告白は落書きだった。





あたしの机。





少し薄めの文字で。






‘好きや’





気付かなかったらどうするつもりだったのって





笑って言った。





そしたらあなたは







「気付いてくれるまで書くまでや」







笑って言った。

























『僕らの伝達』





















「ホンマ、堪忍な、。」


「・・・・・・」






空が暗くなったころ



侑士の部屋に座り込んでいたあたし。



あたしに謝る侑士。





「堪忍」





今日は侑士とデートの約束をしていた。



駅前で待ち合わせて、最近一緒に出かけるなんて出来なかったから



今日はすごく楽しみだった。



・・・・・・・・のに






「急に部活になったんや」


「・・・・聞いたよ。電話で言ってたじゃない侑士。」






侑士の、ドタキャン。






「・・・・この前も計画してたのに映画行けなくなったよね。先々週だって・・・」


「うん・・・せやな・・・」






最近はテニス部が忙しくて



侑士といられる時間がない。



加えて、今日のドタキャン。



・・・・ちょっと泣きたくなった。






「そんな落ち込むなや」






侑士の言葉と声。



あたしの頭を優しくなでる手。





「ごめんな、





優しい顔で申し訳なさそうに笑う侑士。



その笑顔はいつもあたしを幸せのどん底に突き落として



そうやって



こんなにも



あたしを切なくさせる。





「・・・・・・いつなら一緒にいられるの?」


「・・・・・・・・・・・・・・・・」


「侑士・・・・」


「いや、ホント申し訳ないねんけど・・・・・」


「・・・・・」


「しばらくは部活、部活、部活、部活・・・・ってな?・・・」


「・・・あっそ」


「あっ!」






いきなり立ち上がったあたしは侑士の部屋のドアへ向かう。






「ちょっ・・・・・・」


「侑士のバカ!」





きわめつけは侑士の部屋のドアを思いっ切り強い力で閉めて。


















(バンっ!!)


















































さあ、ケンカの始まり、始まり。

































































































・・・・・・・って。



あたしが悪い。





「・・・・・・・・」





あたしはただ、侑士と一緒にいたいだけだ。



それなのに、それが出来ないから・・・・。



侑士からのメールも電話も無視して



次の日の学校。



あたしは



最大級に自己嫌悪。
















(あ。)














廊下で侑士と向日が話しているところを見かける。



・・・・・侑士元気ないんだね。



あたしを幸せのどん底に突き落とす笑顔。



それが見えない。





「お。じゃん!」


「え?」





あたしに最初に気付いたのは向日だった。





「待ってぇな!!!」


「いやだ」





あたしは方向転換。



侑士から逃げる。



だって明らかに昨日はあたしが悪い。



テニス部への理解が足りない。





(しょうがないじゃん)





一緒にいたいんだ。



ドタキャンなんて本当に泣きたくなって。



走って逃げたあたしを



侑士が追ってくることはなかった。






































カチカチとシャーペンの芯を出す。





(はあ)





数学の授業中。



方程式なんか手にもつかない。



瞼を閉じれば侑士の笑顔。優しい、笑顔。



あたしを幸せのどん底に突き落として



そうしてあたしをこんなにも






































切なくさせる









































会いたい、一緒にいたい。



優しい笑顔。







「・・・え?」







開かれたノートの外



机のはしに



薄めの文字で





























‘堪忍。好きや’


































告白は、落書きだった。



関西弁じゃなかったら誰が書いたか分からないじゃない。



気付かなかったらどうするつもりだったの?




















































「・・・・バカ」













































































気付かなかったらどうするつもりだったの?



















































「・・・」


「堪忍」


「・・・気付かなかったらどうするつもりだったの?」








授業中の屋上は



誰もいない。



あたしと侑士以外。






「・・・気付いてくれるまで書くまでやん」





優しく笑って言った侑士。



その笑顔はあたしを幸せのどん底に突き落として、





「・・・・・・・」


「堪忍な、


「・・・・謝るのはあたしだよ」






そうやってこんなにも



あたしを切なくさせる。









































会いたかった、一緒にいたかった。



優しい笑顔。







「ごめん、侑士。・・・・・・・でももう少しでいいから一緒にいたい」


「せやな、俺もや」







優しい笑顔がこんなにも



幸せに、切なく。



あたしはあなたが好きだから、















「・・・・・じゃあさ、侑士」


「ん?」


「毎日一回でいいから・・・・」
















































あなたに好きと言ってほしい。

















































「そんなんでええの?」


「それで我慢できる」


「ほんまに?」


「・・・・軽くはったりだけど」






告白は、落書きだった。



薄い字で。



気付かなかったらどうするの?って







「気付けなかったら、直接言って」


「・・・・・・・






机の落書きの告白。



うれしかったけど



あたしはあなたが好きだから、

































あなたに好きと



言ってほしい。

















































「関西弁じゃなかったらすぐ消してたんだよ?」


「そうなん?」


「侑士だって思わなかったら、あの落書きは侑士のなんてすぐ聞きに行ったりしなかったよ」


「うん・・・・・・・・」





優しい笑顔はあたしを幸せのどん底に突き落として、



そうしてこんなにも



あたしを切なくさせる。








































「好きや、














































会いたい、一緒にいたい。



その笑顔。



落書きの告白も謝罪も、



あなたからだからうれしいとしか思えないけれど



あたしはあなたが好きだから、



















































あなたに好きと言ってほしい。














































屋上で、好きの後のキスをした。





侑士の落書きは





今もあたしの机に。
























































end.