「跡部・・・俺どうしたらいい?」
「・・・本当のこと言うしかねぇだろ?」
「・・・・本当のこと・・・・」
『誤報注意報』
「ジローちゃん!誕生日おめでとう!!」
「・・・ありがとう、」
「「・・・・・・・・・・・」」
ゴールデンウィーク。
毎年やってくる5月の連休は俺の誕生日が含まれてる
休みの日も大抵は部活があるけど
跡部は5日の子供の日だけは、つまり俺の誕生日は部活をいれないでくれる。
「あのね、がんばって作ってみたの!」
「うん・・・ありが・・と」
今俺たちがいるのは部室内
夕方まであった部活が終わって一息ついたところ
そう、今日は部活があったんだ。
「はい、ジローちゃん」
が切り分けたケーキが紙皿にのる
が俺の為に作ったケーキ
ケーキの上には
HAPPY BIRTHDAYの文字
が初めて祝おうとしてくれてる俺の、誕生日。
「なっなぁ、」
「何?忍足くん」
「・・・・・今日何日やったっけ?」
「3日だよ!何言ってるの?5月3日!ジローちゃんの誕生日!!!」
「「「・・・・・・」」」
部室内は俺と。それから跡部と忍足
他のレギュラーはもう帰っちゃった。
部活が終わってすぐ
からの電話
『誕生日おめでとう!ジローちゃん』
「え?」
『渡したい物があるんだけど、今から部室行ってもいい?』
この時、言えばよかったんだ。
、俺の誕生日は子どもの日だよ。
今日は憲法国記念日だよって。
・・・・・言えなかった。
だってまさかが本当に俺の誕生日を間違えてるなんて思わなかったんだ。
今日の日にちを間違えてるならまだしもは俺の誕生日の日そのものを間違えていた。
「ジローちゃん?」
俺の目の前。
が俺に作ったケーキ。
俺の誕生日の為に作った・・・
(・・・ジロー)
(分かってるよ、跡部)
跡部と言葉のない会話が成り立つ
・・・変な感じ。
「ジローちゃん?お腹減ってない?」
「・・・・・」
さっきから俺はケーキを見つめたまま
微動だにしない。
・・・食べる前に、言わなくちゃ。
だってこのケーキはが俺の誕生日の為に作ったもの
今日のためであって今日のためじゃない。
(・・・ジロー)
(分かってるよ、忍足)
忍足と言葉のない会話が成り立つ
・・・俺、きてるなー
「・・・」
「ん?」
「あのね、・・・」
・・・なんでそんなに
うれしそうなの?
「何?」
「・・・・実は」
「実は?」
なんでそんなに
うれしそうに笑ってるの?
(壊すの?の笑顔)
うれしそう。
どうして?
俺の誕生日だから?
「ジローちゃん?」
「(・・・言えないよ)」
だって、うれしそうだもん
「・・・ジロー。」
「ジロー」
いいんだよ、跡部、忍足。
俺にの笑顔は壊せない。
きっとは
俺がケーキを食べるの待ってるんだ
食べて、おいしいって言うの待ってるんだ
俺が生まれてきたこと
本当に、本当に喜んでくれてるんだ
「ジローちゃん?」
「なんでもないよ!」
君の笑顔、壊せない
壊したくない。
「あー疲れたー」
「「「!!」」」
部室のドアを開けて姿を見せたのは
向日だった。
「あっなんだよ!侑士、いるんじゃん!!」
「なんや、岳人。まだいたん?」
「まさか向日。まだボール探してたわけじゃねぇよな?」
「うっせぇよ!大体跡部!お前がてめぇでコートから出したボールはてめぇで取りに行けとか言うからだろ?」
はいきなりの向日の登場にちょっと驚いていた。
「あれ?じゃん。何してんの。」
「向日くん、お疲れ様。」
「おう。・・って何それ?」
向日がとケーキの存在に気付く。
ケーキの上には
HAPPY BIRTHDAYの文字
「・・・・・・HAPPY BIRTHDAY?誰が?」
「誰ってジローちゃんの・・」
