同じクラスだった。




隣の席だった。




好きなものが似ていた。



















『左手の薬指』
















「仁王先輩ー!」


「・・・っておい、こら。」


「何?赤也」


「お前は誰を見に来てんだよ」


「仁王先輩」


「俺を見に来いよ!!」


「あ。うん、嘘だよ嘘。ちゃんと赤也を見に来たよ」


「・・・嘘だ」


「赤也!疑うよりは信じてみようよ!」






朝の部活



が練習を見に来てるのに気付いたから



がいるフェンスの近くまで来たのに



さっきこいつ仁王先輩って叫んだんですけど。





「・・・・・」


「赤也ー?怒らないでよ。赤也が聞きたいって言ってたCD今日持ってきたよ!」


「・・・・・」


「・・・借りないの?」


「いや、借りるけど」





が俺に笑う。



フェンス越しに。



俺の顔を見て。






「赤也、今日英語当たってるよ。知ってた?」


「うっそ!マジ?」


「マジ」


「やべぇ、助けろ


「助けろ?」


「・・・助けてください」





同じクラスだった。



隣の席だった。



好きなものが似ていた。




























付き合ってた。












































































































「赤也。ここ違う。beだよ」


「びー?!」


「落ち着いて」





英語の授業前



俺の隣の席に座るに俺が当たっているところを教わる



俺はそれをひたすらノートに書き込んでいった。






「あ。そうだ赤也。はいCD」





が俺の机の上にCDを出す。



今朝が持ってきたと言っていたもの。






「そういえばテレビで新曲歌ってたの聞いた?」


「赤也も見てた?聞いたよ!新曲もいいよね」


「そうそう!サビのところがさ」






二人の好きなものが似ていることに気付いたのはずっと前。



俺と



好きなバンド



よく聞く曲。見るテレビ。



席が隣だったから毎日そんな話で盛り上がる。



クラスが一緒で席が隣で好きなものが似てて



と話していると時間がすぎるのが早い。



いつの間にか俺はが好きだった。



クラス替えとか席替えとか



好きなものが似ててもいつか話さなくなって



そんな風になってしまう前に



つながりが欲しかった。












資格が、欲しかった。











「・・・なぁ、


「んー?」


「付き合わねぇ?」


「いいよー」











今思い出すと





(・・・・・ノリだった気も)





付き合う前も付き合うことになってからも



さほど変わらない俺達。






「・・・・」


「赤也?どうかした?」


「・・・いや、別に」






楽しい。



確かにずっと前からそうだ。



話が合うし、いいんだけど。



いや、いいんだけどよくない。



よくないわけじゃないけどよくない。






「・・・・なぁ、。今日うち来たりしねぇ?」


「今日?何で?」


「・・・なんでって」


「?」






・・・首をかしげるな



普通にかわいいとか思うから。



前となんら変わらない俺達。



でも俺はお前のこと好きだし。





(なんか、こう・・・)





付き合ってるって感じが欲しい。




























































































































































「え?それもらったの?」


「うん!付き合って一か月記念だって!!」





昼休み



どうも別のクラスの女子達が騒がしい。



ちらっとその教室を見ると1人の女子の左手に複数の女子が群がっていた。





「いいなぁ!左手の薬指に指輪!」


「(指輪?)」


「赤也?眉間にしわが寄ってるよ?」


「・・・ほっとけ。」





一緒に昼を終えたが俺の隣で俺の顔を覗き込む。



・・・・だから



普通にかわいいとか思うんだって言って・・・!





(・・・言ってないか)





「あっ。赤也。今日は先に帰るね。」


「・・・・なんで」


「おうちで用事です。」


「・・・・・・・・・・・・・・」





・ ・・・本当にノリで付き合ってたら?




(へこむな)




そう言えば俺たちももうじき



付き合って一ヶ月だった気がする。




























































































































放課後の部活前。



2人きりになった教室。





。ありがとな」


「あれ?もう聞いたの?」





俺はに借りたCDを翌日返した。





「聞いた。MDとったし。3番が一番好き。」


「やっぱり?」





いきなりのの笑顔と明るい声に



俺は少しだけ驚く。





「あたしも3番が一番好きなんだ。」


「・・・・・」


「赤也も一緒だと思った!」





突然、そんな風に笑わないで欲しい。















(普通にかわいいと思うから)












「・・・なあ、


「ん?」


「俺たちって付き合って一ヶ月になるよな」


「・・・いきなりどうしたの?」





側にいたいと思った。





「手、出して。」


「手?」


「そう、左手。」





同じクラスだった。



隣の席だった。



好きなものが似ていた。



好きに、なった。




































「赤也っ・・・」





































がゆっくりと差し出した左手を手にとって



そのまま俺は



の左手の薬指に





















































































































































































キスをした。


























































































































































「金なかったし、時間もなかったし」


「え?」


「本当は指輪でもあげられればよかったんだけどよ」





の左手をとったまま



の顔を見ると



真っ赤だった。






「・・・


「なっ何?」


「俺お前のこと好きだから」


「あ・・・かや・・・」






同じクラスじゃなくても



隣の席じゃなくても



好きなものが違っても



側にいたいと思った。













その資格が欲しかった。












にとってはノリで付き合うことになったかもしれないけど・・・」


「え?ノリじゃないよ!!」


「・・・・」


「あたしだって・・・好きだから・・・赤也が好きだから・・・」









は赤くなってうつむいて



そのままだんだん小さくなっていくように見えた。



そんなを見てたら



俺まで恥ずかしくなってくる。






「・・・よかった」


「え?」


と両思いでよかった」






資格が欲しかったんだ。



ずっとずっと。



以前と変わらない関係でも



良かったんだけどよくない



よくないわけじゃないんだけどよくない。



好きだから。







「好きだからな、


「・・・あたしも」





資格が欲しかったんだ。



お前に好きだと言える資格













「あたしも好きだよ、赤也」











笑うの側にいる資格



付き合って一か月。



初めてのキスは

































































































お前の、左手の薬指。









































End.