ああ、あたし。




ついてない。
































『an・ラッキーディ』































夕日が斜めに下りて来て



オレンシに染まる教室。



そんな教室の一番後ろの窓際の席で



突っ伏しているあたし。





「・・・はぁ」





短くも長い一日の終わり。



あたしは、



機嫌が悪かった。












































































































































































































































「すみません!・・・寝坊しました。」


「どうした。珍しい」


「・・・すみません」


「早く席につけ」


「はい・・・」





静かな教室中に響く教師とのやりとり。



今日のあたしはついてなかった。



昨日の晩寝る寸前に明日、宿題があたっていることに気付いた。



その宿題が思ったより難しくて眠ったのは明け方近く。



そのせいで寝坊。



そして遅刻。





。」


「・・・なに?」


「おはよ」





急いで授業中の教室に入って自分の席に座ると



隣の席の男子が小さい声であたしの名前を呼ぶ。



おはよ、と



遅刻して落ち込んでるあたしに向かって



そのオレンジの髪よりまぶしい笑顔をあたしに向けたんだ。





「・・・おはよ」





今日のあたしはついてなかった。





「それじゃあ。宿題を黒板に書いて。」


「はい」





明け方まで頑張って解いた数学。



解答を書出したはずのノート。



どんなにカバンの中を探っても



・・・見当たらなかった。






「・・・?」


「・・・・」


「・・・忘れたの?」






ふわりと揺れたオレンジに



沈黙のあたし。



・・・なんで。



確かにカバンにいれたと思ったのに。






「・・・。俺頑張って解いたのがあるけど」


「・・・・ラッキーで数学は解けるの?キヨ。」


「今日は俺、占い1位だよ!」






だからなんだと



言うんですか。



あたしは最高についてないのに。



あたしの隣の席の男子は



ふわりとオレンジの髪を揺らすと



あたしの机の上にノートを置いた。





「・・・・」





けして



きれいな字じゃないけど



頑張ってノートの隅に計算してるのが見えて。





「・・・・ありがと」





あたしはキヨの答えを黒板に書いた。





!あってたね!!ラッキー!!」


「・・・ああいうのはラッキーなんて言わないよ」





あたしはキヨを見ずに髪をいじりながら答えた。



いつもなら朝から髪をいじってあげたりして来るのに



その時間すらなかった今日。



自分の髪がうっとうしくて仕方がない。






「・・・今日さ」


「・・・何?」


「・・・・・・は、髪下ろしててもかわいいね!」






・・・・うっとうしいけど。



ふわりとオレンジが揺れて



キヨは笑った。



ああ、あたし。



・・・ついてない。






「・・・?どうした?」





手を止めたあたしに友達が気付く。





「・・・しょっぱい」


「卵焼き?」


「失敗したみたい」





お昼に友達何人かと食べるお弁当。



時間がどんなになくても



髪をいじれなくても



お弁当は自分で作るのが我が家の決まり。



いつもなら友達にわけるくらい



あたしの自慢の卵焼きなのに。





「・・・・・」





今日のあたしはついてなかった。



すべては宿題に気付いたのが遅かったせい。



寝坊したのも



宿題を忘れたのも



髪をいじれなかったのも



卵焼きを失敗したのも。













なんて、ついてない。












宿題を思い出すまで



あたしが何をしていたかと言うと



・・・言うと・・・
















































































































































































夕日が斜めに下りて来て



オレンシに染まる教室。



そんな教室の一番後ろの窓際の席で



突っ伏しているあたし。






?」


「・・・なんだキヨか」


「あれ?俺のこと待っててくれたんじゃないの?」


「・・・じゃないの」






ふわりと揺れたオレンジは



教室を染めるオレンジよりも鮮明で。



顔をあげたあたしに



苦笑いを見せる。





「今日元気ないんだね」


「・・・そういうキヨは元気ね」


「・・・これでも心臓が止まりそうなくらいうるさいけどね」





ガタッとあたしの隣の自分の席に座るキヨ。



見せたのはまた苦笑い。






「・・・キヨ、部活は?」


「今日はオフ」


「・・・ふーん」






寝坊をした。



明け方まで起きてたから。



宿題を忘れた。



寝ぼけてたから。



髪がいじれなかった。



寝坊したから。



卵焼きを失敗した。



寝ぼけてたから。



全部、全部。





「・・・・。俺答えをもらいに来たんだ。」




































































































