これは遠い遠い異国のお話。



貧しいきこりの男が、美しい妻と、2人のかわいらしい子供と



大きな森の隅に、小さな小屋を構えて暮らしていました。



2人の子供のうち、男の子のほうはヘンゼルもとい、ブン太。



女の子のほうはグレーテルもとい、といいました。







「柳ー。腹減ったー。」


「お母さんと呼べと言ってるだろ、ブン太。」


「真田君、もううちにご飯ないんだね。」


「お父さんと呼べ、。・・・そうだな、食べ物はブン太が食べつくしてしまった。」


「すまないな、二人とも。・・・弦一郎がもっと高給取りだったらこんな苦労は・・・。」


「・・・・・・・・・・」






しくしくしくしく柳が、もとい、お母さんがわざとらしく泣いてみせると



安月給の真田、もとい、お父さんは何も言えなくなるのでした。



そう、真田家は貧乏。



なのに長男ブン太の食欲により、4人家族にしては異常なまでのエンゲル係数の高さ。



しかもこのとき、国中で飢饉が起こってしまったので、赤字により家計は火の車だったのです。































『ヘンゼルとグレーテル』



































ある日の、フクロウがほーほーと鳴き続ける深夜のことでした。



それは夫婦が並んで寝ているときの会話。





「なぁ、蓮二。・・・俺の稼ぎが悪いのは申し訳ないが、もう家の食べ物は残り少ない。」


「お母さんと呼べ。そうだな。なぜもっと若い頃に資格を取っておかなかった、弦一郎。
     今の時代漢字検定だけじゃのりきれないのはわかっていただろう?たとえ一級でもだ。」


