一週間後




俺達の住んでるところで




花火大会もかねた一番でかい祭りがある。





















『ある夏の日』
















ー・・・って(あーあ。)」






授業の合間の休み時間。



のクラスを訪ねた俺。







クラスの奴等に囲まれて楽しそうに話していた。



笑って。






(・・・楽しそうにしちゃって)






はぁっと溜め息をついてもう一度深く息を吸いこんだ。






ー!」


「あっ、赤也」


「気付くのが遅えー。」


「どうしたの?」


に会いに来ただけ。」






俺の立っているドアの付近まで駆けて来た



俺の一言に少し赤くなった。






「そんなこと言って照れたりしないの?赤也。かわいくないな」


「本当のこと言っただけだろ。それに俺がかわいかったらキモい。」


「あ、そうだね」


「今の、俺傷つくところ?」


「あははっ」





よく笑う



前と比べたらずっと明るくなって



学校に来たら保健室じゃなくてクラスに来るようになって。



テニス部のレギュラー以外ともしゃべってる姿をよくみかける。






「そういえば一週間後に・・・」


「どうしたの赤也?」






の背中の向こう側で



さっきまでと話していた奴等と目が合った。



そいつらはすぐに視線をそらしたけど



よく見ると男ばっかり。






「(うわー)・・・むかつく」


「赤也?」





〈キーンコーン・・・〉





「あっ。またね、赤也」


「おいっ、・・・」





都合よくなった予鈴



俺にとってはタイミングの悪いことこの上なかった。



は以前より明るくなって笑うようになって



それはいい。



それはいいんだけど




















「・・・問題だ。」













































































































































































「‘ごめんね、赤也。あたし山田くんのことが好きになってしまったの’ ‘何言い出すんだよ、!’ ‘ごめんなさい!でも・・・ごめんなさい!’ ‘ー!’」


「‘気付いた時には手遅れだった。彼女は俺よりも山田に笑うようになっていた。なぜ?どうして?俺が、と一緒にいたはずだったのに。’」


「・・・何やってんすか。ブン太さんも仁王先輩も」


「「未来予想図」」


「意味わからねぇ。ってか山田って誰。」






例にもよって昼休みの屋上。



ブン太さんが身振り手振りで一人二役。



仁王先輩は心情ナレーション



未来予想図・・・って






「まさか・・・俺との?」


、モテてるみたいだな。赤也」






ぽんっと俺の左肩に手を置いたブン太さん






「最近は三年の間でもがかわいい、かわいいってみんな言っとるよ、赤也」






ぽんっと俺の右肩に手を置いた仁王先輩。






「そういえばは?まだ来てないようですが。」


「そういえば」





柳生先輩の問いに柳先輩がうなづく。



はいつも昼休みは俺達レギュラーと一緒に屋上で昼を食べる。



だが今日はまだ姿を現していない






「なんだよ、赤也。一緒にくればよかっただろ」


「俺が購買に行くって言ったら先に行っててほしいって。」


「・・・やばいな」


「やばいとよ」


「・・・何がっすか」






ブン太さんと仁王先輩が妙に納得したようにうなずいていた。



なんだかとてつもなく腹が立つ。






「赤也。祭りに誘った?」


「・・・まだっすけど」


「誰かに先越されてるかもしれないぜい?」


「丸井くんなんてことを言うんですか!」


を疑うような発言は感心しないな。」


「だから、最近はモテるからってだけの話!柳生も柳も思うだろぃ?」






真田副部長がもくもくと昼を食べ進めるのが目に入った。





「いや、も赤也と祭り行きたいとか思ってるだろ」


「桑原くんの言うとおりです。は切原くんと付き合ってるわけですし」


「推測で物事を語るには相当な根拠を準備しろ、丸井」


「参謀が言うと説得力あるとよ」





屋上で



当事者の俺は置いてきぼりで繰り広げられる会話に



動揺してないとは言い切れなかった。



笑うようになった



顔はもともと整っていて



最近は明るくて誰とでも話すようになって








‘誰かに先越されてるかもしれないぜい?’







・・・・いや



いやいやいや、それはないだろ。



と付き合ってるのは俺だし。



が好きなのは俺だし









‘ごめんね、赤也。あたし山田くんのことが好きになってしまったの。’








俺・・・だし。


















〈ガチャッ〉















「あ。。」


「クラスの人達と話してたら来るの遅くなっちゃった」


「「「「「「・・・・・・」」」」」」


「ん?何?」























・・・問題だ。

























(俺達よりもクラスメイトといたのかよ。)





「赤也?考えごと?」


「・・・祭り」


「え?」






屋上から教室へと戻る途中。



俺は珍しく黙って歩いていて



そんな俺にが話しかけて来た。






「あるだろ?一週間後に祭り。行ったことあるか?」


「花火大会と一緒にあるやつだよね。毎年精市と行ってたよ」


「今年はさ」


「うん?」


「今年は・・・」





〈キーンコーン・・・〉





「あっ。急ごう、赤也」


「おいっ、・・・」







都合よくなった予鈴



早くと駆け出してしまった



俺にとってはタイミングの悪いことこの上なかった。



放送機器を壊せって誰かが俺に言ってんの?



