お昼を食べ終わって
次の授業
教室は最適温度の中
私は眠気と格闘中。
『羊を数えて』
(眠い眠い眠い眠い眠い!!!!!!)
窓際の席のあたしには日差しが気持ちいい午後の授業
ちなみに現代文。
この環境で眠くなったことない人、いますか?
その人はあたしの尊敬対象です。
もちろん彼は問題外。
「芥川ー!起きろー。」
先生の起こす気の感じられない喝。
ふわふわの金髪の隣の席の彼は
完全に机にうつ伏せになって寝ている。
(いいな。気持ち良さそう)
ここまで堂々と気持ち良さそうに、毎回授業で寝られたら
起こす気が失せるのも仕方がない。
あたしの次第に飛びそうになる意識。
今のあたしは首が座っていない。
こくこくと何度も不自然にうなづいている。
「羊を数えればいいんだよ」
(あっそっか、羊、羊ね)
羊が一匹、羊が二匹…
「そしたらぐっすり。」
(そうそうぐっすり…)
って寝ちゃダメなのよ!!
戻ってきた現実で
こそこそ話すあたしを眠りに誘った人物を探した。
「ジッジローくん?」
「、眠いんでしょ?」
机にうつ伏せになったままの彼は顔をあたしの方に向けて
こっちを見ていた。
「起きてたの?」
「羊を数えればいいんだよ。」
「ジローくんあたし、寝たくないんだよ。」
「でも眠いんでしょ?」
「…眠いけど。」
後ろから二列目の席のあたし達
もちろんこそこそと話してはいるけど
授業中だから気付いている人もいたはず
「の寝顔、絶対かわいいよ」
「!!」
「だから寝ちゃえばいいCー。」
ジローくん、学生の本分わかっていますか。
勉強ですよ。
自らの意思で授業中に寝るわけにはいかない!!
「羊が一匹、羊が二匹、羊が三匹…」
「・・・ジローくん・・・。」
あろうことか
隣の席で羊を数え始めたジローくん。
意識が朦朧としているあたしの頭の中を
羊が次々柵を飛び越え駆けて行く。
「…くかー。」
「(自分が寝ちゃったよ、ジローくん)」
待って!
また本当は起きてました、なんてこと
あるかもしれない。
「ジッジローくん?」
あたしの方に顔を向けて机にうつ伏せたままなのは変わらない
でも今度は目を閉じていたジロー君。
「・・・・・・・」
返事のない彼にあたしは再び眠気との格闘に入った。
(眠い眠い眠い眠い眠い…)
手をつねってみたりもした
けれどそれでさえも
私を眠気から解き放てない
隣で聞こえる気持ち良さそうな寝息。
(本当に気持ち良さそうに寝るなあ)
ジロー君を見ればさっきとなんら変わらない。
気持ち良さそうに眠る彼。
(…いいなあ)
羊か…
そして再び臨戦態勢に戻った時だった。
「ん・・・・・・・・・・・・」
「!!」
クラス中の視線がジロー君に向けられた。
あたしも咄嗟にジロー君を見た
相変わらず寝たままの彼。
(寝言?)
あたしの名前を呼んだ、ジロー君
クラス中に聞こえた寝言だった。
みんなが少しざわついてまた静かになる
気持ち良さそうに眠り続ける隣の席の彼。
ジロー君、どうしてあたしの名前を呼んだの?
どんな夢を見ていたの?
気持ちのいい日差し。
隣の席からは気持ちの良さそうな寝息。
あたしの頭の中では
羊が今か今かと柵を超えるチャンスを狙っている。
…数えちゃおうか、羊。
ぐっすり眠れるって。
あたしも、あなたの夢が見たいな。
「おーい!…折角お前が起きているんだ。起こせ芥川。」
「しー。先生起こしちゃダメだCー。寝顔、かわいいんだから」
起きれば授業は終わっていて、
顔をあげれば
あたしの顔をずっと見ていたらしい、
あたしの顔を覗きこむジロー君と目が合った。
「やっぱり寝顔かわいかったCー!」
「…ジローくん寝たフリだったの?」
「起きててもはかわいいけど。」
「・・・・・・・・・・・・(ごまかさないで、恥ずかしいのはあたしでしょ?)」
学生の本分はやっぱり勉強なんだから。
・・・けどもし
眠くてどうしようもなくて、
羊を数えたら、
あなたの夢で目覚めたい。
end.