「・・・ああ。だがどうする?これではとブン太を食わしてやるどころか・・・。」


「二人を養わなくてはならない俺たち2人分の食料もない・・・か。」





そうです。



真田パパは漢検一級以外資格がありません。



若い頃、テニスに夢中になっていたからです。



ちなみに柳ママとはそこで出会いました。



それはおいといて、パパとママの二人にとって今夜は長い長い夜でした。



2人は空腹な上に、これからの生活を真剣に考えなくてはなりません。






「・・・弦一郎。そもそもうちの食卓は何がいけないと思う。」


「ブン太の食欲だな。1日で一週間分は終わらせてしまう。」


「そうだ。・・・・だから、こんなのはどうだろう。」






柳ママは、暗闇に隠れて静かに静かに開眼します。



そう、それは柳ママが立てた、真田家貧乏脱出大作戦でした。





「・・・なんだと?かわいいわが子を森へ置いてくると言うのか!!」


「しっ!声がでかい!!
俺もうるさい!!このままじゃ4人が4人飢え死にだ。俺はにそんな死に方をさせるつもりはない!!」


「・・・・だが。」


「よく聞け、弦一郎。」





明日の朝、深い深い森に子供を置き去りにしよう。



その間、少しでも食べ物を蓄えるのだ。



ブン太がいないだけでも大分違う。二人には一つずつパンを持たせてやろう。



とりあえずの間だ。



本当はブン太だけ置き去りにしたいが、心優しいのこと。



あいつを探しに行ってしまう。



だから、いっそ2人を置いてこよう。



とりあえず断食させるんだ。



それしかない。



お母さんの開眼と力説に真田パパはかたまるしかありません。



そんな、かわいい我が子を2人も置き去りにしなくてはならないと言うのか。



パパは反抗を試みます。






「だが、蓮二!」


「黙れ、弦一郎。俺はお母さんだ。それにブン太の奴も俺をお母さんと呼ぼうとしない。ちょうどいいおしおきだ。」


「・・・・・・・・・・」


「なぁに大丈夫。家計が黒字になったら迎えにいく。」







にやっと笑う柳ママ。



その美しさは、まさに恐怖でした。



真田パパに出来たことといえばうなずくだけ。



そう、柳ママはただお母さんと呼んで欲しいだけだったのです。



ところが、この夫婦の会話を、あまりの空腹に寝付けないでいた2人の子供は、



物音を潜めて聞いていました。



が泣き出します。



ああ、なんてこと。



柳ママをお母さんと呼ばないばかりに・・・。





「ちくしょう真田の奴・・・!なんでいつも柳の尻にひかれてんだよ!」


「しょうがないよ、柳くんの開眼には逆らえないもん。それよりどうしよう、ブン太。・・・私たちもうダメなの?」


「泣くなよ、!俺がなんとかしてやるぜぃ!」


「ブン太・・・」


「この天才にまかせろぃ!」





ブン太は自分の食欲が最大の原因でみんなの食べ物がないことなど気にしません。



純粋すぎる子供だったからです。



食うか、食わないか。



まさに生きるか死ぬかのサバイバル。



ブン太にとってのおうちの食卓はそんな感じでした。



ブン太は泣くの頭を優しくなでると真田パパと柳ママが寝静まったところを見計らって



おうちの裏口からこっそり外へ出て行きました。



ホーホーと泣き続けるフクロウ、月明かりがブン太の赤い髪を照らし出しています。



うちの前に敷き詰められた白い砂利がまるで銀貨のようにきらきらと光っていました。



ブン太は両手一杯にその砂利を拾うと、そっと家の中に戻ってきました。





「ブン太?」


「しー。。もう、寝ろぃ。大丈夫。俺に任せときな。」


「・・・・・・・・・・」





は不安で不安でいっぱいでした。



ブン太は食べ物以外に執念を見せてくれたことがなかったからです。



あとは、たまに真田パパがブン太とテニスをしてみせてくれたとき。



明日が不安で不安で眠れないのに、



そんなを差し置いて、隣でブン太はぐっすりと眠りにつきました。


















、ブン太、起きなさい。」


「ん・・・・?・・・・・柳くん?」


「お母さんと呼びなさい、。ほらブン太も起きろ。マキを拾いに行くぞ。」


「ふわぁ・・・・・おっす、柳」


「お母さんだ。」





















柳ママが2人に一つずつパンを渡します。






「これは昼食だからな。その前に食べ終えるなよ。」


「いっただきまーす!」


「ブン太!!早まらないで!!!」






が必死に止めたので、



ブン太のお昼が朝のうちになくなることはありませんでした。



ブン太は必死に食欲を押さえ込み、カバンに昨日拾った白い小石を詰め込みます。



そのあと、家族四人そろって森の奥へと歩いていくのでした。



森をしばらく歩いていくと、ブン太がしきりに家のほうへ何度も何度も振り向くので



真田パパが不思議そうに言いました。





「・・ブン太。何をそんなにきょろきょろしているんだ。」


「ん?何か食べ物落ちてないかなぁって。」


「(拾い食い?!)」


「・・・ブン太。食中毒には気をつけろよ。」






はブン太の思いがけない発言に本気で驚いたのに、



柳ママは拾い食いを許可しました。



それは、これから置き去りにしてくる子供への良心だったのでしょうか(絶対に違う。)



