素直だなんてお世辞でも当てはまらない。
素直だなんて似合わない。
「お前さ・・・・」
「・・・・うるさい、赤也」
本当に、
・・・・・・かわいくない。
『君伝聞録』
「。俺、次の大会シングルス決まったんだぜ」
「・・・ふーん」
「・・・・・」
ああ、ほらまた
会話終了。
「・・・・それだけ?」
「それだけって?」
「ふーんだけ?彼氏が部活で出世したんだって!なんか言うことあるだろ?!」
「・・・・・・」
頼むよ。
があんまりしゃべるの得意じゃないのは知ってるけどさ・・・・。
「。」
「何?」
「会話しろよ」
「・・・どうでもいい。」
どうでもいい?!
なにがどうでもいいんだよ、!!
素直だなんてお世辞でも当てはまらない。
素直だなんて似合わない。
本当に・・・・
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・かわいくないな、お前。」
「うるさい、ほっといて」
俺楽しみにしてたのに。
シングルス決まったって言ったら
素直じゃないでも、しゃべるのが得意じゃないでも
一緒に喜んで、おめでとうってさ・・・・
期待はずれもいいところじゃん!
本当に、
(・・・・かわいくない)
「・・・・・・・・」
「・・・・、明日晴れだって」
「ふーん」
「雨最近降らないよな」
「そうだね」
「・・・・・・」
ああ、ほらまた
会話終了。
「・・・・会話しようぜ?」
「・・・」
素直だなんてお世辞でも当てはまらない。
素直だなんて似合わない。
があんまりしゃべるの得意じゃないのは知ってるけどさ・・・・。
でも、せめて喜んでよ。
はいつも俺の練習見てくれてるだろ?
別に他の女子みたいに騒ぐわけでもなくただ静かに。
それでも俺はが見てくれてるのがうれしいから
毎日無駄に張り切って、
から回って、先輩達に怒られて。
(おめでとうってさ)
言ってほしかったんですよ、さん。
俺がんばってるの、がいつも一番近くで見ててくれてたんじゃねえの?
「・・・・赤也。」
「あ?」
「赤也なんだから、シングルスなんて当たり前でしょう?・・・・・騒ぐこと?」
本当に、
かわいくなんて、ない。
「あんなにいつもがんばってたんだから」
本当に、
かわいくない。
(・・・・嘘。)
彼女なりのおめでとうだって
俺にはすぐに分かるけど。
そうやっていつも
素直じゃないお前が予想もしない言葉をくれるから
そうやって伝えようとしてくれるから。
だから、厄介だ。
「・・・・・かわいくないなんて嘘だから。」
「・・・・」
「はかわいいです。」
「・・・・・」
言葉なんか苦手なくせに。
おめでとうもくれないくせに。
そうやって赤くなって
なりに伝えようとしてくれるから。
「照れてる?」
「うるさい、赤也。」
しゃべるのなんか得意じゃないくせに。
お世辞でも素直なんかじゃないくせに。
素直なんか合わないくせに。
でも
時々予想もしない言葉で伝えようとしてくれるから。
だから、厄介。
だから、
「好きなんだけど。」
「なっ・・・・」
「あれ、俺口にだしてた?」
本当に、
かわいい。
「照れてる?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・うるさい、赤也。」
「あっ、好きってのことな。」
俺の望む言葉はくれないくせに
すぐ照れる。
時々予想もしない言葉をくれる。
素直じゃないお前が、好きな俺。
厄介だ。
ろくに会話もしないくせに
への好きが増えていく。
「・・・・、明日晴れだって」
「ふーん」
「雨最近降らないよな」
「そうだね」
「・・・・・・」
ああ、ほらまた
会話終了。
おめでとうが欲しかったのに、
落ち込みがどこかへ消えた俺。
だってさ
‘あんなにいつもがんばってたんだから’
あれって
が俺のことちゃんと見てるからこそ言えた言葉だと思わねえ?
素直なんかじゃないくせに。
いつも見てるよって
が言ってくれてるみたいに思えた
素直じゃないお前が、好きな
どうしようもない、俺。
End.