もしも日本に
何ごとにおいても飛躍や進歩を必ずしも得ようとしなければいけないとか
そんなえらそうな法律ができたら
俺はすぐさま牢屋にはいる
『犯罪行為』
「・・・眠いのかよ」
「・・・だから寝てたんだよ、ブン太」
教室の窓際一番後ろの席。
机にうつ伏せてはそこにいた。
「ブン太、お疲れ様。」
「おぅ。帰るぜぃ、。」
幼馴染みの俺達は
一緒に帰るのが当たり前。
10年間の付き合いは
部活が終わるまでは俺のことを待っていて
部活が終われば俺がを迎えに行くっていう
今の状態を完成させた。
「あっブン太、CD。聞きたいって言ってたの持ってきたんだよ。」
いつもの帰り道を歩きながら
が鞄を探る。
「まじ?ありがとな。」
話すことはつきない。
10年間一緒にいても。
と言うよりは話すことはなんでもいいから。
単なる幼馴染みの俺達は
きっとに彼氏なんかできた時にはもろくくずれる関係にある。
俺には彼女なんてもんはできないと思う。
きっと俺は今までもこれからもたった一人をずっと好きでいるから
「ブーン太!はい。」
「は気にいった?このCD。」
「んー1曲目より2曲目が好き」
手渡された一枚のCDはのものでが気に入っていると言っていたバンドのCD。
俺はそれを自分のカバンにしまった。
話すことはなんでもよかった。
昨日のことでも
今日のことでも
明日のことでも
好きな音楽とか
どんなテレビ見るとか
居心地がいいこの関係に俺は溺れている。
単なる幼馴染み
それ以上でもそれ以下でもない。
それ以上もそれ以下も望まない。
伝えようとは思わない
だから知らなくていい。
俺がが好きなこと。
お前は知らなくていい。
現状に満足すること、別に罪じゃねえだろぃ?
この関係を壊そうとすることこそが俺の中の犯罪。
「10年経ったって知ってる?」
「え?」
「あたしがブン太のお隣に引っ越して来たのがちょうど10年前の今日。ブン太覚えてないでしょ?」
覚えてるよ
「・・・覚えてるっての」
「ホントー?」
笑いながら聞いてくる。
覚えてるよ
を好きだと思った日を
「忘れる訳ねえじゃん。」
「・・・意外。」
「悪かったな。覚えてて。」
「うれしいんだってば!!ブン太が覚えててくれて!」
居心地がいいこの関係に俺は溺れてる
罪を犯してまでして壊したくない
10年間の想い。
今更、伝えられない。
「ブン太?」
突然歩みを止めた俺。
が不思議がるのも仕方ない。
でもごめん。
わからない。
この気持ちの逃し方がわからない。
話すことはなんでもよかった。
二人で歩く道と時間が好きだったから。
同じものが聞きたいとも思ったし
同じものが見たいとも思った。
「ブン太?」
が俺の顔を覗き込んだ。
俺の視界にはいるの顔。
「好きだ。」
二人で歩く道と時間が好きだと思うのも。
同じものが聞きたいとも思うのも
同じものが見たいと思うのも。
全部が好きだから。
「・・・ブン太・・・。」
・・・待てよ。
俺、今・・・。
一気に体の温度が上がった気がした。
「ちょっ!待った!!今のなし!!」
「なっなんで!?」
「ちげぇって!言うつもりなんてなかったんだって!!」
あせる。
焦る。
言うつもりなんてなかった。
罪を犯すつもりなんて。
「・・・俺は今のままでいいんだよ。」
それ以上もそれ以下も望まない。
居心地のいい関係に溺れていたくせに。
知らないうちに口からでていたなんて。
むしがよすぎる。
「だから、忘れていい。」
「・・・忘れていいの?」
罪を、犯した。
は俺と目を合わせて離さない
10年間の想いをたった3文字で伝えた。
その時点で今までと同じでいいなんて
無理な話だった。
「あたし今までもこれからもずっとブン太のこと好きでいるよ?忘れていいの?」
「(!!)」
いいわけない。
同じ想いを抱いていて
忘れていいなんて
そんなわけない。
「も俺のこと好きだったのかよ?」
「好きなんだよ。いまでも。」
罪を、犯した。
この関係を壊すという犯罪。
裁かれなかったのは
がそれを許してくれたからだ。
「・・・俺が言ったこと・・」
「忘れなくていい?」
「・・・忘れんな。」
罪を犯して手に入れたのは
今までもこれからもたった一人の好きな奴だった。
そして犯罪者は、もっと早くに言えばよかったと
都合のいいことを思ってみたりする。
end.