君は、
覚えていますか。
あの日、世界の中心は
俺達の場所に。
『春時雨』
卒業式が終わって俺とが来たのは
やっぱりテニスコートだった。
は中学を卒業したら海外へ引っ越すことが決まっていた。
「さあ、あと1ポイント!1ポイントで山吹優勝です!!」
「…天気は晴れ。風は今吹いていません。」
俺は男子テニス部。は女子テニス部。
実際にはないラケットとボールを持って、俺はサーブを打つフリ。
「千石選手真っ直ぐにボールをあげて…打ったぁ!!」
「(くすくすっ)おおげさ」
「ボールは相手の横を綺麗に抜けてライン上に。」
「「山吹優勝です!!」」
桜舞う春の頃。
俺達は今
離れます。
「あーあ…。やっぱり…したかったです。」
「全国優勝?」
「したかったの」
「…楽しみにしてたのに。」
「うわぁ。へこんだ。」
「あたし達も全国いきたかったなあ」
ねえ、覚えてる?
「…綺麗だったんだ。の最後の試合」
君は
ひどく美しく。
「があんまり綺麗だったから、コートが世界の中心かと思っちゃった。」
「…清純が、…」
目の前を舞う桜のよう。
「行くなって言ってくれたら、あたし行かないのに」
覚えて、いますか。
「…初めて会った景色に似てるね」
「…このコートだったね。こんな風に桜が咲いてて」
「睨まれた。」
「清純軽そうだったの。いきなり話しかけてくるんだもん」
「はははっへこむー。」
忘れないで。
「お別れ、ですね」
「…うん」
桜舞う春の頃
俺達は出会いました。
「また、会えるかな。」
「俺はまた会う気満々だよ!」
「…清純が行かないでって言ってくれたら、あたし行かないのに。」
「それじゃ俺のわがままだよ」
「あたしのだもん」
君に魅かれて
想いを告げ、
君は
応えてくれました。
「離れたくない」
「…わがまま?」
「あたし、子どもじゃなかったらいいのに。」
同じ
果てない夢を見ました。
「子どもだもん」
「…分かってる。お別れ。」
「わがままの代わりに約束しません?。」
桜舞う春の頃。
俺達は今
離れます。
「次に会うまでの約束。」
俺は
君が好きでした。
大好きでした。
だから、
「時々でいいから思い出して。俺のこと」
「…無理。」
覚えて、いますか。
「一時も忘れないもの」
いつも
君がいれば、
世界の中心は
俺達の場所に。
「…ヤバイって。…好きすぎて困る。っていうか好き。大好き。」
「あたしも、清純が好きすぎて、困る」
忘れないで。
あふれるほどのこの想いを。
(行かないで、。)
桜の頃、
俺は待ちます。
出会ったこの場所で
離れたこの場所で
君を
待っています。
桜の降る中で。
「次に会うまでの約束じゃなくて、次に会う約束をしよ、清純。」
「喜んで。」
end.