本当はその間に、ブン太はあの白い小石をカバンから出して道に落としていったのです。



そう、本気で食べ物を探しながら。










森の深くまでくると真田パパが言いました。





「2人とも、薪を拾ってこい。俺がここで火を起こしてやる。」


「・・・・ちっ。えらそうに。」


「「「・・・・・・・・・・・・・・」」」





柳ママの日ごろの真田パパに対する不満が舌打ちと共に飛び出しましたが



真田パパもブン太ももあえて聞こえなかったことにします。



ブン太とは両手いっぱいに薪を拾ってきました。



真田パパは、一本の木を手をあわせてようにして持つと、すごい勢いで木をこすり始めます。



そう、まさに大昔の人間たちが火を起こした原始的な方法で。







「はぁああぁあ!!」


「・・・・・・さっ。2人とも。ここにライターがあるからな。」


「「・・・・・・・・・・・」」








真田パパは必死だったけど、文明の利器には勝てません。



柳ママがさっさと火をつけます。



夫婦間のすれ違い。子供は見て思うのです。



・ ・・・なんでこの2人結婚したの。



と。








「いいか、二人とも。ここで焚き火にあたって待ってなさい。俺たちは木を切ってくるから。大人しく終わるのを待っていてくれ。」









が泣きそうになります。



嘘なんでしょ、柳くん。



私たちを置いていくのでしょう。



そんなが寂しそうな顔をするので、柳ママ、思わずを抱きしめます。






「柳!を放せぃ!!」


「黙れ、ブン太。お母さんだ。」






柳ママの開眼に、純粋なブン太は叶いません。



をそっと放しての頭をなでると、柳ママに向かっては笑います。










「(・・・・この子が弦一郎に似なくてよかった。)」










心から、
心から、柳ママがそう思った瞬間でした。



焚き火にあたって2人は大人しく待ちました。



お昼になると、柳ママがくれたパンをそれぞれ食べました。



ブン太は一口で。は大切そうに一口ずつかみ締めながら。



その間も、斧で木を切る音は止まないので2人はずっと安心していました。



真田パパも柳ママも側で仕事をしていると思っていたからです。



でも、実際は。







「・・・考えたな、蓮二。」



「ふっ・・・これもブン太を懲らしめるためだ。それから俺はお母さんだ。」







ブン太とが聞いていた音は、斧の音ではなかったのです。



真田パパが切った木から丸太を一つ作り出し、



そこに紐をくくりつけ、木の高いところにくくりつけました。



その丸太が強風に揺らされ、あっちの木へこっちの木へとぶつかって



その音がブン太とには聞こえていたのです。



ブン太とはこんな風に大人しく座っているうちに、ついつい眠ってしまいました。



次に目が覚めたときは、すっかり日が暮れて、あたりは闇に覆われていたので



ついにが泣き出してしまいました。






「ひっく・・・・・どうして?・・・・柳君は本当に私たちを置いて行っちゃった・・・・」






そんなの手を固く握り、ブン太は慰めようとします。






「・・・・。泣くなよ。」


「ブン太・・・・」


「俺がいれば怖くねぇだろぃ?」


「・・・・・・・・・・」


「お前に泣かれると、どうしていいかわからねぇんだよ・・・・」


「ブン太っ・・・・・」






ブン太は、が生まれてきたときからが大好きでした。



大切で、一生守ってやろうと決めていたのです。



かわいいかわいい妹。



消えかけの焚き火の火が、彼女の涙を照らし、をいつもより艶やかに魅せます。



ブン太は、我慢が出来なくなりました。



だってブン太はが大好きで



ブン太は男の子だったからです。






・・・。」


「ブン太っ・・・ダメ・・・!」






近づける顔。触れようとする唇。



の手を掴んで離さないブン太。



にとっては大ピンチでした。



そのときには、ブン太の後方に白い発光体が見えたのです。






「・・・・え?」



「近親相姦厳禁!!成敗!!」



「は?・・・・・うわぁああ!!!!」






ブン太が、軽く前方へ吹っ飛びます。



はうまくブン太が飛んでくるのをよけました。



・ ・・・軽くではありませんでした。かなり痛そうにブン太がうめきます。



白い発光体はの周りをひゅんひゅんと飛び回ったかと思うと、



の目の前でぴたっと止まりました。







「あっ・・・・あなたはっ・・・?!」


「初めまして。お嬢さん。僕は森の妖精、幸村だよ。」



「・・・なんだそのおとぎ話の匂いのカケラもしない名前は。」








ブン太がよろよろとこっちに戻ってきました。







「ふふっ・・・なんならティンカーベル・幸村でもいいよ?」


「(・・・・・プロレスラー?)」







笑顔で真っ白な服に包まれたミニマム幸村君。



はその不思議で神秘的な彼の輝きに笑顔を取り戻しました。





「こんばんは、幸村君。私は。こっちはブン太。」


「・・・・ブン太ね。ダメだよ。妹に手だしたら。それに2人は迷ってるみたいだね。」


「・・・・大きなお世話だ。それに月が出てくれば道なんかわかるぜぃ。」






森の妖精幸村。



2人はことのいきさつを2人に話します。



幸村はパタパタと透明な羽を羽ばたかせながら聞きました。



そうして、夜の森に、月が高く上りました。






「・・へぇ。なるほどね、ブン太。考えたじゃないか。」


「天才的だろぃ?」


「・・・。俺はこの森の妖精だからここから出れないけど、何か困ったらいつでも力になるからね。」


「ありがとう!幸村君!!」






ティンカーベル・幸村の笑顔に不安を覚えたブン太。



急いでぎゅっとの手を握りました。



ブン太の落としてきた白い小石が月明かりに照らされて、



キラキラと銀貨のように小石が家路を教えてくれています。



2人は振り向くことで



幸村には手を振りながら、



ブン太は幸村とにらみ合いをしながら、



しっかりと家にたどり着くことができました。



明け方近く、2人は意を決して家のドアをノックします。



とんとんっ。








「(!!)・・・・ブン太、!」


「・・・よぉ、柳。迎えが遅いんで二人で帰ってきたぜぃ?」


「・・・たっただいま、柳くん!!」


「・・・・お母さんだ。」







2人が帰ってきた姿を見て、真田パパはほっとしました。



