俺は
お前が俺のこと好きなんだって
知ってる
『気付いてほしいだけなんだ』
「赤也」
「・・・じゃん」
自信でもなく過信でもなく確信
「授業なんだったの?」
「古典。眠かったー」
「眠かったんじゃなくて寝てたんでしょ。」
「・・・ほっとけ(ん?)」
階段の踊り場で話しかけてきたは
後ろ手に明らかに何かを隠した様子で
目線が定まっていない
「・・・は?」
「えっ何が?」
「授業何だったんだよ」
「あっあのねっ家庭科で調理実習で!あのっそれで・・・」
目線が定まらないがうつむく
その後ろ手に明らかに隠したままのもの
かすかないい匂い
「それで?」
「それで・・・・・・・はい!」
俺の目の前にが突き出した白い小さな箱
「あのね。ホントはラッピングとかきちんとしようと思ってたんだけど・・・あたし調理実習が今日だって忘れてて」
「ドジ」
「・・・ほっといて!」
カタカタと震える白い箱に添えられたの手
の目線は・・・
完璧に白い箱
「実習、何作った?」
「マドレーヌ」
「・・・・それで?」
「え?」
「くれんの?マドレーヌ」
俺は口端をあげて笑い
がやっと俺を見る
おせぇよ。
折角俺はを見てたのに
「・・・・赤也。もらって。」
「いい匂いじゃん」
「・・・味に自信はないけど」
「が作ったんだから心配だよな、味」
「赤也!!」
の手から白い箱をとる
「・・・ありがとな」
「(!!)うん!!」
の表情は俺の一言で変わり
沈んだ顔も
思い切り笑わせてやることも俺にはできた
俺は
が俺のこと好きなんだって
知ってる
自信でもなく過信でもなく確信
「そういや、吹奏楽部。県大会でるんだろ?」
「うん」
「いつ?」
「・・・赤也、見に来てくれるの?」
吹奏楽部でフルートを吹いている。
「・・・部活なかったらなー」
俺の一言はを笑わせる
落ち込ませる
「テニス部、忙しいもんね。無理だよね」
「・・・・」
俺との関係を明確にするなら友達
でも
は俺のことが好き
「・・・ねぇ、テニス部は練習休みもあるんだよね?遅くまで」
「あるけど」
「・・・見に行ってもいい?」
がくれたマドレーヌが入った箱から
いい匂いがした。
も俺も目を合わせ
の顔は赤い
「吹奏楽部は?休みの日も練習あるだろ?」
「あたし達が終わってからでもテニス部は練習してるでしょ?」
が
勇気ってやつを出して言ってることが分かって。
「お前、見に来るの?」
「・・・だっだめ?」
俺は
が俺のことを好きなんだって
知ってる
「あっ!」
「あっ・・・・何?」
階段を踊り場に向かって歩いてくる女子
の名前を呼んだそいつをは俺から目を離して見た
「(邪魔すんじゃねぇよ)」
俺がと話してんだよ
は俺に背を向けた状態
の背後からその女子を思いっきり睨んだ
「、家庭科室に忘れもの・・・ひっ」
「どっどうしたの?」
俺の視線に気付いたそいつ。
邪魔すんな。
睨む、睨む。
「、家庭科室に筆箱忘れてったけど後でいいや。じゃっ!」
「え?」
早口で言いたいことを済ませ
すごい勢いで去って行った女子。
がもう一度俺を見た頃
俺の目線もに戻る
がくれたマドレーヌからはいい匂い。
「・・・・・フルート」
「え?」
「俺は見に行ってやれる時ないかもしれないから、いつか、聞かせろよ。」
「・・・・・うん!!」
俺とは似てる。
分からない?
お前の一言で俺も表情が変わってる。
赤くなったりとか。
俺じゃないほうを見てたら嫌だと思ったりとか。
お前の勇気がどうしようもなくうれしかったりとか。
「赤也の練習、見に行くね!!」
「テニス部じゃなくて、俺?」
「あっ。」
がくれるたった一言でその日の気分は上昇する。
でも、はそんな俺に気付かない。
だからまだ言ってやらない。
は赤くなったまま弁解もしないから。
「。」
お前の名前を呼んで。
「練習見に来るなら今度は自信作もってこいよ。」
「(!!)うっうん!!」
に白い箱を見せるようにして言った。
俺の一言がを笑わせる。
の一言が俺の気分を上昇させる。
勇気をふるうよりも俺を見てたほうが、きっと分かるぜ?
俺とは似てる。
は
俺がが好きだってことを
知らない。
早く、気付けよ。
そしたら、俺から言うから。
がくれたマドレーヌの感想と、一緒に。
end.