忘れられない人がいる。
『8分前の太陽30』
足が、重かった。
駆ける足。
追う背中。
縮まらない距離ともどかしさ。
続く道は、かすかなくだり坂。
吹く風と、時折舞ってくる桜に
といた季節がめぐる。
が好きだと笑うから、俺も春が好きだった。
手を繋ぐと笑ってくれるから
だから、なぁ、8分前の太陽が教えてくれたとおり。
この手を、離すものかと。
「おいっ・・・!!待てよ!!」
何度も呼びかけるが、けして足を止めないその後ろ姿。
「っ・・・・くそっ・・・・・」
とまれよ。
待て。
もう、それ以上行くな。
この道は。
この道は・・・・・。
あいつと買出しに行った日。
あいつが進もうとして俺が止めた道。
この先には、一つの交差点がある。
あの、交差点が。
足が、重い。
本当なら、俺の先を駆けていくあいつに、すぐにでも追いつけるはずなのに。
(・・・ちくしょう・・・・)
泣いて、いたのに。
足が重い。
うまく動いてくれない。
この道が、そうさせる。
めまぐるしいほどに過ぎていく景色。
けれど少しずつだが、確かに近づいていく距離。
縮まっていく距離。
「待てって!止まれっ・・・!!」
何度も何度も走りながら、その姿を追いながら呼びかけた。
その背中の向こうに見えたものに、俺は。
どくん。
足が、すくむ。
あと少しで追いつくのに、俺の足がうまくは動かない。
あの、交差点。
「はぁっ・・・はぁっ・・・・」
学校から走ってきたくだり坂。
あいつはあと少しで交差点を渡れる位置に。
俺はあと少しであいつに追いつくことができる位置に。
信号は、赤から青へ。
あいつが、その交差点を渡ろうとする。
どくん。
どくん。
(・・・・ダメだ。)
どくん。
どくん。
ダメだ。ダメなんだ。
その、交差点は。
その交差点は。
「っ・・・・待てよ!・・・待てっ・・・!!」
俺が初めて呼んだ苗字に、あいつの肩がびくっとはねた。
あいつの足が止まりかかる、交差点の、最初の白線の上。
俺は、なかなか進まない足を交差点のすぐ目の前まで運ぶ。
重くて、重くて、息苦しいこの体を。
あの交差点へ。
「(!!)っ・・・・おいっ・・・・!!」
なのに、あいつの足は止まることはなかった。
俺に振り返ることもなく、その足取りを進めようとする。
どくん。
(とまれ。)
どくん。
ずっと、傍にいるのだと決めていた。
ずっと、この手を。
ずっと一緒に、めぐる時間を過ごして。
何度だって、お前が好きな春を一緒に見ようと。
好きだった。
が好きだと笑うから、俺も春が好きだった。
どくん。
どくん。
どくん。
足が、すくむ。
俺はその場から動けない。
遠ざかろうとする小さな背中。
真っ赤な夕日が、道路を染める。
あの日が、よみがえる。
(待てよ。)
白い蝶の軌跡が、夕日の真紅を泳ぐ。
なんで。
どうして。
どうしてが。
かすれる声が、俺の名前を呼ぶ。
「大好き。」
そう言ってくれるのに、8分前の太陽が沈もうとしてる。
(行くなよ。)
白い蝶の軌跡が、赤い海の上を舞う。
待って。
もう言葉など、いらない。
(それ以上、行くな。)
だから、この手を握り返して。
いつもみたいに笑ってほしかった。
嘘だって、笑ってほしかった。
どくん。
どくん。
(待てよ。)
待てよ。
行くなよ。
どこにも。
目の前のあいつの足が、交差点の真ん中へ差し掛かる。
行くなよ、もう、それ以上。
待てよ。
「待て・・よ・・・・」
声にならない声しかでない。
足が、すくむ。
もう、行くな。
どこにも、行くな。
「っ・・・・待てよ!!待てってっ・・・・・!!」
ありったけの声。
今言うことのできる、必死で、精一杯の声。
精一杯の、声。
待てよ。
「待てよ!・・・・っ・・・・・・!!」
周辺に人影はない。
交差点の真ん中で、静かに歩みをとめたあいつ。
それは、
初めて呼んだ、あいつの名前。
赤い夕日の染める道路の上で、ゆっくりと、
あいつが俺に振り向いた。
驚きに目を見開いて、丸くさせ。
少しの涙を、その目にためて。
どくん。
(・・・なんだ?)