2人が心配でたまらなかったからです。



ところが、柳ママは違いました。



いえ、柳ママも2人を心配して明日にでも迎えにいこうと決めていただのですが



帰ってきた2人。そこまではよかったのに。



あろうことかブン太が柳ママに戸口で、挑戦的な笑みを向けてしまったのです。



これでは、柳ママのテニス時代の参謀の血が騒ぎます。






「(おのれっ・・・ブン太!!)」


「蓮二。・・・もういいじゃないか。」


「お母さんだ。・・・いいや。こんな話が漏れたら貞治にバカにされる。」


「お前っ・・・まだあの男と会っていたのか?!」

「黙れ!金がないから借りに行ったんだ!誰のせいだと思っている!!」



「「・・・・・・・・・・・・・・・・・」」






深夜の夫婦喧嘩。



そんな2人を見てブン太とは思います。



・ ・・なんでこの2人は結婚したんだろう



と。



柳ママと真田パパの白熱した試合は続きました。






「もういい!!明日はもっともっと森の深いところに置いてくる!!」


「だからっ・・・・もういいじゃないか!!」


「いいわけがあるか!!子供にあんな挑戦的な目を向けられたんだ!もうあれは挑戦状以外の何ものでもない!!」






柳ママ開眼。



誰に文句が言えますか。



そんな2人の大喧嘩。



柳ママの大声によって、2人はまたしても全てを聞いていました。



ブン太はまた白い砂利を拾ってこようとしましたが、



用意周到な柳ママ。さすが参謀、抜かりなし。



家の出口いたるところに大きな錠前で施錠がしてあったので、白い砂利を拾いにいけません。



なす術のないお兄ちゃんを見て、はまた泣き出しそうになります。





「大丈夫だろぃ、。俺がついてる。」


「でも・・・・・・・」


「安心して寝ろぃ、な?」





は気が気じゃありません。



だって森でブン太にキスされかけたのですから。



またしてもは余計な胸の高鳴りで眠ることができないのに、



ブン太はそんなの隣ですやすやと眠りました。








あくる日。



朝早くから、柳ママ。



張り切って2人を起こし、パンを渡します。



それはこの前のより小さな一切れのパン。







「ブン太っ!早まらないで!!」







の必死の説得により、ブン太はまたしてもお昼前にパンを我慢しました。



先日のように、ブン太が度々振り返りながら、



今度は小さくちぎったパンを道に落としていきます。



真田パパはそんなブン太に気付きました。







「・・・・おい、ブン太?何を泣いている?」


「なっなんでもねぇよ!!(俺のパン!!)」


「何か悪いものでも食ったか?」


「(・・・・・・ブン太。)」







は切なくて仕方がありません。



あんなの食いしんぼうのブン太が自分のパンをちぎって落としていくのです。



どんなに心痛いことか。



自分のこのパンはブン太にあげよう。



そう固く誓った瞬間でした。



ブン太はこぼれる涙を拭きながら目の前でかすんでいくパンをちぎり続けました。



そう、最後の一切れも口にすることなく。



深い深い森の奥までくると、また焚き火をします。






「ふふっ・・・蓮二、見てみろ!」


「真田君!それって!!」


「お父さんだ、。」






真田パパ誇らしげに掲げるはマッチ。



は感動してパパの手元をじっと見ていました。



しゅっ、しゅっ。






「・・・・・・さ。、ブン太。ライターがあるからな。」


「「・・・・・・・・・・・」」






真田パパのマッチはしけっていたので、またしても軍配は柳ママにあがります。



落胆した真田パパを端目に



柳ママはブン太とに告げるのでした。






「さぁ、子供たち、そこでおとなしくしているんだぞ。眠くなったら寝てもいい。仕事が終わったら迎えに来る。」






真田パパと柳ママは森の中に消えていきます。



お昼になると、はブン太にパンを差し出しましたが



そこはお兄ちゃん。



自分の食欲を抑えて、にも半分パンを渡しました。



2人は案の定眠ってしまい、気付いた時には夜でした。






「大丈夫だぜぃ、。月が昇れば道はわかる。」






泣きかけの妹を必死になぐさめるブン太。



またしても消えかけの焚き火の火が、を艶やかに魅せます。



・ ・・どうしたものか。



自分が男であるばかりに。



ぎゅっと握り締めた手。






「ブン太・・・・・」









その時です。






「危ない、!!!!!」






びゅんっと2人の間を白い発光体が通り過ぎました。











「危ないのはお前だ!!」


「ゆっ幸村君!!」


「ったく。とんだ狼だね、ブン太って。でるなら赤ずきんにでれば?」


「・・・・幸村、お前急に飛んでくるなよ。びっくりすんだろぃ。」



「近親相姦反対!!」



「・・・・・・・・・・」










ぱたぱたと羽ばたくその羽がの心をなごませます。



ブン太の目の前で手を交差して×を見せる幸村君。



ブン太は自分の行動に何も言い返せません。



月が昇り、森が照らされ始めます。



とブン太はしっかりと手を繋ぎ、パンくずを落とした道を探します。



幸村君も2人についてきてくれました。



ところが、どこを探せど見渡せど、パンくずはどこにも落ちていません。






「え?ブン太、今度はパンを落としてきたのかい?」


「・・・そうだぜぃ。」


「・・・・・バッカじゃない?」


「ゆっ幸村君っ・・・・。」







ブン太の胸にどすんっと刺さったバカの言葉を



は必死でケアしようとします。



幸村君、ブン太との目の前でぱたぱたと羽を動かしながら言います。







「この森には何千もの鳥がいる。パンくずなんて食べてしまうに決まってるだろ。」


「じゃっじゃあ、私たちもうっ・・・・・・・」


「落ち着けよ!!!歩いてりゃもとの道なんてすぐ見つかる。」


「・・・・どうかなぁ。」


「おいっ幸村!!余計なこと言うな!!」


「でも、。一緒に探してあげる。見つからなかったらここに住みなよ。俺が案内してあげるし。」


「ってかお前妖精だろぃ。俺たちの家までの道知らねえの?」


「俺はしがない妖精、幸村。人間の通るような道は知りたくもない。」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・」








