手をつないだら振りほどいて
抱き締めたら突き放して
さよならの代わりに口付けて。
『君隣』
「、帰るとよ」
「うん」
放課後はあなたと帰る。
手をつないで帰る。
「、今度練習試合があるけど見に来ん?」
「いつ?」
「日曜日。」
あたしは、顔は普通くらい。
かわいいって言われるよりはかっこいいって言われる。
頭のよさも普通。学校の成績は中の上くらい。
平平凡凡なあたし。
唯一普通じゃないのは平平凡凡なんて言ってられない人が彼氏なこと
「・・・行けるかわかんない」
「来れたらでよかよ。」
放課後はあなたと帰る
手をつないで帰る
みんなが視線を送るのは
2人−あたし=あなた
普通なあたしは
普通の背景ときっと一緒になっちゃうんだ
「」
「ん?」
「前見んしゃい。」
雅治があたしのあごを
繋いでいる手とは違うほうの手でくいっと持ち上げた。
「うつむいとったらかわいい顔が台無しじゃ」
歩く帰り道
あたし下見て歩いてた?
でもね、言い訳になるけどね
自信なんかなくすよ
あたしかわいくなんてないもん
普通のあたし
みんなが視線を送るあなた
あたしとあなたは不釣り合い
「雅治」
「ん?」
「・・・なんでもない」
放課後はあなたと帰る
手をつないで帰る
けれど不釣り合いのあたし
だからいつか
手をつないだら振りほどいて
抱き締めたら突き放されて
それでも仕方ないと思ってる。
「・・・、前向きんしゃい」
「・・・無理だよ」
「かわいい顔が台無しじゃよ?」
あなたといると自信なんか無くなって不安になる
あなたの隣にいるのあたしでいいの?
「あたし、普通だもん」
「俺だって普通じゃなか?」
「かわいくなんかないもん」
「かわいいとよ。ただたまにうつむくからもったいない。」
「雅治とは違う世界にいるんだよ」
「違わん」
放課後はあなたと帰る
手をつないで帰る。
不釣り合いな2人は歩く。
1人はうつむいて。
1人はうつむく隣を見つめて。
「俺は今を見てる。は今俺の隣にいる。同じ世界にいなきゃこんなことできんじゃろ?」
不釣り合いな2人。
「・・・雅治はかっこいいよね」
「はかわいいとよ。・・・俺達お似合いじゃな。」
「(!!)」
とっさにあげた顔
雅治は笑ってた。
優しい顔して
笑ってた。
違うよ。
あたしかわいくなんかないもん
普通だもん
だから仕方ないと思ってた。
「手握ったら離したくないと思うとよ。」
(手をつないだら振りほどいて)
「抱き締めたら我慢なんかできなくなるじゃろ?」
(抱き締めたら突き放されて)
「俺はが大好きじゃ。は俺のこと好きじゃなか?」
「・・・好き・・です。」
「だから俺達はお似合い。」
(でも、もしその時が来たら)
さよならの代わりに口付けて。
「・・・試合、日曜日?」
「うん」
「見に行く。」
「待っとる。」
放課後はあなたと帰る。
手をつないで帰る。
「雅治。」
「ん?」
「好き。」
「うん。」
「好きです。」
「俺もじゃ」
「大好きです。」
「大好きじゃ。」
だから、ね
手をつないだら振りほどかないで
抱き締めたら腕の中閉じ込めていて
さよならなんか言わずに口付けて。
あなたと同じ世界にいること
わかっていたいから
あたしを見ていて
隣にいさせて。
あなたとあたしは不釣り合い
でも
あなたとあたしは、お似合いの2人。
end.