喉が、焼けるように熱い。
俺の喉が熱い。
「・・・っ・・・・・」
あいつの名前を呼んだ声が痛い。
俺は咄嗟に喉を片手で押さえる。
俺に振り向くあいつと目が合う。
なのに、2人とも固まってしまったかのようにその場から動くことが叶わない。
ただ、目を合わせたまま。
何も言葉を交わせない。
何か、言わなければならないことがあるはずなのに。
どくん。
何か。
何か、言うべきことがあるはずなのに。
どくん。
(熱い。)
喉が、熱い。
「(!!)」
周辺に人影はなかった。
赤く染まる空と、夕日に照らされるあいつと俺。
俺の目の端に映った信号が、青から赤へと変わった。
それに気付いたそのとき。
俺の耳に届いた音。
あの日に酷く似た光景と、あの日、
聞き取ることの出来なかった音。
どくん。
(どうして。)
どくん。
立ち止まって、足がすくんで、その場から動かなかった。
視線を合わせたまま、2人とも動かなかった。
動けなかった。
遠くからエンジン音。
タイヤの音。
あの日聞き取ることの出来なかった、車の音。
その光景に、
世界中の音が止む。
赤い、夕日。
どこから現れたのか、白い小さな蝶が俺の目の前を横切る。
(どうして。)
何も音がしない。
突然視界にはいり、近づく車。
(また俺から、奪うのかよ。)
あいつが交差点の真ん中で立ち尽くす。
目が合ったまま、俺は。
(なんで、いつも。)
足が、すくむ。
赤い、赤い。
あの日に酷く似て。
(お前まで、いなくなるのかよ。)
赤い夕日。
何も見えなくて。
赤しか見えなくて。
(こいつまで俺から奪うのかよ。)
真っ赤な真っ赤なあの日を見た。
赤く染まるが、そこに横たわっている気がした。
「・・っ・・・・・」
どくん。
「ブン・・太・・・・覚えて・・・る?8分前の・・・太陽・・・」
どくん。
(覚えてるよ。)
覚えてるよ、。
この手は、離れないためにある。
・・・・・守りたい。
今度こそ。
今度こそ、
この手を、離しはしない。
<キキーッ・・・・・>
車のブレーキ音。
伸ばした手。
触れる細い肩。
抱きしめるように、足を運ぶ。
必死で、駆けて。
精一杯、引き寄せて。
白線を渡りきり、
何事もなかったように、車の音が遠ざかる。
かすかな息切れ、重なる鼓動。
震えるその手。
震えるこの手。
震える体温。
「・・・な・・んでっ・・・・・」
車のブレーキ音。
伸ばした手。
触れる細い肩。
抱きしめるように、足を運ぶ。
必死で、駆けて。
精一杯、引き寄せて。
白線を渡りきり、
何事もなかったように、車の音が遠ざかる。
かすかな息切れ、重なる鼓動。
震えるその手。
震えるこの手。
震える体温。
震える、体温。
「なんでっ・・・どうして・・・丸井くんはっ・・・・」
「・・・・・・・」
