夏の日





「ごめん。気持ちはうれしいんだけど・・・」





まだ明るい空と





「・・・そっか・・・。聞いてくれてありがとう」



「・・・・・」



「ねえ、鳳くんって好きな子いるの?」





が見ていたことに気付かなかった



告白。















「・・・いないよ」


























『どこまでもいつまでも』



























「長太郎」






に名前を呼ばれるまでは



珍しく部活で疲れていたのか



俺は下を向いて歩いていた。



顔をあげると



いつも通り俺の部活が終わるのを



校門で待っていてくれた






「お疲れ様」


「遅くなってごめんね、





の笑顔に笑って返したつもりだけど



いつもに向けることのできる笑顔だったか自信がなかった。



夏の日



まだ明るい空と



手をつないで2人で歩く帰り道。



体が重くて



と話すこともうまく頭に入ってこない。







(こんなに疲れたのは初めてかな・・・)



「長太郎?」


「・・・・・・」


「・・・長太郎」


?」






が歩く足を止め



俺とつないでいた手をほどいた。







?どうしたの?」







俺が先にいて



が後にいた。



2人の距離はほんの少し。





「・・・長太郎」


「ごめん。俺話聞いてなかった?」


「どうして今日校門に来るのが遅かったの?」


「・・・部活が長引いたんだよ・・・っ・・」





ふいに目の前がゆがんだ。



いきなり立ち暗みが起きて



貧血かと思った。



こんなに部活で疲れたのは初めてだった。






「・・・長太郎は好きな人がいないの?あたしはまだただの幼馴染のままなの?」


「(!)・・・聞いてたの?」


「・・・・なんで彼女がいるって言ってくれなかったの?あたしは長太郎の好きな人じゃないの?」


「・・・・・・ごめん、あとで話すよ」


「今がいい」


「・・・。」






体が重い。



夏の空気が汗をひかせてくれない。






「長太郎!」



「だから!あとで話すって言ってるだろ?!」






俺は自分の怒鳴り声にはっとして



急いでを見た。







っ・・・」







は困惑した表情で涙目で。



俺はに手を伸ばそうとしたけど



がそれを拒んだ。








・・・・」


「・・・長太郎なんか・・・・長太郎なんか大っ嫌い!!」







ほどかれた手が風に吹かれる。






「・・・っ・・・!!」






は俺を通り越して



そのまま走り出してしまった。



俺がまったく動けなかったのは疲れていたからなのか。



それとも自分の発言の軽率さにあきれてどうしようもなかったのか。







(きっと、両方。)






の姿が見えなくなったその場に



俺はしゃがみこんだ。














































































































俺たちが単なる幼馴染から付き合うようになったのは



ほんの少し前だった。



伝えてくれたのはで、



昔からの想いをやっと言葉にできたのは二人ともだった。



一緒にいた時間の一体何時から



は俺の特別になったのか。





(・・・・・・・・・・・・・・)





そんなことわからなかった。






















わからなくてもよかった。





















知ってさえいれば。



今でも変わらず君を想っている事を



俺ももわかっているなら



それでいいんだ。



いつから好きだったかとか。



いつから同じ想いだったのかとか。



そんなの関係ない。







(ただ好きなだけ)






それだけで、いいから。



が、知っていれば。







‘あたしは長太郎の好きな人じゃないの?’



「・・・っ・・・・・」







立ち上がり走り出した俺。



は家に向かったんじゃない。



が向かった場所ならわかってる。



誰かに怒られたとき、



嫌なことがあったとき。



が必ず向かう場所。





















































































































































































































































































(・・・・・・いた)





小さな、小さな公園。



ブランコと砂場とベンチだけがある。



誰も気付かないような場所にある小さな公園に



はいた。






「・・・


「・・・来ないで。長太郎なんか大っ嫌い」






公園に置かれたベンチで



はうつむいたまま座っていた。



俺は一歩一歩に近づいていく。






「大っ嫌い」


「・・・俺は好きだよ」





俺の声にの肩が小さくはねる。



俺はの目の前までいくとしゃがんでと目線を同じにするが



がうつむいたままで



俺を見てくれることはなかった。





「昔から何かあるとはここに来たよね。」


「・・・・・・だって」





夏の日。



沈み始めの太陽。



ほどかれた手は風に吹かれ。
























































































































「だってここにいると、長太郎が一番にあたしを見つけてくれるんだもん」
































































































































































小さな公園のベンチでうつむいて。



その雫だけがの手元に落ちて、



が泣いているのを俺に教えていた。









「あたしだって好きだもん。・・・っ・・・長太郎が好きだもん。」






ごめんね



疲れてたんだなんて、



を泣かせていい言い訳にもならない。






「ごめん」






泣かせてごめん。



俺はしゃがんだままの手をにぎった。





「付き合う前に俺のファンだって言う人たちがのこと影で悪く言ってたことあったろ?」


「・・・うん」


「俺はそれがすごく嫌だったんだよ」





わかっていて。



知っていてほしい。



俺はが好きだから。















「だから好きな人がいるかって聞かれていないって言ったんだよ」












誰にも傷つけさせない。



誰にも。



俺とが付き合ってることを知って



に何かされたら。






「・・・でも俺がを傷つけちゃったね。」


「・・・・・・・・・・」






はまだうつむいたまま。





「泣かせてごめん、。」





夏の日。



繋いだ手は風に吹かれて。



昔は泣いているを連れて帰るため。



今はと一緒にいるため。






「俺はが好きだよ」





ケンカしても怒っても手を振り払っても。



君が君でいるかぎり。



俺が握っていた手をの手が握り返した。





っ・・・・」


「大好き、長太郎」





まだ涙目の



ベンチに座って笑って。











俺がの肩をつかんでキスをしようとすると



再びの肩が小さくはねたから



俺は



の頬に、触れるだけのキスをした。























































































































































。俺はずっとを好きでいるからずっと一緒にいてくれる?」




















































































































ケンカしても怒っても手を振りほどいても



ずっと俺の隣で



そうして頬を赤く染めて。



手を繋ごうよ。





























いつまでもどこまでも

























「帰ろう。。」






夏の日に



手を繋いで



昔とは違う理由で。



いつからが好きだったかとか、



そんなことわからなくてもいいんだ。



俺のこの手にあるぬくもりが






























































































































君のものであるならば。




























































End.