さらさらと、さらさらと





俺の前で揺れる絹みたいな髪







(絹なんか見たことねぇけど)






でも





例えるなら、きっとそんな。






















『机上の想論』



















人を好きだと思うのはいつなんだ?






、数学の宿題やってきた?」


「あっうん。やってあるよ!」


「見せてもらってもいい?」


「いいよ」






クラスでの俺の前の席



繰り広げられる会話と揺れる髪。



前の席に座る女










「ねぇねぇ、。これはどうやるの?」


「ん?まずこの式をxで置いてそれから因数分解・・・」






友達は多い。



いつも誰かが一緒にいる。



笑った顔を見るのは毎日。



話したことは三度だけ。






「(そういや俺も宿題やってねえや)」






頬杖付いてぼーっと眺めていた揺れる絹のような髪





(絹なんか見たことねぇけど)





でも



例えるなら、きっとそんな。

















机にカバンから出した数学の教科書とノート。



出しただけで宿題にやる気なんか起きない。



揺れる髪



絹のような髪。



俺の前の席に座る女







友達は多い



いつも誰かが一緒にいる



笑った顔を見るのは毎日



話したことは三度だけ













人を好きだと思うのはいつだ?











揺れる髪



絹のような髪















































好きだと思った。








後ろ姿、絹の髪を持ったお前。







なぁ、こっち向けよ



その髪が好きだけど









後ろ姿は見飽きたんだよ。





















「(!)」


「あ・・・」






俺の手は前の席の髪をつんと少しだけひっぱっていた。






「わっわりぃ!ごめんな!!」


「・・・ううん。どうしたの切原くん」






髪をひっぱられてこっちを振り向いた






「あーえっと・・・」






に宿題を聞いていた女子も俺を驚いたように見ていた






「・・・俺にも宿題見せて。」






言えるか。



振り向いてほしくて好きな絹のような髪



ひっぱったなんて。






「いいよ」






笑った顔を見るのは毎日。



話したことはこれで4度目。






(俺、だせ・・・)






いつも見ていた



揺れる髪



絹のような髪



俺の前の席のその後ろ姿。






「切原くん?」


「・・・」






だせぇよ、俺。



このままで終われるか。










宿題について聞きにきた女子が宿題を写し終えたのか



ノートをそのまま俺に貸してくれた



俺の机に広がるのは2冊のノート。



俺との。



握ったシャーペンは一向に動かない。






、ちょっと前向いてて」


「え?う、うん。」






宿題をやる気なんかない



俺がシャーペンを動かしたのは俺のノートではなくのノート。









「ほら、ありがとな」


「もういいの?」


「おう」








前を向いていてくれた



振り返って俺の手からノートをとった






















数学の時間。



前の席で授業の為にノートを開いたの肩が跳ね上がったのと同時に



机にのっていたらしい筆箱を落とした。








揺れる髪



絹のような髪。







しゃがんで筆箱を拾おうとすると目が合った。








の顔は、赤かった。








「後で返事くれ」







こそこそと目が合ったに他の誰にも聞こえないように告げた。



返事とは



ノートに書いた俺の文字に対して。



の書いた宿題の解答の下



ノートの空白に書いた














が好きだ’













の返事。























end.