「ブン太ってさ、毎日お菓子もらってるよね」
ブン太の部屋はいつも来る度に
甘いお菓子の匂いでいっぱい
ブン太はモテるし、女子からたくさんお菓子をもらってるのも知ってたから
その質問はからかい半分だった。
でもね
「しょうがねぇだろぃ。モテるんだから」
真顔でそんなこと言われたら
泣きたくもなるのよ
『甘い君に』
「・・・。」
「・・・・」
「なんだよ、まだ怒ってんのかよ」
怒ってるんじゃなくてすねてるんだもん。
ブン太の部屋。
床に座るあたしとブン太。
あたしは足を抱え込んで顔をうずめて
ブン太に反抗心を表す。
「勝手にクッキー食べ始めるぞ?」
目の前の机にはあたしが作ってきたクッキーが入った箱が開いていた。
「・・・他の子からもらったお菓子でも食べてれば?」
「・・・なんだよ、その言い方。」
なんだよ、すねてるんだってば。
「はぁ・・・」
溜め息なんかつかないで
あたしだって内心自分に溜め息。
ブン太がモテるのも
お菓子をたくさんもらってるのも
あたしが知ってるどころか
周知の事実。
「・・・食べてもいいよ、クッキー。」
「顔あげて言えよ、。」
足を抱え込んで顔をうずめて。
甘い匂いが広がるブン太の部屋。
「・・・すねてただけだもん」
顔をあげて
机の上のクッキーに手を伸ばして。
「はい、ブン太。」
ブン太がモテるのも
お菓子をたくさんもらってるのも
周知の事実。
けど、ブン太本人に真顔で改めて言われたら
泣きたくもなるのよ
ブン太の部屋の甘い匂い
あたしがたまに作ってくるお菓子のせいだけじゃないんだって
確認することになるから。
ブン太の目の前にあたしはクッキーを一枚差し出す。
ブン太はあたしの顔を見てからクッキーを見て
口を開けた。
ブン太がクッキーをかじる
「うまい。」
「・・・ホント?」
「マジ。も食べてみ?」
ブン太が目であたしに促したのは
あたしの手にあるブン太の食べかけのクッキー。
「・・・・」
「。」
自分の手を口元へ
ブン太の食べかけのクッキーをかじる
「な?うまいだろぃ?」
ブン太があたしの顔を覗き込む。
「うん・・・うまく、できた・・・かも。」
「。」
「(!!)っ・・・ブン太!」
あたしの手にあったクッキーの最後のひとかけら
ブン太はあたしの指ごと口に含んでクッキーだけを持ち去った。
「やっぱうめぇ。」
「ブン太・・・」
「例えばさ、大量の女子が俺を囲もうとするだろぃ。」
「はい?」
ブン太が突然例え話を始める
大量の女子?
「そんでその女子はみんなお菓子を抱えてる」
「・・・?」
「俺はお菓子が好きだからそのお菓子を全部もらうだろぃ。」
「確定なんだ、それ。」
「そこにもいる」
「・・・・」
「女子はみんな俺を見てるけど、俺はお菓子しか見てない」
ブン太?
ブン太があたしの顔を覗き込んで笑った。
「俺と見つめ合えるのはだけ」
視線を交わす
恥ずかしくて顔を下げたくなるのに
ブン太の手はあたしの頬をつつんでそれを許さない。
「もう、すねてねぇ?。機嫌治った?」
「・・・とっくに」
甘い匂いのつまった部屋で甘いキスを交わす
そんな甘い言葉を
お菓子のように甘い君に言われたら
泣きたくもなるのよ。
うれしくて。
end.