ブン太は思いました。



・ ・・ああこの妖精。柳より嫌な感じがする。



そう、あの開眼に劣らない恐怖と美しさを持った妖精。



ブン太と幸村はを励ましながら森を歩き回ります。



途中、幸村が見つけてくれた木の実を食べながら、それでも夜中中歩くことはできず、



結局2人はその番疲れきって大きな木の下で眠ってしまいました。


















そんなこんなで、森を歩き回ること二日。



森は深くなるばかり。



2人はつ疲れきっていました。



倒れるより他はなく、仰向けになって、2人で両手を広げていました。



幸村もちょこんっと木の枝に座ります。






「ブン太・・・もう、ダメかもしれないね。」


。こんな使えない兄をもってかわいそうに・・・・」


「黙ってろぃ、幸村!!」







ちょうど時間はお昼ごろ。



空腹はピーク。



すると2人が見ていた空に雪よりも真っ白な鳥が横切りました。






「すごい、綺麗・・・・・。」


「ん?。俺のこと?」


「黙ってろぃ、幸村!!」







そしてその鳥の鳴く声のなんと綺麗なこと。



は立ち上がり、その鳥を追いかけて歩き始めます。



ブン太もあてのない道ならとに黙ってついて歩き始めました。



でも、ティンカーベル・幸村はその鳥を見て不思議そうに首を傾げます。






「(・・・見たことのない鳥だ。)」






鳥を追いかける二人。



なんだか足取りは先程より軽く。



そして、一軒の家の屋根にその美しい鳥はとまりました。



2人はその家の近くまで行って気付きます。





「ブン太!見てみて!この家、お菓子でできてるよ!!」


「すっげー!!食い放題じゃん!!」






屋根はクッキー。



窓はカントリーマー○。



煙突はアポ○チョコ。



生クリームの装飾、砂糖菓子のドア。



何から何までお菓子で出来ている家です。







「たっ食べてもいいかな、ブン太。」







そうが聞いたときには、ブン太は屋根を壊し始めていました。



もとい、食べ始めていました。



もそんなお兄ちゃんを見て窓を取り外して小さく割って食べようとします。






「ちょっと待って、!この家はっ・・・・・」


「はい、幸村君もどうぞ。」


「えっ?ありがとう・・・・・・」






のかわいらしい笑顔に幸村君は手渡されたお菓子のカケラを



怪しいと思いつつも口にしてしまいました。



(ポンっ!!)






「え?幸村君・・・・・?」






お菓子を食べた途端幸村君の姿が消えてしまいます。



どうして・・・・・?



