「友達に戻ろうよ。」
あたしがブン太に言った。
『2人ぼっち』
「「・・・・あ」」
廊下でブン太に会うと最近2人で同時にそう言うようになった。
「・・・・次って化学だったよな?」
「うん」
「・・・そっか。ありがとな、。じゃあ。」
・・・・・・あ。
って何?同じクラスだよ。毎日顔を合わせてる。
友達でしょ?
・・・・なんでこんなに気まずいの。
理由は、
わかってはいるけど。
「なぁなぁ。今度ケーキバイキング行こうぜ!」
「いいけど・・・・。ってかブン太、太るよ?」
「部活やってるから平気だっての!」
ブン太とあたしはクラスメイト、友達。
でもあたしにとっては他の男子なんかよりずっと仲がよくて
一緒に遊びに行ったりとか、テニスの応援に行ったりとか。
「。」
「ん?言っておくけどもう食べられないからね!」
「食いに行こうなんて言ってねぇだろぃ?そうじゃなくて」
「何よ?」
「・・・・って好きな奴とかいねぇの?」
一緒に食べに行った帰り。
ブン太の赤い髪に、声に、言葉に。
あたしの胸は一杯だった。
「・・・・・・いるよ(目の前に)」
ブン太とあたしはクラスメイト、友達。
ブン太はあたしの好きな人。
「それって俺だったりしねぇ?」
ブン太の赤い髪に、声に、言葉に。
ときめいて。
からかわれる?(それは嫌)
どう答えていいかわからなくてあたしはいつもの友達のノリでごまかす。
「バーカ。何言ってんの?」
「・・・・・」
「ブン太?」
「・・・・・俺、お前といると楽しい。」
「(あたしもだよ)」
「の好きな奴が俺だったら、付き合ってって言おうと思ったんだけど。」
「(!!)」
あたしの好きな人は目の前にいた。
「俺じゃねぇの?」
「・・・・・・・・・バーカ。」
「ブン太だよ。」
あたしとブン太はクラスメイト、友達。
次の授業は化学だったっけ?
「行かなきゃ・・・・」
付き合い始めたあたしとブン太。
だけど、どうしていいかわからなかった。
昨日まで友達だったあたし達。
手を繋ぐことにとまどって。
言葉を交わすことにぎくしゃくして。
(戻りたかっただけなのに)
「っ・・・・・」
前みたいに友達に戻って一緒にでかけて、笑って。
付き合っているよりそっちのほうがずっといい気がした。
だから言った。
‘友達に戻ろうよ’
ブン太、うなずいてくれたじゃない。
ねぇ、戻れないの?
廊下に響くチャイムの音。
しゃがんで、うずくまって、1mmも動きたくない。
1分も1秒も進まないで。
これ以上あたしとブン太を遠ざけないで
「ブン太・・・」
戻れないの?
あたしね、一緒に笑っていたかっただけなの。
どんな形でもブン太の側にいたかった。
友達じゃダメなの?
「?」
背中側から聞こえてきた声は振り返らなくても誰だか分かった。
赤い髪が見えなくても
誰だか知っていた。
「・・・・・・」
「・・・・何しゃがんでんだよ」
「・・・・・」
あたしと話すの気まずいだけでしょ?
「」
ブン太はしゃがむあたしのすぐ側に来た。
あたしの隣にしゃがむ気配。
うずくまるあたしは顔も上げずにブン太に聞く。
「ブン太はどうしてここにいるの?」
「・・・・・」
こもって聞こえるあたしの声。
あたしと話すの、気まずいだけ?
「・・・・が化学にいなかったからだろぃ?」
ゆっくりと顔をあげて、あたしと並んでしゃがむブン太の顔を見た。
ブン太の赤い髪に、声に、言葉に。
あたしは泣くのを我慢することで必死だった。
「お前真面目だし、サボることなんてねぇしさ・・・。」
「どうして・・・。」
ブン太。
それじゃブン太がここに要る理由は成り立たないよ。
「なんでここにいるの?」
「・・・・を探しに来たんだよ。」
「なんで?」
「・・・・・」
ねぇ、友達じゃダメなの?
「・・・ブン太、あたしと会うと気まずそうにしてるくせに・・・。」
「しょうがねぇだろぃ」
「・・・・・友達に戻ろうって言ったじゃない。」
「はな。」
うなずいたくせに。
「友達には戻れないの?」
「だっては俺のこと好きだろぃ?」
「・・・・・(好き)」
「友達じゃダメなんだよ。俺もが好きだから。」
「友達じゃダメなの?」
あたしは、どんな形でもブン太の側にいたいだけ。
一緒に笑っていたかっただけ。
「俺はが好きなんだよ。と他の誰かが話してると嫉妬もするし、いつも一緒にいたい。でも、それって付き合うからできる特権じゃね?」
「・・・・・」
「が俺のものになって、俺がのものにならないといつも一緒にはいられねぇよ。」
「でも・・・・もう嫌だよ。ブン太とギクシャクするの。」
並んでしゃがんで
ブン太の赤い髪に、声に、言葉に
ときめいて。
「・・・・うん。俺も嫌だ。」
「・・・・・・・(一緒にいたいけど)」
「だから、ちゃんと話そうぜ。俺たちがどうなりたいか。どうしていったらいいか。俺もは今まで友達だったから、戸惑ったけど。」
一緒にいたい。
2人で笑っていようよ。
「・・・・・の好きな奴が俺だったら付き合ってって言おうと思ったんだけど。」
「(!!)」
「俺じゃねぇの?」
ブン太の赤い髪に、声に、言葉に。
「・・・・・バーカ。」
ブン太はあたしの顔を覗き込む。
笑いかけてくれたブン太の隣で
一緒に笑っていられる特権をください。
「ブン太だよ。」
あたしの好きな人は。
end.