「っ・・・私なんか・・・嫌いなくせにっ・・・・」
こいつの声が、苦しい。
震えて、かすれて。
泣いているのが、顔を見なくてもわかる。
力任せに、腕の中に閉じ込めて。
「どうしていつも・・・助けてくれるの?・・・っ・・・なんでっ・・・いつもっ・・・・」
力まかせに抱きしめて。
何を言えばいい。
何を言えば、この震えはとまるのか。
何を言えば、その涙はとまるのか。
息切れる呼吸音。
こいつの声が俺の中に入ってくる。
渡りきった白線。
交差点が、夕日に染まる。
「・・っ・・・・私なんかっ・・・・嫌いなくせにっ・・・・」
「・・・・違う。」
「・・・離してよっ・・・離して・・・丸井くんっ・・・・」
「・・・違ぇよ・・・・」
力任せに抱きしめる。
聞いてほしくて、抱きしめる。
違う。
「・・・・嫌いなんかじゃ、ない。」
何を言おう。
何を伝えよう。
何を言えば、お前は笑うんだろう。
俺の肩に染みていくその涙が、心をひどく痛くする。
俺の手が震えてる。
目の端に入る夕日が、胸を焦がしていた。
「近づくななんて思ってない」
お前が始めて泣いて見せたあの日の言葉も。
「いなくなればいいなんて思ってない。」
買出しを終えた部室でのあの言葉も。
「消えろなんて思ってない。」
さっきのコートでの言葉も、全部。
「本当はっ・・・・・あんなこと、思ってなんかない・・・・」
いつも、逃げてた。
お前を否定して、心を拒絶して。
その名前が同じであることが、いつもを思い出させるのと同時に、
の名前をかき消していくようで。
「・・・嫌いなんかじゃない・・・・嫌いなんかじゃ・・・・・」
必死にその体を抱きしめたまま、俺は身勝手に声にし続けた。
心が思っているままに。
震えるのは、2人の体温。
鼓動は早く。
もう、どちらのものかなんてわからない。
こいつからのうなずきも、答えもないまま、顔を見ることすらないまま、
わかって欲しくて、抱きしめた。
「俺は・・・・・」
今、何を思ってる?
今、何を見てる?
まだ、泣いてる。
肩に、胸に、その涙が染みていく。
「・・・・俺はっ・・・」
伝えたいはずなのに。
笑わせてやりたいはずなのに。
それ以上言葉が続かなかった。
声が喉の奥に焼きついてこびりつく。
夕日が俺の胸を焦がしてく。
(・・・・。)
言葉が続かなかった。
(・・・・怖いんだ。)
あと一度でも、その名前を呼んだら、
の名前がかき消されてしまう気がした。
を忘れていく気がした。
「ブン太。」
(・・・・・・・)
「ねぇ、ブン太。」
わがままだと、言われても。
欲張りだと、言われても。
さよならが、言えなくて。
「ブン太、ブン太。」
苦しさに見上げた赤い空に、白い蝶が飛んでいた。
「8分前の太陽を、覚えてる?」
ひらひらと。
ひらひらと。
(・・・・・・・・・・・・え?)