キヨのせい。


























































































































昨日の放課後



キヨが教室に1人残ってた。



あたしは自分の帰り支度を終えて帰ろうと教室に来た。



その日は夕日がとても綺麗で。



そんな夕日に照らされる教室で1人立つキヨは



いつものふざけた感じなんかみじんもなかった。





「あれ?」


「・・・・


「キヨ、部活は?」


「もう行くよ」





たわいもない会話。



ふわりと揺れるオレンジ。















































「ねえ、。好きなんだ。君のこと」













































































何を言われているのかわからなかった。



声がでなくて



何も考えられなくて、



息をしているのかさえわからなくて。






「・・・・・ごめん、いきなり。・・・明日。返事を聞いてもいい?」






ただとまどって



おどろいて。



キヨが苦笑いしながらあたしに言った。



キヨが部活に行くために教室をでるまで、



あたしは動けなかった。



何も、わからなくなって。



ずっとキヨのことを考えていた。



自分が当てられてる宿題に気付くまで。













あたしは、キヨのことを考えていた。











「・・・・・・・・・


「・・・・・今日、ついてないの」


「え?」









あたしが目に映すのは



教室を染めるオレンジ。



キヨがあたしを見ている視線がとても恥ずかしく感じた。





「寝坊して遅刻して。髪弄れなかったし」


「・・・おろしててもかわいいよ?」


「・・・宿題忘れるし卵焼き失敗するし。」


「卵焼き?」


「・・・・・・・・・・・キヨのせいだよ」





視線に映るのは



夕焼けより鮮やかなオレンジ。



キヨはあたしの言葉に驚いた顔をすると



また苦笑い。



ふわりと揺らすオレンジに目を奪われて。









「・・・・・ごめん。やっぱり俺。迷惑だったね。」


「・・・・・・・・・」


「ごめん、。そんなつもりじゃなかったんだけど」








キヨの、せいだよ。



寝坊するし、



遅刻するし



宿題忘れるし



卵焼き失敗するし、



こんなの、あたしらしくない。







「・・・・・・・・ついてない。キヨのせいで」







あなたのことを考えてたせいで。





っ・・・・」


「ねえ、キヨ。今日占い1位だったんでしょ?」


「・・・・・・え?」


「これからあたしのことラッキー(幸せ)にしてくれる?」





時間が、止まったみたいだった。



夕日が斜めに降りていく教室で、



あたしの目にはオレンジ。



ふわりと揺れたその髪があたしの額に触れる。



キヨの手があたしの頬を包み、



とても静かな、



キスをされる。



何度も、何度も。





‘俺のこと待っててくれたんじゃないの?’





そうよ、



待ってたの。












































































































































































































「世界一幸せにするよ」



















































































































































































































一つの言葉を何倍にも何百倍にも、無限大にもして返してくれるキヨを。



ついてないあたしを幸せにしてくれるだろうあなたを。



ずっと、考えてた。





「ラッキーじゃなくてハッピーだね!





宿題に気付くまで。





「キヨ。・・・本当は今日部活あるでしょ?」


「・・・ばれた?」


「・・・・・早く行こうよ」


「・・・・・・一緒に行ってくれるの?」





どう答えたらキヨはうれしそうにしてくれるんだろうって。



どうこの気持ちを伝えたらキヨはうれしそうにしてくれるんだろうって。



ああ、あたし。



ついてない。



本当に今日はついてなかった。



でもいいんだ。





「今日の分はちゃんと返してもらうから」


「ん?」


「・・・・・・・幸せにしてね。」





キヨのせいなんだから。



今日あたしがついてなかったのは。



あんなにも

















































































































































































































































































あなたのことを考えていたせいなんだから。






































































End.