授業は退屈な地理。



カチカチと少し芯を出したシャーペンを動かすこともせずに



ただぼーっと考えていた。









(・・・200歩譲ってテニス部の先輩達に笑うのはよしとしよう)








のこと前から知っててわかってるし。



目を閉じるとの笑顔が頭に浮かぶ。



・・・別に笑ってくれてるぶんには構わない。



笑ってて欲しいし。



でも俺のいないところで笑って



俺以外の奴等がそれを見て。







「・・・・・」







は楽しそうだった。



毎日。



登校拒否してた時なんかよりずっと。



俺のわがままでそれは奪えない。



寂しさを思い出さずにいられるなら



それで構わないはずだ。



毎日学校に来るようになって



毎日誰かと話して



毎日笑って



毎日俺はこんな想いをして。










‘誰かに先越されてるかもしれないぜい?’










「(・・・祭り、誘わねぇと)」





















































放課後



部活に行く前にに会おうと思った。



会って祭りに誘って



俺に笑うに会おうと思った。






「え?山田くんってそうなの?」


「(山田?!)」





のクラスの教室前



廊下に聞こえてきた声は



ドアから顔を出すと



ともう一人男が話しているのが見えた。



しかも教室には二人きり



しかもは笑顔。






「あの、さん。今度祭りあるよね」


「(?!)」


「あ、うん」


「もしよかったら俺と・・・」






聞こえてきた会話に



いてもたってもいられなかった。


















「山田ぁあ!!!!!」


「え?赤也?」
















叫んだ勢いもそのままに



俺は駆け出し



の手を握ると山田をにらんだ。



俺がここにいたことに今気付いたばかりのも山田も動揺していたけど



そんなこと知るか。






は俺と祭りに行くんだよ!!」


「あの、赤也・・・」


「行くぞ、


「赤也っ・・・」







俺はの手を引っ張って廊下を歩いた。



別にどこかに向かおうとしたわけじゃなくて



ただ早くその場から離れたかった。



できるだけ遠くに。






「赤也?・・・怒ってるの?」


「・・・怒ってるよ」


「・・・何に?」





の手を引っ張っての前を歩いて行くから



俺にはの表情は見えなかったし



にも俺の表情は見えなかった。



誰の姿も見え無くなった廊下で



俺は足を止めてに振り返った。
















「お前が俺以外に笑うことだよ!」














の肩がびくっと跳ねた。



それを見てを怖がらせたことを知った。







「・・・・」


「・・・・悪い、怒鳴って」







が俺以外の奴と一緒に行ってしまうんじゃないかとか



疑ってたわけじゃない。



祭りに一緒に行こうとか



花火を一緒に見たいとか



にもそう思ってて欲しかっただけだ。











「(ただの嫉妬)」










は俺の顔を見ていた。



なんだか後ろめたくて俺はそんなから目線をそらす。



バカだなとか、嫉妬?とか



笑ってくれていい。



そしたら、言ってやる



俺はお前が好きだからしょうがねぇんだって言ってやる。











「赤也」










が俺の胸によりかかる。






?」


「赤也がそんなふうに怒るの初めてだね」






俺はの背中に手をまわして



の肩に顔をうずめた。





























































笑えば、いいのに。
















































































「バカだな。・・・嫉妬?」


「・・・・」


「あたしは」








バカだなって



嫉妬?って











「赤也がいるから笑えるのに」










そしたら、言ってやるんだ。
















































































































































































「・・・・俺はお前が好きだからしょうがねぇんだよ」




























































































































































毎日学校に来るようになって



毎日誰かと話して



毎日笑って



毎日俺はこんな想いをして。



毎日

























































を好きになっていくばかりで。





















































「・・・祭り。今年は俺と行かね?」


「・・・いいよ。」






の肩にうずめていた顔を上げて、



と顔を合わせる。



きっと、






「花火一緒に見ようね!」






きっときれいだ。






「絶対な」


「あっ!赤也!!部活は?」


「・・・・・・げ。やべ!」






の手をとって走り出す。










。今日は?」


「見てくよ。練習。」


「よし。じゃあこのまま一緒に行こうぜ」


「でもあたしと一緒だともっと行くの遅れちゃうよ?」


「・・・いいだろ別に。今急いでるんだし」









‘赤也がいるから笑えるのに’








それなら、いいやと思った。



その笑顔が俺のものであるなら。






「・・・・・赤也、赤也」


「ん?」


「お祭り楽しみだね!」






祭りに一緒に行こうとか



花火を一緒に見たいとか



そうやって笑ってて欲しいとか。



部活に遅れた俺は今までにないくらい怒られた。



そんなの平気なくらい俺はうかれてたんだけど。



部活に向かう途中で






























































































































































がそっと、俺の手を握り返してくれたから。








































end.                         この作品が気に入っていただけましたらココをポチッと。