突然のその声は、記憶と呼ぶにはあまりに鮮明で。
「・・・この・・声・・・・」
俺は抱きしめていたこいつのその言葉にはっとする。
目を見開き、驚き。
抱きしめていた体を離し、目を合わせた。
「・・・お前にも・・・聞こえた・・・・?」
「今の・・・・・」
かすかに涙を浮かべた瞳を丸くさせ
こいつがふいに空を見上げる。
俺も同様に視線を送った先。
その声は空から降ってきたかのように。
「・・・・・蝶・・・・・?」
白い羽ばたきが、俺たちの頭の上を舞う。
赤い夕日に染まる空を。
あの日に酷く似た空を。
ひらひらと。
ひらひらと。
「・・・・・お前、なのか?」
。
呼んだはずの名前は、声にならずに空に吸い込まれる。
(・・・覚えてる)
覚えてるよ、8分前の太陽を。
が話してくれた、その話を。
見上げた空に舞う蝶を見つめたまま、
空から降ってくるその声に、俺もこいつも、ただただ耳を奪われていた。
それは、温かい春風に似ていた。
「それだけでいいんだ。」
それは、図書館の木漏れ日に似ていた。
「それだけ覚えていてくれたら、きっと私がいた印になるよね。」
それは、あの日の机の落書きに似ていた。
「だから。・・・だからもういいんだよ、ブン太。」
それは、空を舞う桜の花びらに似ていた。
「もう幸せになったっていいんだよ。」
それは、君の手のひらの温度に似ていた。
「ブン太、ブン太。」
それは、春にひどく似て。
「幸せになってね。」
ひどく優しい、の声だった。
白い蝶が舞う。
あの赤い空を舞い、空の向こうに消えていく。
ひらひらと。
ひらひらと。
あの夕日の赤に染められて。
「・・・っ・・・・丸井くん・・・」
あの夕日の赤に染められて。
ふいに零れ落ちた涙に、抗う術など知るはずもなかった。
自分の頬を伝う涙に、その赤がゆがんで映る。
‘幸せに。’
それはあの日と同じ言葉。
ずっと聞こえないフリをしていた言葉。
ふいに零れ落ちた涙に、抗う術など知るはずもなかった。
ただ、ただ・・・・・。
(・・・・ずっと。)
怖かったんだ。
誰かを好きになることが。
が消えてしまう気がして。
俺が全部、覚えているから。
(だから、)
誰かを好きになったら、その全てが消えてしまう気がして。
忘れることなんて、あるはずもないのに。
「・・・忘れる・・・もんかっ・・・・」
忘れるものか。
8分前の太陽を。
がここにいたことを。
震える唇をかみ締める。
こいつの体から、ゆっくりと静かに離した手を固く固く握り締めた。
零れ落ちる涙を拭うこともせず、空を仰ぎ、視界を赤に染め上げ。
それは、温かい春風に似ていた。
(・・・好きだった。)
それは、図書館の木漏れ日に似ていた。
(大好きだった。)
それは、あの日の机の落書きに似ていた。
(いつも想ってた。)
それは、空を舞う桜の花びらに似ていた。
(・・・・恋なんて言葉じゃ足りないくらい。)
それは、君の手のひらの温度に似ていた。
(いつも、想ってた。)
それは、春にひどく似て。
「丸井くん・・・・」
ひどく切なく、ひどく苦しく、
(好きだった。)
ひどく優しく、ひどく愛しく。
ただただ、流れる涙にのせる想い。
(大好きだった、。)
それはひどく春に似て、胸を満たす。
切なさで。
苦しさで。
優しさで。
愛しさで。
胸を募らせ、心を締め付ける。
「・・・・ちくしょっ・・・」
うまくなんか、泣けない。
みっともなくて。
こんな、涙。
震える唇をかみ締めて
空っぽの手のひらを、強く強く握り締めた。
夕日が胸を焦がしていく。
(・・・なんで、こんなに)
なんでこんなに、あったかいんだ。
春も、夕日も、風も、手のひらも、涙も。
「・・・・・・丸井くん・・・」
どうして、こんなに。
(・・・・・どうして。)
を想って、初めて泣いた。
あの日から一度だって零すことなどなかった涙を。哀しみを。
初めて、吐き出した。
気付けば、俺の制服のすそをかすかに握る、震えるその手。
赤い夕日から視線を外せば、
瞳一杯に涙をためて、泣いているこいつがいた。
思っていたよりもずっと強くて、ずっと弱く頼りないその姿。
俺は真正面に向き合うと、目の前のこいつの涙に手を伸ばした。