怖くなったはブン太の姿を確認。



ブン太はおいしそうに屋根を破壊し続けていました。



よかった、ブン太は消えたりしていない。



ですが、幸村君が消えてしまったことは伝えなくては、がブン太を呼ぼうとしたときです。








「がつがつ、がつがつ、俺の家を食べる奴はだーれじゃ?」








なんとも素敵なハスキーボイス。



家の中からの声にさすがのブン太も、お菓子を食べるのをやめて、



急いでのもとに駆け寄ります。



が見上げればお菓子の家の屋根は半壊していました。






「・・・・・・・・・・・・」


「ぼりぼりっ・・・誰だ?・・・ぼりぼりっ・・・・姿を見せろぃ!」






ぼりぼり、ぼりぼり、ハムスターの頬袋のようにブン太の頬にお菓子がつまっていました。











「・・・ほぉ。かわいい子供たちじゃなか?誰につられてここまで来たのかの?さぁ、中にはいりんしゃい。何もないが、疲れてるみたいじゃし。」


「あっ・・・・あなたは?」


「・・・・・かわいいお嬢さん。まずはお前さんの名前が知りたい。」


・・・です。」


「ほう・・・。・・・それで?そっちのハムスターは?」


「ハムスターじゃねえ!!ブン太だ!!」


にブン太。・・・俺は仁王。この森に1人で住んでて寂しい思いをしていたところじゃ。さぁ、おいで。」


「「え?」」











気付いた時には、いつの間に近くまでやってきていたのか。



とブン太の手を仁王がとらえていました。



お菓子の家の中はお菓子で一杯でした。



2人の好きなお菓子がたくさん。



チョコも飴も綿飴もりんごもケーキも。



今まで真田パパの安月給で食べることのできなかったものばかりが2人を囲みました。







「仁王!これ食べていいのかよ?」


「ん?ああ。好きなだけ食べんしゃい?」


「ありがとう、仁王くん!!いただきます!!」







2人が幸せそうに食事をする後ろで、仁王がたちの悪い笑みを浮かべていました。



この男、仁王は銀髪で整った顔をして、なんともルックスのいい、いい男に見えましたが、



実は、悪い魔法使いで、子供たちが来るのを知って



わざとらしくお菓子の家を作り上げ、2人をだましていたのでした。






「・・・なんだか、眠くなってきちゃった。」


「俺もだぜぃ。。」


「なら2人に部屋を用意しよう。」






仁王の中指と親指がパチンっと音を立てると、



とブン太はいつの間にか温かいベッドの中に2人揃っていました。



うすれゆく意識の中で、仁王の声がします。



あの素敵なハスキーボイスで。






「おやすみ。」






それは2人が同時に眠りに落ちた瞬間でした。



とブン太。



2人のすやすやと眠る姿を見て仁王はそっとつぶやきます。





























「とんだご馳走を、手に入れたもんじゃな。」







































喉を鳴らしてくくっと笑い。



それから毎日のように2人のいるその部屋に、仁王はご馳走を持って現れるのでした。






「仁王君っ・・・・あのっ・・・・・」


「ん?なんじゃ、。」


「こんなにいつもありがとう!!」







目の前のごちそうに、は感謝を覚えるばかり。



ブン太は食べるばかり。







「かわいいな、お前さんは本当に。」


「・・・・え?」


「・・・なんでもなかよ。それじゃあ、ごゆっくり。」


も早く食えよ!」


「あっ・・・・うん!いただきまっ・・・・・」







が手を合わせて、ブン太がすでに食べているように料理に手を伸ばそうとしたときでした。











「ちょっと待ったぁー!!!!」


「「?!」」











突然、2人の座るテーブルの目の前に現れたのは、



珍しくも、くるくるとテンパのかかった黒いねずみ。



・ ・・・随分大きなねずみでしたが。





さん、ブン太、ちょっと待った!!」


「あなたはっ・・・・?」


「おいっちょっと待てぃ。なんで俺は呼び捨て?」


「俺はティンカーベル・幸村の仲間。黒ネズミの赤也。2人とも騙されちゃダメッすよ!!」


「・・・・騙されるって?何がなの?赤也。」





赤也は鼻の下をへへっとこすりながら2人の食事を食べ始めました。



その食べっぷりには感動を覚えます。



ブン太並みの大食いにブン太以外で初めてあったのです。



ところがブン太は違いました。






「って!お前自分が飯食いたいだけだろぃ!!」


「ひひゃいひゃひゅよー!ひゃひゃらひゃまひゃひぇひぇふってひゅっひぇうひぇひょー!!」


「・・・赤也、なんて言ってるかわからない!」






赤也はもぐもぐと口に入れたものを全部噛むと



ごくんっと呑んでに向かって話します。






「だから2人とも騙されてるんですよ!!仁王は魔法使い!ブン太は十分に太らせて食うつもりっす!!」


「だからっなんで俺を呼び捨て?ってかじゃあはどうしようってんだよ!」


「・・・・さんもある意味喰うつもりっす。」


「(・・・・・ある意味?)」


「っ・・・・・・・・・・・あんのっエロ魔法使い!!」






には何がなんだかわかりませんでした。



食べられるってことは食べられるって意味で、ブン太と変わらないはずなのに。



・ ・・ある意味?



