あたしは、病気なんだと思う。






























『ガラクタ』



























「まだ持っとんの?そんなガラクタ」


「いいじゃない。かわいいもん」





あたしの手にはプラスチックのおもちゃの指輪





「ふーん・・・かわいいね・・・」


「別にいいでしょ!ほら仁王、部活は?!」


「これから。、気をつけて帰りんしゃい。」


「はいはい、どうも」





見つめる背中は振り向いてはくれない。



放課後の教室。



仁王がいなくなってあたしは一人ぼっち。















「まだ帰りません」













この教室からはテニスコートが見える



みすみす帰ることもない。



一人ぼっちの教室であなたを見てる








































。これやるとよ」


「何これ?」


「丸井からもらったお菓子の箱のおまけ」







仁王からもらったプラスチックの指輪



あなたはガラクタだと呼ぶそれは



あたしにとってはダイアモンド。






「ガラクタ・・・」






仁王がテニスコートに立っていた。



あたしは指輪を右手の人差し指と親指で持つと



指輪の輪の中に仁王が入るように



片目を閉じて調節。






(かわいいなんて指輪を持っていられる理由になるように言っただけ)






確かにかわいいよ



プラスチック。おもちゃの指輪



あなたがガラクタだと呼ぶそれ。



あたしにとってはダイアモンド



指輪の輪の中の仁王。





「仁王にとってはあたしの想いもガラクタなのかな・・・」





価値のないもの



ガラクタ。



あたしは病気。



名付けて仁王雅治依存症。





(大袈裟になっちゃった)





指輪をそっと左手の薬指へ






「仁王がはめてくれたらいいのに」






付き合ってるわけじゃないあたし達



ましてあたしの完全片思い



それでもあなたがガラクタと呼ぶそれは



あたしにとってはダイアモンド。






(仁王雅治依存症ですもん)






あたしは病気



ガラクタはダイアモンド



宝物に。







ガラクタ



ガラクタ






あなたにとってはあたしの想いもガラクタ?



左手をあげて薬指にはまったおもちゃの指輪を見た。








「・・・ガラクタじゃないよ」







仁王がくれたものだから



ダイアモンド



宝物



あたしの中では仁王への想いは



何よりもキラキラと輝いてる



例え仁王にとってはガラクタでも



キラキラと輝いてる



ガラクタでもいい。



あたしは病気だから。



ガラクタも宝物に変わる病気だから





























































「何泣いとんの?」


「(!!)」






あたしは咄嗟にテニスコートを見て



今聞こえてきた声の主を探した。






「俺はここじゃ。コートにいるはずなかよ」


「・・・やっ柳生くん!とか?」


「・・・はずれじゃ、。」






仁王が教室のドアからあたしに近寄ってきた。






「指輪・・・」


「あっえっと・・・これは・・ですね!っ・・・」






目の前がかすむ。



ぼんやりと。



仁王の顔が見れない。



左手にはまったままの指輪を仁王に見られてしまって



まして眺めて泣いていたなんて






「・・・。」






仁王の手があたしの涙をぬぐおうとする。






「なっなんでもないの!!指輪もふざけてはめてただけでっ・・・」






恥ずかしくて



仁王の手をよけて乱暴に自分の涙をぬぐった。



指輪を左手の薬指から抜き取って



右手に握り締めた。






「にっ仁王はどうしたの?部活!!」


「・・・忘れ物」


「そうなんだ!」





からまわりの元気。



ガラクタ。



あなたにとってガラクタかもしれないこの想い



あたしの中ではキラキラと輝いてる。



仁王雅治依存症。






「仁王?忘れ物したんでしょ?」






あたしの前から微動だにしない仁王。






「忘れ物、教室の窓にお前さんが見えて思い出した。」


「え?」






仁王があたしの左手をとった






がそうやってはめててくれるならガラクタでもいいがな」






仁王があたしの左手の薬指に銀の指輪をはめた。






















「どうせならこっち。どう?。」




















キラキラと輝いてるあたしの左手、薬指の銀の指輪。







































「仁王・・・これ・・・」


「忘れ物。」


「っ・・・」


が指輪をはめて眺めてるのが見えたきに。」


「だって!ガラクタなんかじゃないんだもん!!」






キラキラ輝く左手の指輪



握り締めた右手をそっと開いた。



おもちゃの指輪



ガラクタ



ダイアモンド



宝物。







「これと同じくらい、大切」






左手を仁王に見せながら言った。






「そっち、俺にくれん?」


「え?」


の大切なもの。一個俺が持っていたい」






右手のおもちゃの指輪



仁王が手のひらを出した。



あたしはそっとおもちゃの指輪を仁王の手に置いた。






「もうガラクタなんて言わん。が大切にしてくれてたから。」






仁王がそっと指輪を握り締めた。



おもちゃの指輪



宝物。






「これ、どうしたの?」


「買ったとよ。がいつもおもちゃの指輪、眺めてるから。本物あげたいと思って。」


「・・・ありがとう!仁王」


「で?」


「ん?」


「大切にしてくれるじゃろ?その指輪も」


「もちろん!」






だってあたしは仁王雅治依存症。





完全な片思いは





完全な両思いに。




























ガラクタの心は宝物に









































キラキラとこれからも輝く。





左手の薬指の指輪と一緒に。





































end.