拭うことのできない涙で、目の前はかすむが、こいつの顔ははっきり見えたから。
笑って欲しくて、笑った。
「・・・・だから、・・・なんでお前が、泣くんだよ・・・」
その頬に触れた手。
そのまま親指で目元を拭う。
触れた髪が俺の手にかかる。
どうすればいい。
どうすれば泣き止む。
どうすればその涙はとまる。
(・・・もう、お前は泣かなくていい。)
もう、いいんだ。
「幸せになってね。」
俺のためになんか、泣かなくたって。
「・・・もう、泣くなよ。」
今。
あの日からずっと繋いでいた手を、そっとほどこう。
今。
握り締めた空っぽの手を、そっと離そう。
(・・・・・)
ぎりっときしむほどに握り締めていた手のひら。
本当は、離したくない。
・・・・でも。
今。
その手をとろう。
伝えたいことがあるから。
「丸井くんっ・・・」
俺の制服の裾を遠慮がちに掴んでいた手をとって
俺の制服から離させた。
その手を握って、目を合わせると、俺はかすかに笑った。
その泣き顔を覗き込むようにすると、
頬を染めてうつむいたその姿を引き寄せて、抱きしめる。
さっきとは違い、力任せにではなく、ただ包むかのように。
震える手は、もうどこにもない。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・ありがとう」
「・・・・・・え?」
「・・・いつも、笑ってくれて。・・・あの時、怒ってくれて。」
「・・・丸井くん?」
「・・・・・・・泣いてくれて。」
好きだった。
大好きだった。
いつも想ってた。
恋なんて言葉じゃ足りないくらい。
いつも、想ってた。
大切だった。
守りたかった。
(・・・・・)
もう、聞こえないフリはしない。
‘幸せになってね’
もう聞こえなかったフリはしない。
夕日が胸を、焦がしてく。
「・・・俺を好きになってくれて。・・・・・ありがとう」
そっと抱きしめたまま。
それが俺の、精一杯だった。
喉の奥から、とめどなくあふれる言葉。
かすれ、ぼやける声。けれど、確かに届くよう。
(・・・忘れない。)
忘れるものか。
8分前の太陽を。
がここにいたことを。
俺の幸せを、願ってくれた。
あの日の夕日に似た赤に照らされ
見上げた空に、小さく笑いかける。
俺の頬を静かに流れる涙が、やけに優しく思えて。
それは自分のもののはずなのに。
知らなかったんだ。
きっと、忘れていた。
春も、夕日も、風も、手のひらも、涙も。
それが、こんなにも温かいことを。
思い出させてくれたのは、お前だった。
(・・・。)
俺、
好きな奴が、できたよ。
やっと、呼べる。
「・・・・。」
「・・・え?」
お前の、名前。
「好きだ。」
君を残して生くことを、許して。
「・・・っ・・・丸井くんっ・・・」
「・・・好きだ、。」
「・・・っ・・・・・」
「・・・だからもう、泣くなよ。」
夕日が胸を焦がしてく。
ふいに目の端に、あの白い蝶が見えた気がした。
ひらひらと。
ひらひらと。
赤い赤い春の日。
それはあの日に酷く似ていた。
それは春が嫌いになった日に似ていた。
けれど嫌いになりきるには、春はいつでも温かすぎた。
優しすぎた。
に全てを話すには、俺は言葉が下手で、
うまくは言えなかった。
でも、俺の話を聞きながら、何度も何度もうなずいて。
その度に泣きそうになる姿が、大切に思えて仕方がなかった。
大切に思えて。
「・・・・・・・・」
繋いだ手を、今度こそ
離しはしないと心に決めた。
8分前の太陽を忘れはしないから。
だからこの手は、さよならの手を振るためにあるのではなく、
離れないためにあるのだと知っているから。
繋いでいた手を今一度握り締めると、
が驚いた様子で俺を見た。
夕日が染める帰り道で、が静かに笑った。
「・・・・やっと。」
「え?」
「やっと笑ったぜぃ、お前。」
握り返された手。
「・・・・丸井くんも。」
その言葉にはっとして、を見れば
赤い顔してうつむいていた。
かすかに微笑む横顔を見て、泣かせてごめんと心の中でつぶやく。
「・・・。」
やっと、呼べる。
その手を握り締めて。
「好きだ。」
君の、名前。
End.