密やかに。




そう約束した。




密やかに。




密やかに。












それが私の恋。






















『バラの罪』























「何これ?」


「バラやんか。」


「見れば分かるよ。どうしたの?」


「今日学校で女子からもらった。」





真っ赤なバラの一輪挿し。



侑士の部屋の窓辺に置かれていた。





「バラって・・・。」


「俺に似合うと思ったんやて」


「・・・・似合う・・・と言えば似合う。(跡部とまではいかないけど)」


「もらわんどこうとも思ったんやけど、バラに罪はないやんか。」


「(くすっ)侑士ってそんなにロマンチストだったっけ?」





真っ赤なバラの一輪挿し。



私は手を伸ばす。





「痛っ・・・」


?何やっとんねん」





私の右手の人差し指、赤い雫が浮き出てくる。





「何や。とげ取りきれてへんやないか、このバラ。」





真っ赤なバラの一輪挿し。



それに似た血の雫。





。」





侑士が私の右手をとって血の雫をなめとった。





「侑士・・・」


「なんで俺がもろうたバラでがケガすんねん。」





密やかに。



そう約束した。



密やかに。



密やかに。






「ゆう・・・し・・・」






侑士が私の指に舌を這わせる。



侑士の熱が頭をぼうっとさせる。





。」





耳元に移された侑士の声が心地いいくらいに意識をさらっていって。
























































赤だ。



ベッドの上の私の目線に入るバラの色。



赤だ。








「・・・なんや、エロい」


「え?」








侑士の目線はあたしの頭の隣。






の指の血がシーツについて。」






ぼうっとする。



あなたの声に。



浸される熱に。










密やかに。



そう約束した。





















「んっ・・・・あっ・・バ・・ラ・・・」


「ん?何や、




















真っ赤なバラの一輪挿し。



私は嫉妬することすら許されない。



密やかに。



そう約束した。






「バラがどうかしたん?」






赤だ。



ベッドの上の私の目線に入るバラの色。



赤だ。













侑士と付き合うようになったとき約束をした。



誰にも付き合っていることがばれないようにと。



侑士は人気があって、ファンの子や侑士のことを好きな人はたくさんいて



そういう子達に付き合ってることが知れたら私の身が心配だと侑士は言った。















密やかに。



そう約束した。














だから二人の関係は誰も知らない。



私と侑士以外。



















「きゃっ・・・・あ・・あ・・」


?言うて、何?」
















それが正しいことかなんてわからなくて



私が唯一わかるのは侑士が私に触れている時間が愛しいものであること。



誰も知らないから嫉妬すら許されないこの関係で、私が出来るのは



この熱を体に染み込ませる事。



想いが侑士に届くように



泣くこと。



鳴くこと。



啼くこと。














っ・・・・


「あっ・・・侑士・・・ん・・・・・」
























赤だ。



真っ赤なバラの一輪挿し。



ベッドの上から見つめるその姿。








ねえ侑士、赤を見ても思い出すのはバラじゃ嫌だよ。



思い出すなら私の血にして。



ねえ侑士、バラを見ても思い出すのは赤じゃ嫌だよ。



思い出すなら私にして。


















密やかに。



それが私の恋。






























































「侑士?」






行為が終わってしばらくしていきなり侑士がベッドから降りた。



窓辺の真っ赤なバラのところまでいくと



一輪挿しの花瓶からバラを抜き取って窓を開けた。






「侑士?」


「なあ、。」






侑士がバラの花びらに手をかけて一枚花びらを取った。



開いた窓から花びらは外へ逃げていく。











「バラに嫉妬してくれたん?」











一枚。また一枚。侑士はバラの花びらを取っては外へ逃がす。






「バラに罪はないんじゃなかったの?」


を傷つけたのは立派な罪やろ。」






侑士は茎だけになったバラを窓の外に投げた。


















「嫉妬してくれてたんやったら悔しい半分。うれしい半分。」


「え?」












ベッドに戻ってきた侑士が私に覆いかぶさる。
















。バラに気ぃ取られてたやろ?せやから悔しさ半分。俺からをとったんもバラの罪。」















だって



どうやったら侑士が



赤を見たらバラじゃなくて私の血を



バラを見たら赤じゃなくて私を



思い出してくれるかなって考えてたんだもん。







。嫉妬?」


「・・・・」






嫉妬することすら許されない、誰も知らない関係だから。









「内緒。」


「・・・なんや、そう言うこと言うんやったら言わせるまでやんなぁ」


「きゃっ!っ・・・侑士!!」








密やかに。



そう約束した。



密やかに。



密やかに。







































あなたが何を見ても思い出すなら



私のことがいい。








































密やかに。





密やかに。













































それが私の恋。
























end.