欲しかった








欲しくなかった
































『君を守る方法2』

































「跡部くん、どうしたの?」


「いや・・・なんでもねぇよ、。」





自分の声に耳をふさぎたくなる





の家ってどこなんだ?」


「・・・結構学校から遠いんだよ!」














帰り道、俺の家の車の中



今日付き合うようになった名前も知らない女の名前は



俺の好きなやつと同じだった。


















「・・・跡部くん。」


「何だよ、






ずっと明るかったの声が暗くなった。






「あたし跡部くんが告白OKしてくれてうれしかったよ」


「・・・ああ、俺もお前に好きって言ってもらえてうれしかったぜ?」


「ありがとう、でも無理しなくていいよ」


「(?!)」






車の座席、隣に座ると目を合わせた







「あたしの名前・・・って呼ぶ時。ホントはあたしのこと呼んでないでしょ?」





















その名前を呼んで浮かばないはずがない





「俺は・・・」


「別れようよ」


「・・・勝手に話進めんじゃねぇよ」









忘れたいはずの想いは名前を呼べば呼ぶほど消えそうもない










「好きな人いるんでしょ?」









今隣に座るの家の前に車がとまった







「ありがとう、バイバイ」


「おいっ・・・」






ドアは開けて車から降りたは俺を見て言った。





「あたしは跡部くんの好きなじゃないもん」











取り残された俺は車の中で固まったまま動くことができなかった。







































































「言いたくないなら言わなくていいんだけど」


「・・・んだよ」






放課後の生徒会室



文化祭の準備の書類をいつも通り



副会長兼幼馴染みのと目を通す






「昨日告白された子と昨日のうちに別れたって本当なの?景吾」


「そんなのどこから聞いてくるんだよ・・・」


「泣いてるんだもん」


「あ?」











書類からに目を移せば



生徒会室から見える夕日の赤がを染めていた









「景吾が付き合った女の子は別れた次の日必ず学校のどこかで泣いてる」








昨日別れたの泣いているところを見たというのか



夕日に染まるの目が少し怒って見えた












「・・・俺はフラれたんだよ」


「(!!)」












女からフラれたのなんて初めてだった。












「泣いてるなんておかしいだろ」


「・・・なんで別れたの?」


「・・・・」









俺がお前のことが好きだからだよ








いつだってそうだ



忘れたくて以外の女といる



けれどいつだって結局最後は思い知る



俺がを想う気持ちの大きさ







「・・・俺があいつのこと好きじゃなかったからだろ」


「景吾は好きでもない子と付き合うの?」


「・・・悪いかよ」









いらだつ。



俺は忘れたい



それなのに。






「今まで景吾に告白した女の子はみんな景吾が好きだったよ?」


「だから?」


「・・・景吾はそういう子達を傷つけてる」














黙れよ



お前に俺の気持ちは分からない。














「・・・欲しいものがあるんだよ」


「欲しいもの?人を傷つけてまで欲しいものがあるの?」


「・・・ああ」










2人とも書類はもう机の上に置いてあるだけだった。



が立ち上がる



差し込む夕日がまぶしかったのか



がカーテンをしめた。







































「人を傷つけてまでして得られるものなんかに価値なんかないよ」





















黙れよ




















(だん!)





「(!!)」


「・・・ガキの頃からだ」





を壁に追い詰めて



俺の手をの顔の両隣の壁について



鉄格子のようにを閉じ込めた





「欲しくて欲しくて仕方がねぇんだよ」


「・・・景吾」





俺の中の何かが切れた。



もどかしい。



俺は忘れたい。








なのに・・・。








欲しかった



欲しくなかった



例え誰かを傷つけても








を忘れることのできる感情









欲しかった



欲しくなかった









「欲しかった・・・」


「何が?景吾でも手に入れられないものなんてあるの?」


「・・・・」









欲しかった



欲しくなかった























「きゃっ・・・!けい・・・ご」






の首元に顔をうずめた



昔から知っていた香り



昔は知ることもなかった体温



の首元に顔をうずめて



唇を押し当てて



俺の印をつけた。







「っ・・・景吾・・」


「・・・・」























「景吾・・・泣いてるの?」






















うずめた首元にきっとその滴が落ちたんだろう



いまだに顔があげられない俺は



自分がどんな顔をしているかわかっていた







「景吾?」


「・・・欲しかったのは・・・」







欲しかった



欲しくなかった



この感情はいつだってお前を抱き締めようとするから



本当に欲しかったのは



を忘れる感情や方法じゃない



俺のこの想いから






















































を守る方法


















































本当に欲しかったのは













「お前だよ」









「・・・なんで・・」


「・・・


「なんでそんなこと言うの?」


















俺の腕の鉄格子に閉じ込められたまま



顔をあげた俺が見たのはの泣き顔。






「いつも・・・いつもいろんな子と付き合って、あたしなんか見てなかったくせに!!」


にだっているだろ?好きな奴が」


「景吾だもん!」






驚いた俺はを見た



さっきまでは俺がにつけた痕に目線はいっていた

















「景吾・・・だもん」


「・・・俺はを忘れたかったんだよ」














涙のとまった俺



涙のとまらない












「守りたかったんだ。俺なんかの想いから。」










幼馴染なんて厄介なものだ。



いつも一緒にいられる代わりに



気持ちばかりが大きくなって。増えて。たまっていく。



あふれたらを傷つけそうなほどに。






を守る方法






見つけたのは、この感情を忘れること















「守りたかった?あたしのこと?」


「ああ」


「・・・守るなんて簡単じゃない」




















鉄格子がはずれたのは



が俺の首に腕を回したのを



抱き留めたから。















「ずっと側にいればいいんだよ」


「・・・・俺の気持ちはでけぇんだよ」


「あたしも負けないよ。」







側にいればいいなんて簡単そうに言うなよ



この想いはいつだってお前を抱き締めようとするから。








「・・・側にいてよ」



「・・・・」



「好きだから。」









を守る方法



俺が見つけたのは忘れること



が見つけたのは







側にいること。








「いいのかよ。」


「何が?」


「・・・を傷つけるかもしれない」


「・・・たくさん傷ついたよ。いつも景吾があたしじゃない子と歩いてるのを見るたび」


「・・・・」


「だから、そのぶん側にいてよ。傷ついても、」






















景吾がくれる傷ならいいんだよ。























欲しかった。



欲しくなかった。



抱き締め合って。



キスをして。



誓った。


















夕日の隠れた生徒会室で。























































欲しかったを守る方法を



俺はこの手にした。






























end.