〈38.3℃〉
「って!高っ!」
「えっ赤也、大丈夫?無理してない?」
「俺は全然元気だけどよ。こそ大丈夫かよ」
『微熱℃』
ぼーっとする頭に少しの頭痛
足下がおぼつかない今日のあたしを
赤也が保健室に行こうと
手を引っ張って廊下を歩く。
〈37.2℃〉
着いた保健室に保険医の姿はなく
とりあえず体温計で熱を計れと赤也にうながされる
「さ、平熱いくつ?」
「35℃くらい?」
「低っ!」
「そんなことないと思うけど・・・」
保健室のベッドに並んで腰掛ける2人
赤也の手があたしの額に触れた。
37.2℃の熱を確かめるように
「んじゃあ、つらいよな。平熱35℃だろ?」
「ちょっとだけ、ぼーっとする・・・」
あなたに伝わる37.2℃の微熱
赤也の手は冷たく感じた。
しばらくの沈黙は
赤也と目を合わせることで生まれるもの。
「」
赤也があたしの額から離した手は
今度はあたしの肩にのる
少しずつ近付いていくお互いの顔。
「・・・・・・」
「・・・・・さーん」
顔を背けたのはあたしだった。
「・・・風邪がうつったらどうするの?」
「誰かにうつしたほうが治りが早いって言うだろ?」
「部活でれなくなっても知らない」
赤也の顔がぴくっと動く。
「・・・・・・でも今の雰囲気でそれはなしだろ」
「ありです。」
「なしです。」
「ありなの。」
「・・・・・俺も計ってみよーっと・・・・・」
あたしの肩から離れた赤也の手が
体温計へとのびた。
ピピッピピッ・・・
〈38.3℃〉
「って!高っ!」
「えっ赤也、大丈夫?無理してない?」
「俺は全然元気だけどよ。こそ大丈夫かよ」
赤也の熱はあたしなんかよりずっと高くて
「別に具合悪いわけじゃねぇのにな」
「平熱?」
「38℃もねえって」
「・・・大丈夫?」
「元気だって。平気。」
平気なわけないよ
熱が高過ぎる
そっと、今度はあたしが赤也の額へ手を伸ばした。
触れた額は赤也の手よりずっとずっと熱かった。
「・・・熱いよ赤也」
「・・・・・・・・・な、」
あたしの手を赤也が額からはがして
そのまま握り締めた。
もう片方の赤也の手があたしの頭の後ろへ回る
「赤也っ・・・」
「うつしたほうが治りが早いんだよ」
あたしは
あなたの息を呑みこんだ。
「うつしあいしようぜ?」
「・・・治らないよ」
「悪化かもな」
からかうように笑う赤也
その笑顔にも
まざる息にも
熱は、
上昇するばかり。
「・・・部活でれなくなっても知らないから」
「大丈夫だろ」
その自信はどこからくるの?
あなたに伝わる37.2℃の微熱
赤也のほうが熱が高いのに
今はあたしのほうが体感温度が明らかに高い
呑みほせば
熱がうつる
呑みほせば
加算され広がる
熱は、
上昇するばかり
「・・・・なんで。」
「ほら俺健康体だし」
「・・・ありえない」
次の日高熱をだして学校を休んだあたし
元気にあたしのお見舞いに家を訪ねて来た赤也
「大丈夫だって言ったろ?」
「あたしは大丈夫じゃないもん」
「だから俺にうつせばいいだろ?」
「・・・うつんないくせに」
高熱をだして学校を休んだあたし
元気にあたしのお見舞いに家を訪ねて来た赤也
あたしは
あなたの息を呑みこんだ。
End.