斜めに降りていく夕日が窓からさして
あなたが泣きそうだったのを覚えてる。
『アーメン』
「長太郎!!おいっこら!!」
「あ…宍戸さん。」
「…お前、俺の話全然聞いてなかったろ」
「え?」
「…はぁ」
頭を押さえた宍戸さん。
俺の頭がうまくはたらかない。
えっと、今は。
…そう部活中だ。
「…おい、あれ。」
「・・・・・・・」
「長太郎!話聞け!!」
「(びくっ)はっはい!!」
宍戸さんの喝がちょうどいいくらいに
俺を正気に戻してくれる。
「あれ、だろ?」
「え…。」
「あそこの窓」
コートから見上げる校舎の二階の窓。
そこは確か三年生の教室。
その窓から
あなたがこっちを見ていた。
(あ…)
目が合って、さんは隠れてしまった。
(ばしっ)
「っ…いって…」
背中を思いっきり叩かれた。
「宍戸さん?!」
「行ってこいよ」
仕方がないと言うような
あきれた笑顔で
宍戸さんが俺の背中を押してくれてる
「今の状態じゃお前使いものにならないからな」
「っ…すいません…!!」
そこからは全力疾走。
目指す場所は決まっている。
付き合っていた。
さんと。
俺の大好きな人だったので
俺はいつだって幸せだった。
でも。
「さん!待って…!!」
見つけた彼女の背中。
声をかけても振り向いてはくれない。
廊下を走って、追いかけて。
「…離して」
「嫌です」
彼女の腕を掴んで足をとめる。
“別れよう。”
突然あなたが昨日言い出した。
「もうなんの関係もないでしょ!?」
「じゃあなんで見てたんですか!!」
「見てなんかっ…」
「嘘つかないで下さい!」
頭は何も考えられなくて
ただ大好きなあなたが
泣きそうな顔で別れようと。
「俺は今だってさんが好きです」
「…」
それ以上、そんな顔をさせていたくなくて
理由も聞かずに別れた。
「…ちゃんと聞かせてください。俺のこと嫌いになったんですか?」
「・・・違うよ」
斜めに降りていく夕日が窓からさして
あなたが泣きそうだったのを覚えてる。
「あたしじゃなくてもいいと思ったの」
「なんで…」
「だから、長太郎があたしのこと好きでいてくれてるうちに別れたかった」
「俺が想っているのはさんだけなのに?」
「長太郎を想ってる人はたくさんいるんだよ」
「…だけど俺はさんしか見てない。…見えない」
もし俺にたくさんの気持ちが向けられているとして
それでもこの想いは変わるはずがない。
「さんじゃなきゃ嫌です。」
あなたが好きです
それだけが俺の真実だから。
うつむくあなた。
そんな、泣きそうな顔がさせたいわけじゃない。
「俺!さんと一緒なら幸せになれる自信があります!!」
「!!」
「しっ幸せにしてあげられる自信はないですけど…」
あなたが神を信じているなら誓ってもいい。
「…さんが好きなんです」
いつだって
あなたしか見えないから。
「…幸せにしてくれなきゃ、困るよ」
そう言ったあなたの目には確かに涙。
でも昨日とは違って
さんは悲しい泣き顔じゃなかった。
「幸せにします。」
好きです。
こんなにも、あなただけ。
あなたに、
言い尽くせない想いと
二度と悲しい顔はさせないという約束を
幸せを願う祈りと
幸せにする誓いを。
日が沈む時もまたやってくる明日も
あなたの側に。
父と子と精霊との御名によりて
アーメン。
end.