考えてもわかりません。



いえ、わからなくていいのです。





「ねぇ、ブン太。ある意味って?」


「・・・・お前はまだ知らなくていい!」






その通りです。






「でもよ・・・俺たち結構ここ毎日たっぷり食わされてるんだよ・・・・。」


「・・・マジっすか?いやぁ、幸村部長は魔力が強すぎて仁王の魔法でここには入れなかったんで・・・出遅れちゃったか。」


「(・・・・幸村部長?・・・魔力?)」






が次々に疑問を持ちますが、



大人の世界には触れてはいけないことのほうが多いことを



真田パパと柳ママのケンカでなんとなく知っていたので



あえて赤也には聞きませんでした。







「とにかく、今度呼び出されたら気をつけてくださいね!2人とも喰われます。」



「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」







2人には時間がありませんでした。



その日から、運ばれてくる料理は大半を赤也が食べてくれていたのですが、



いかんせん、食べなければ生きていけないので



2人も少しずつですが、食事をとるしかありませんでした。










「・・・・2人とも。今日は料理を作るのを手伝ってくれんかの。」










そして、いよいよ魔法使い仁王のお呼び出しがかかったのです。



ブン太とは恐る恐る、仁王のあとをついて、広いキッチンにやってきました。



仁王は笑顔で冷蔵庫から野菜を取り出すとそれをに切ってほしいと頼みます。



綺麗過ぎる笑顔で近づいてくるので、思わずブン太は身構えますが。



仁王はパンを焼こうと、ブン太の肩を優しく叩きました。



そして、あろうことか。







「「?!」」







クマさんエプロンを装着したのです。



かわいい!は思いますが、これも相手を油断させるためなのだろう。



冷静さを取り戻そうと頭を振るいます。









「おっ。・・・なぁブン太。カマドの火の様子を見てくれるか。十分だったらパンの生地を焼くとよ。」



「(・・・・・・来たな。)」










ブン太とに緊張が走ります。



カマド・・・。開いたら最後、きっとそこに押し込められるに違いない。



クマさんエプロンは静かに全てを見つめていました。



ブン太は、恐る恐る仁王の言うとおりにカマドの取っ手に手をやりますが、



ふと思いついたのです。





「なっなぁ仁王。」


「ん?」


「火の様子を見るってどうやるんだよ?俺食う専門だからわかんねぇって。」


「そのカマドを開けて、中を覗き込めばいいじゃろ?」


「・・・やっ・・・やってみせてくれよ!!」


「(っ・・・・・ブン太!)」





トントントントン包丁の音が心音と連動していました。



は野菜を切る横目で仁王とブン太の様子を確認をしようとします。



ブン太に冷や汗。



仁王はにっと笑って見せると、何も言わずにブン太とカマドに近づきます。



トントントントン。



・ ・・・・怖い。



トントン



トントン。









「・・・・・・・やってみせる?」


「(気をつけて、ブン太!!)」








仁王の手がブン太にのびて、ブン太はぎゅっと目をつぶりました。



・ ・・終わりだ。



もう、これで。



そう思ったのに、仁王の手が伸びたのは、カマドの取っ手。








「え?」


「だからこうすればよかよ?」


「(!!)いっ今だ!!」


「ブン太!!」








仁王がカマドの中をのぞきます。



ブン太はその様子を見計らって、仁王の背中を押そうと、勢いよく突進してきました。



が。



・・・・・仁王は、魔法使い。








「・・・・お見通しじゃ。」


「うっ・・・・うわぁぁああぁ!」


「嘘っ?!ブン太?!」







仁王はブン太の突進をひらりと交わし。



ブン太は、そのままカマドの火の中に消えてしまったのです。








「・・・う・・そ・・・・・・・・」


「・・・・大丈夫じゃよ、。」


「え?」


「これはナマモノ焼却用のカマド。証拠は残らん。」

「そんなこと聞いてない!!」








そんなことって、ない。



嘘だ。嘘だ嘘だ。



は心で繰り返します。



最愛の兄。



いつも傍にいた人。



今目の前で消えたと言うのか・・・・。



には信じられませんでした。



いえ、信じたくありませんでした。






。」


「(!)やっ・・やだっ・・・・離して!!」


「俺の嫁さんになってくれん?」


「なっ・・・・・・・」







もうクマさんエプロンなんてかわいくない!



いつの間に近づいてきていたのか。



の手をしっかりと握りしめた仁王。



を放そうとはしません。







「ひとめぼれしたんじゃけど。」


「何言ってんのよ!ブン太をっ・・・・ブン太をっ・・・・・・・!」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・」






ブン太を、消しちゃったくせに。



は涙がこぼれてとまりません。



あふれてとまりません。



ブン太、ブン太。



嘘だよね。



だって、お兄ちゃんでしょう?



守ってくれるよね。



あたしの、大切な人。



の涙に、仁王が口付けようとしたその時。
















「なぁにがひとめぼれだ。」



「(!!)」



「・・・・ひとめぼれはひとめぼれ。」



「俺なんかなぁ!が生まれた瞬間から
ぞっこんだっての!!



