っていてくれた。
「ありがとう」の言葉、きっと笑顔で受け取ってくれたはず。
待っていてくれたあなたへ、ありがとう。
さて、他レギュラーキャラへは番外編を書いてから書きます。
全員は無理かもしれないけど、ちょっとずつがんばります。
ここまで読んでくださって、本当にありがとうございました。