「・・・・なんで、お前が。」 「・・・・・・」 「・・・・・・・・なんでお前が、泣くんだよ・・・。」 なんで。 「ごめんなさっ・・・・・」 かすれるような、声にならないような声で。 そいつはその場で屋上の床に座り込んだ。 力なく。その目から雫を零しながら。 「ごめんなさいっ・・・・」 「・・・・・・・」 「ごめんなさい」 なんで。 「ごめん、・・・・」 「・・・・」 「ごめんなさい・・・・・」 なんで。 「・・・・なんでお前が、謝んの?」 俺の声も、消えそうだ。 かすれて、消えそうだ。 泣いてるわけでもないのに。 「だって・・・・だって丸井くん、辛かったでしょう?・・・あたしの名前。聞くたびに・・・」 目を見開いた俺がそこにいた。 こいつが泣くのは罪悪感? 俺に同情? それとも、ただ自分を責めているだけなのか。 「・・・・・ちが・・・うだろぃ・・・」 俺の声がかすれていた。 かすれて、消えそうだ。 ・・・・違うだろぃ。 お前は何を俺に謝ってんだよ。 お前俺に何かした?・・・・・・酷い態度をとってきたのは俺のほう。 「・・・・別にブン太さんのことだし何も言うつもりなかったけど。でもさんを傷つけるようなことはやめてくれません?」 (・・・・・・・) 「くだらない理由でさんに悲しい顔なんかさせんなよ」 (・・・わかってる。) 「さん、一生懸命じゃないっすか!!」 (・・・知ってる。) 「それはこっちのセリフ。は俺たちのマネージャー。」 「・・・ブン太さん。知らないなんて言わせないっすよ」 (・・・・・・わかってんだよ、そんなこと) 俺だって。 こいつを傷つけることが間違ってるってことくらい。 ただこいつが、と同じ名前で。 ・・・・わかんねぇんだよ、俺にも。 でも、理不尽なのは俺で。 謝るのは俺のほうだってそれくらいわかってる。 俺の周りを飛んでいた白い蝶が、遠くの空に飛んでいった。 「あー・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・違う。・・・違ぇんだよ。」 「・・っ・・・・」 「・・・・泣くなよ。悪いのは俺だろぃ?」 わかんねぇんだよ、俺にも。 俺は歩を進めて、屋上に座り込むこいつの目の前まで来た。 目線を同じにするためにしゃがむ。 その目に溜まる涙。 「・・・・悪かったな。」 「(!)丸井くっ・・・・」 「泣くなよ。仁王たちがお前のこと大事にしてんだよ。俺が叩かれるだろぃ?」 わかんねぇんだよ、俺にも。 なんで、こんな風に。 こんなに泣かせるくらい酷く接してきたのか。 ・ ・・わかんねぇんだよ、俺にも。 ・ ・・でも。 こいつに、笑顔が似合うのは知っていた。 初めて会ってそれを見たときから。 |