7/12 9:21
To:
sub:助けて。
風邪引いた。
―end―
送信。
『風邪引きロンリー』
もう夜。
(19:00か…)
目覚めれば
ひろがるのは
殺風景な自分の部屋だけ。
「…腹減った。」
朝起きれば熱があって、
学校へ行こうにも
歩くことさえ辛かった。
頭痛い。
頭悪い。
“じゃあ、忍足が風邪ひいたら呼んで。今度はあたしがご飯作りに行くよ。”
女の子みたいに、
気付いて欲しくてメールをして
(休んでることさえ気付かれてへんかもな…)
以前彼女が風邪をひいて
見舞いに行った時に
彼女に夕飯を作ったことがあった。
その時の小さすぎる約束に期待した。
「…アホやな、自分」
(…会いたいわ)
頭痛い。
頭悪い。
風邪を引くと人は心細くなるとか
聞いたことがあるけど
「あかん…泣けてきた」
(こういうのなんて言うんやろ?…情緒不安定?)
彼女に
気付いて欲しくてメールをして。
「っ…」
自分はいつからこんなに
弱い人間だったろうか。
いつから、こんなに。
(会いたい、)
ふるえた、携帯。
待っていた電話だった。
(会いたい。)
「…?」
『もしもし、忍足?ごめんね。今メール気付いた』
いつから、こんなに。
『具合どう?』
「…あかん」
『熱あるの?』
「…」
『忍足?』
「…来て。」
『え?』
「会いに来てぇな、」
会いたい。
『…ご飯食べた?』
「まだやけど…」
『よかった!実は今ね、忍足のマンションの前。ちゃんとご飯の材料買ってきたんだ』
その瞬間に俺は部屋から飛び出していた。
に会いたくて。
エレベーターにかけ乗った。
マンションの一階玄関。
が、いた。
「…おーい。病人」
息切れする俺。
駆け寄ればはあきれていた。
「来るの遅いわ」
「ごめん。ご飯作りに来た。」
例えば会いたいと思うのが
必然的なものだったとして
そしたら。
「…そんな口実がいるなら、俺は毎日風邪ひかなあかんやん」
「え…」
「会いたかってん」
いつから、こんなに。
が好きだった?
「好きや」
「忍足!?」
手放した意識。
…だって
会えたから、安心した。
「…起きた?」
さっき目覚めた時と違うのは
目に映ったのが殺風景な自分の部屋だけじゃなかったこと。
俺が寝ているベッドの横には座っていて。
いわく
どうやら俺は
気を失いながらも
に支えられながら自分の足で部屋まで歩いてきたらしい。
「…堪忍。せっかく来てくれたのに迷惑かけたわ」
「忍足」
「?」
「何食べたい?」
「…卵がゆ」
「まかせろ」
笑った。
ここにいる。
「風邪なんか引かないでよ」
俺の寝ているベッドとキッチンは反対側にあって
は俺に背中を向けて調理しているから
彼女の表情はわからなかった。
「風邪なんか引かなくても会いに来るもん。毎日」
「…飯作ってくれるん?」
「毎日?」
「百歩譲って交代制やな」
「…考えとく」
いつから、こんなに。
お前のこと好きになってたんやろね、。
表情なんてわからないけれど
「…今日忍足いなかったから、ビックリしたんだ。」
「気付いてたん?」
「でもね、悔しいじゃんか。あたしの片思いなんだもん。心配してるって思われるの、悔しかった」
「…片思いちゃうわ。」
後ろ姿でもの顔が耳まで赤いのがわかる。
会いたかった。
ただそれだけ。
「両思いやもん、大好きや。」
それが
例えば、必然的なものだったとして
そしたら彼女に会いたいと思うのは
仕方のないこと。
end.