「(ぞっこん?!)ブっ・・・・・ブン太!!」






















は仁王の手を振り払ってブン太に駆け寄ります。



それは確かにブン太でした。



まぎれもなくブン太でした。



カマドの前に、腕を組んで、が駆け寄ってくると力一杯抱きしめます。







「・・・・ティンカーベル・幸村か。・・・・一匹、ネズミがいたのは知っていたが。」


「おいたがすぎるよ、仁王。」


「幸村君!!」


「やぁ。まだ喰われてないね?」


「(・・・・・・ある意味の意味だね!!)」








意味はわからないけれど、自分は無事なのでうなずきます。



ブン太に抱きしめられながら、自分の近くでパタパタと羽を羽ばたかせる幸村。



彼はずっと仁王の魔法を破ろうと試みていたのでした。



そして、ブン太を助けてくれたのも幸村でした。







「おい、人の妹泣かせといて口説こうとしてんじゃねえよ。エロ魔法使い。」


「まったくだ。は俺のものになるのに。」


「・・・・え?」







仁王はクマさんエプロンのクマさんを見つめていました。



3対1。どう考えても分が悪いのは仁王。



もさっきの行動を見ていると仁王を睨まざるを得ません。



仁王はふっと顔を上げ、



そして、と目を合わせました。








「だって・・・・・・お嫁さんが欲しかったんじゃもん・・・・・・。」








魔法使い仁王。



わーんわーんとわざとらしく両手で顔を覆って泣き出しました。



はなんだか切なくなってきます。



最初に会ったときを思い出したのです。



森に1人で寂しく暮らしていると、仁王は言っていました。






「ブン太・・・ちょっと離して。」


!騙されるなって!!」


「でもっ・・・・・・」







ブン太の胸をそっとおせば、



ブン太もの行動に腕の力を緩めるしかありません。



両手を覆って泣き続ける仁王にが近づき、その顔を覗き込みます。







「・・クマさんエプロン。」


・・・・・・」


「かわいいですね。」


!そいつ本当は泣いてねぇんだって!!騙されるなよ!!」








ブン太は気が気じゃありません。



クマさんエプロンをがほめたのです。



幸村は黙って全てを見届けます。



仁王は顔をあげ、もう一度の手をとり。






「あっおい、こらっ、仁王!」



「俺の嫁さんにならん?」



「・・・・・でも、そういう話は柳くんや真田くんともしないと・・・・」



「・・・・誰?」



「お父さんとお母さん。」



「なるほど。」



!!はっきり断れよ!!」








ブン太の叫び虚しく。



は心優しい子だったので、仁王の傷つかないように断ったのでした。



幸村が仁王のもとにひらひらと飛んでいきます。






「仁王。2人には帰るところがあるんだ。」


「・・・そうか。・・・・2人にはお詫びに俺の持ってる宝石をあげるとよ。」


「「え?」」


「売って、腹の足しにしんしゃい。」








そんなこんなで、仁王は2人が持てるだけの宝石類を渡し、



ブン太とはポケットとカバンをいっぱい宝石でいっぱいにすると、



仁王に手を振って別れを告げました。







「ブン太、。俺と赤也で道を探しておいたんだ。」


「「本当に?!」」







幸村が何か長々とした呪文を唱えれば、



2人はあっという間に、見知った道へと出ることができました。







「ありがとう、幸村くん!!」


「俺はしがない森の妖精。これからは一緒に行けないから。お別れだ。」


「あー!!おいっ幸村!!」







幸村はの額にそっとキスを贈ります。



ブン太が怒りますが、幸村のほうが怖いので、



まったく効果はありません。



に微笑んだ後、幸村はブン太を見据えました。










「近親相姦は禁止!」



「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」










ブン太には何も言えません。



ブン太の目の前で×を作ってそのまま幸村はすっと消えてしまいました。







「・・・行くぞ、。」


「・・・・うん!!」







固く固く手を繋いで。



ブン太とは見知った道を歩きます。



すると、後ろから馬のひずめの音がしました。







「おや・・・・真田君の家のブン太くんとさんではないですか?」


「あっ!郵便屋さんの柳生さん!!」


「・・・・・・・おいっ。隣に外人がいるぜぃ。」



「俺はお前らと同じ国の人間だ。」



「ふふっ・・・彼はアルバイトのジャッカル桑原君です。」


「「・・・ジャッカル?」」








真田家には週一で郵便屋さんが来ます。



それがこの馬のひく馬車に乗った柳生というとっても紳士的なお兄さんでした。



都合よく、もとい、運よく2人の歩く道を通った柳生さんとアルバイト、ジャッカル。



2人を馬車に乗せて家まで乗せてくれると言うのですから、都合がいっ・・・ラッキーでした。



重たい重たい宝石を、その小さな体で運んだ二人。



見慣れた家が見えてくると、まずブン太が馬車から飛び降りました。







「来いよ、!!」


「あっ・・・ありがとう、柳生さん!!ジャっ・・・ジャっジャっ・・・・・・ジャ?」


「ジャッカルだよ。覚えとけよ。」


「うん!ありがとうジャクルさん!!」


「ジャッカル!」








ブン太の伸ばしてくれる手に向かっても馬車から飛び降りました。



優しい柳生さんとジャ・・・ジャっジャ・・・・ジャ?ジャクルさんに手を振って2人は家のドアを開けて飛び込みました。











「真田!柳っ・・・・・!!」



「仁王です。よろしくお願いします。お母さん、お父さん。」



「そうかっ・・・・!仁王はお母さんと呼んでくれるのか!!」



「俺は許さんぞ!!お前みたいな輩に娘をやれるか!!」



「そういうことは、仁王より稼いできてから言うんだな、弦一郎。」



「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」










家のドアを開けて、もブン太も固まりました。



なぜって?



真田パパも柳ママもたくさんの宝石が置かれた机の前に座り、



その向こう側にあの魔法使い仁王がいたからです。













「って!なんで仁王が!!」



「あっお帰り、。今、お母さんとお父さんに結婚の許しをな・・・。」



「お父さんと呼ぶなぁ!!」



「うるさい、弦一郎。俺はお母さんでかまわん。いや、お母さんだ。」



「「・・・・・・・・・・・・・・・・・」」













それからというもの大変でした。



人間になった幸村が来るわ。人間になった赤也が来るわ。



みんなに求婚です。








「ならわかった。俺が望むものをちゃんと持ってこれた奴がと結婚を・・・・」


「お前はかぐや姫の世界に行け!!」


「「・・・・・・・・・・・・・・・・・」」








とブン太は知りました。



自分たちを置いてきた後、真田パパと柳ママは後悔の念にかられ、必死に2人を探し回ったそうです。



そして、なぜか仁王も幸村も赤也も真田家に住むようになり、



柳ママとしては、お母さんと呼んでくれるメンツが増え、収入源が増えて大喜びですが



真田パパはさらに居場所をなくしました。



そして、の結婚話が出るたびブン太は思うのです。



















「・・・!」


「ん?何、ブン太。」

















固く手を繋いだこの妹は絶対守りきろうと。
















「俺と結婚しようぜぃ!」



「「「「「近親相姦禁止」」」」」



「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」














ブン太は、が生まれてきたときからが大好きでした。























































































大切で、一生守ってやろうと決めていたのです。





























































終われ。