・ ・・・・まずい。
「は?何言ってんだよ?」
「岳人!」
「やめろ!向日!!」
「はぁ?お前らも何言ってんの?ジローの誕生日は5月5日。子供の日だろ?今日って・・何の日だっけ?」
「え?」
「あほ!」
俺たちはに話した。
今日が俺の誕生日じゃないこと。
俺がそれを黙ってたこと。
「・・・・・・・・」
「ごめんね、・・・言わなくて。」
言えなくて。
「なあ・・・これ、俺が悪いことした?」
「気付くん遅いわ・・・・」
は顔を上げなかった。
下を見てうつむいたまま。
「・・・・?」
向日が悪いんじゃないよ。
俺が悪いんだ。
にちゃんと言わなかった俺が。
「」
「ごめんね、ジローちゃん。」
「・・・・・」
「あたし最低だね、誕生日間違えてたなんて・・・・」
は顔を上げて、笑っていたけど
その笑顔は曇っていて。
(俺がそうさせた。)
あんなにうれしそうに俺の誕生日祝おうとしてくれたのに。
「・・・・・・今日でもいいよ、俺の誕生日。」
「え?」
君がうれしそうに祝おうとしてくれたから。
「ジロー」
「いいじゃん!ね、跡部!!」
「・・・・・」
俺の名前を呼んで跡部が黙った。
その顔は優しい。
ただ見守ってくれるだけ。
「ダメだよ、そんなの。」
「どうして?」
「だってジローちゃん、15年前はまだ今日じゃ生まれてないよ。」
「・・・そうだね」
「だから、ダメ。」
「でもががんばって作ってくれたケーキがあるから俺にとっては今日が最高の誕生日だよ?」
まだ手はつけてないけれど。
一生懸命作ってくれたんだよね?
いいよ、子供の日じゃなく、憲法記念日が誕生日でも。
君がうれしそうに祝ってくれるから。
「・・・・・ダメ・・だよ。・・・あたしが、間違えた日だもん・・・」
曇った笑顔。
泣きそうな。
泣かないで。
「じゃあ今日も祝って明日も祝ってあさっても祝って」
「?」
「(くすっ)なんやジローの誕生日は3日あるん?」
「その通りだよ!」
いいじゃん、それで。
「がおめでとうって言ってくれたから今日も俺の誕生日。でもあさっても俺の誕生日。それじゃ明日がかわいそうだから明日も誕生日。ね?」
「なんだそりゃ」
向日が笑い出した。
忍足もだ。
跡部も、笑ってる。
、君は?
「あたし、間違えたのに・・・。」
「そんなの問題じゃないよ!はあのケーキ俺の誕生日のために作ってきてくれたんでしょ?」
「・・・・・ジローちゃんのため。」
「だったら、いいんだよ!」
今日も祝って明日も祝ってあさっても祝って
がおめでとうって言ってくれた今日から3日間俺の、誕生日。
「俺3日間、に甘えさせてもらうから。」
「ジローはいつもに甘えてるじゃねえか。」
「あー!言ったな跡部!!」
「(くすっくすっ)」
「(!!)」
俺が悪かったんだ。
ちゃんと今日じゃないよって言えばよかった。
そしたらの笑顔、曇らせなかった。
でも、
そうやって君が笑って、祝ってくれるなら、俺は・・・。
「毎日誕生日でもいいかな。」
「そしたらジローちゃんはあっという間におじいさんだね。」
「あ。」
「よくばりはよくないで?ジロー」
毎日が誕生日だったら、
毎日君はそうやってうれしそうに笑っていてくれてるのかなって。
「ジロー!ケーキ食おうぜ!俺腹減った。」
「あっ向日君!一口目はジローちゃんだよ!」
君が俺の為に作ったケーキ
俺が食べたら、君にも。
その後みんなで食べよっか。
「おいC−!!!!」
「本当?」
いいんだ、君が笑ってくれるなら。
誕生日間違えたって。
いつだって俺の誕生日にしちゃえばいいんだ。
君がうれしそうに祝ってくれる日こそ
俺の誕生日であってほしいんだよ。
いいんだ、君が笑ってくれるなら。
end.