気付けばいつも側にいた。




いつも。




いつも。




俺はお前に救われていたんだ。
















魅かれて、やまなかった。



























『君を守る方法 1 』



























「景吾。また彼女振ったんだって?」


「別にに関係ねえだろう?」





生徒会室にいるのは、生徒会長の俺と副会長兼、俺の幼馴染である





「そうかも知れないけどさ・・・」


「そっちの書類は?」


「・・・目通してあるよ」





間近に迫った文化祭の準備。



そのせいで最近は、授業以外はと生徒会室にこもりっぱなしだった。





「でも、この間付き合い始めたばっかりの子でしょ?もっと大切にしてあげなよ。」


「はっ、今まで一人も付き合ったことない奴に言われても説得力にかけんだよ」


「・・ほっといてよ。幼馴染からの助言なんだからね!」
















幼馴染。



気付けばいつもは側にいた。



隣同士の家。



同じ学校。



いつも。



いつも。











「・・・景吾。」


「あ?」


「この経理のプリントまた一人で作ったの?」





の手にある一枚のプリント。





「ああ」


「あたしに言ってくれればこれくらいやるよ。景吾は他にもいっぱい仕事してるんだから。」


「いいんだよ。それくらいすぐ終わる。」


「よくない!あたし頼りないかもしれないけど頼ってよ。景吾が無理するの嫌だ。」





昔からそうだった。



は俺が無理をしていると言って俺が請け負った責任や仕事を自分も背負うとする。





だって仕事たくさんしてんだろが。それ以上どうするってんだよ」


「・・・がんばるんです」


「(くくっ)気持ちだけもらっといてやるよ」





気付けばいつも側にいた。



いつも。



いつも。



俺はお前に救われていたんだ。





















それは日常。一緒にいるのが当たり前。



それは信頼。は俺のことを知っている。わかっている。



それは慕情。魅かれて、やまなかった。



































「おっ!やってんなぁ。ご苦労さん。」


「忍足だ。どうしたの?」





生徒会室に今までなかった声が届いた。





ドアから顔をのぞかせていたのは忍足だった。





「跡部に監督から伝言でなぁ。職員室に来てくれやて。」


「わかった。。」


「うん。あとの書類は目通しておくね」


「なんやったら俺も手伝うで?」


「消えろ。伊達眼鏡。」


「跡部、俺泣くわ」





が笑った。





「いいじゃない景吾。忍足、手伝ってよ」


「ほらみい、が手伝ってやて」


「・・・・」


「・・・睨むなや。お姫さんの頼みやん」





俺は忍足を睨み続け生徒会室を後にした。



















































が好きだった。



自覚したのはいつからだったのか。



それすら覚えていないほど前から



俺はが好きだった。



幼馴染なんて厄介なものだ。



いつも一緒にいられる代わりに



気持ちばかりが大きくなって。増えて。たまっていく。















あふれたらを傷つけそうなほどに。



























































「失礼しました。」





職員室で榊監督から今度の休日の部活について説明をうけた。



そのあとはすぐに生徒会室に戻るつもりだった。



心はそこにしか向いていなかった。



生徒会室には今と忍足が2人きり。



足取りは自然と速くなる。

























「あの・・・跡部君。」
























生徒会室に向かう途中、廊下を歩いていて後ろから声をかけられた。



確か同じ学年で隣のクラスの女子。








「今、時間大丈夫?話したいことがあるんだけど」


「・・・ああ。・・・いいぜ」







頬を染めてうつむくそいつの後ろを俺はついて歩いていった。



頭では生徒会室に早く向かいたいと思っていても。























































「景吾遅ーい!」


「なんやそんなに監督と話してたん?」





生徒会室ではと忍足がイスを二つ並べて書類に目を通していた。



近いと感じた2人の距離にいらだつ。





「・・・ちょっとな」


「あー!また告白でもされてたんやろ?」


「まあな」


「・・・え?」





やけに低く響いた忍足の声。



は俺の顔を見た。





「景吾、本当に?」


「ああ。付き合うことになった。」


「・・・そうなんだ。」





忍足とは逆のの隣にイスを持ってきて書類に目を通し始めた俺。










「なあ。は好きな奴とかおらんの?」








忍足のへの質問に書類どころではなくなった。



そう言えば聞いたことがない。



が誰かと付き合ったことがないのは明白だが、



に好きな奴がいるなんて聞いたことがない。
















「・・・うん。・・・・・・いるよ」


「そうなん?叶うとええな。」


「あははっ。どうかなぁ」














いたんだな。



に好きな奴。















(叶えばいい)















その想いが叶えばいい。



とそのの好きな奴がうまくいけばいい。



再び書類に目を戻した。
































俺が以外の奴と付き合うのは



への想いを忘れたいからだ。
































が好きだった。



自覚したのはいつからだったのか。



それすら覚えていないほど前から



俺はが好きだった。










幼馴染なんて厄介なものだ。



いつも一緒にいられる代わりに



気持ちばかりが大きくなって。増えて。たまっていく。



あふれたらを傷つけそうなほどに。



きっとの好きな奴がうまくいけばこの感情を忘れることはたやすいかも知れない。












「景吾、今度は彼女大切にするんだよ?」


「・・・・ああ。そうだな」











幼馴染なんて厄介なものだ。



いつも一緒にいられる代わりに



気持ちばかりが大きくなって。増えて。たまっていく。



あふれたらを傷つけそうなほどに。

















だから、忘れたい。















俺がを傷つける前に。

















俺はこの感情を忘れてしまいたかった。

























end.