あなた見てるのあたしじゃない。
『期間限定』
「それでね、南がね・・・」
明るい声
はずむ会話
夏のある日
「そうなの?」
「一回も話してみなよ」
「南くんはなぁ・・・まだ亜久津くんのほうがまだ話せるかも」
「え?それすごいことだよ!」
「そうかなぁ?」
「そうだよ!」
千石と付き合い始めて今日で一週間
笑い合う毎日
楽しいよ、あなたの隣
「今度さが行きたいって言ってたお店行こうよ!」
「でも、千石は部活があるでしょ?」
「うーん・・・そうだけど」
話す帰り道
隣合う2人。
でも
千石、もう明日からの約束はやめよ?
「千石!」
「ん?」
「手つなご」
明るい声
はずむ会話
でもね、あなたが見てるのあたしじゃないこと
あたし知ってるよ
「千石。」
「ん?」
「あたしが行きたいお店はさ、いつかでいいよ」
「いつか?」
あなたと付き合い始めて一週間の今日
あたしは。
「・・・南くんに話しかけてみたいな」
「いい奴だよ、南」
初めは
付き合う中であたしのこと好きになってくれればいいなって
でも
「亜久津くんは?」
「俺は平気だけど、女の子達は怖がってない?」
あたしから繋いだ手
あなたが握り返しても暑い中では
汗ばむだけ。
「みんなで話そうよ。俺とと南と亜久津!」
「・・・・・・・」
「?」
もう明日からの約束はやめようよ。
一週間。
それがあなたの隣にいた時間
24時間×7日=168時間
四六時中一緒にいられたわけではないけれど
あたしは。
「ねぇ、千石」
一週間じゃあなたの名前、呼び捨てになるようにはなれなかった。
「千石、好きな人いるでしょ?」
「え・・・」
「あたしじゃない人」
あなたと付き合って一週間
付き合う中であたしのこと好きになってくれればいいな、なんて
でも、
あたしのこと見てくれるようにはならなかったね。
「・・・」
「いいよ、無理しなくて」
歩みは、止めない
「・・・・」
「千石」
知っていたの
あなた見てるのあたしじゃないのに
あたしいるのあなたの隣
悲しすぎたの。
この一週間。
「・・・俺は・・・・・・・・・・」
「・・・・・」
「・・・ごめん」
「謝らないで」
あなたの望む恋はあたしがあなたに望む恋のように
苦しい恋かもしれないけど
あたしから繋いだ手
あなたが握り返しても暑い中じゃ
汗ばむだけでしょう
「千石に好きな人がいるのは謝ることじゃないよ」
「・・・・」
好きな人がいるのにあたしと付き合ってくれて
それをあなたの優しさだとあたしは信じて疑わない
「」
「手・・・」
千石が
あたしの手を離した。
「・・・いつか好きになってくれればいいなって思ってたけど」
「・・・」
一週間
待ってみた。
あなた見てるのあたしじゃないのに
あたしいるのあなたの隣
悲しすぎるだけでした。
「ねぇ、千石」
あなたの隣にいたこの一週間
幸せではなかったなんて
そんな嘘はつきません。
一週間目の今日
あたしは言う。
期間限定。
168時間だけのあたしの恋人
四六時中一緒にいられたわけではないけれど
無理はしないで
悲しすぎるから
「もう、いいよ」
あたしから繋いだ手は
あなたが握り返してくれても
暑い中じゃ汗ばむだけだから
だから、
離そうか。
もうそんな優しさ、ほしくはないよ。
あたしはあなたが好きだったので
最後の一言はあたしから言わせてください。
「ばいばい、千石」
あたし一週間じゃあなたの名前、呼び捨てになるようにはなれなかった。
期間限定。
168時間だけのあたしの恋人
あたしの隣じゃなくてもいいんです。
あなただけが幸せになれば。
end.