泣きやんで、くれません。






























『恋の唄・番外』






























「柳生、お前・・・お前もが好きだったんだな」


「・・・さあ、どうでしょうね」


「さあってお前、自分でが好きだって言ったばっかだろぃ」


「さあ。」


「・・・・・お前なぁ」






仁王くんがの元へ行ったあと



部室には私と丸井くんが残されました。






「丸井くん」


「あ?」


「私の想いは・・・・」














































































































































泣きやんで、くれません。











































































































































「あ!おはよ、柳生」


「おはようございます、さん」


「・・・柳生さ」


「はい」


「あたしの名前呼び捨てでいいよ」


「え・・・」


「みんなあたしのこと呼び捨てなんだよ」






・・・ああ、みんな、なんですね。





(・・・私だけかと)





思ってしまいました。






・・・さん」





「・・・・さん」


「呼び捨てでいいんだってば!!」






からかうように私に笑う



明るく



とても明るく。



一緒にいると曇り空さえ晴らしてくれそうな、



そんな彼女が好きでした。






さん」


「・・・でいいよ、柳生」


「・・・。」


「あははっやっとだね。」






がテニス部の練習を見に来ていた日でした。






「日陰に入ったほうがいいですよ。今日は暑い」


「ううん。ここがいい」


「ですが・・・」


「ありがとう、柳生」






休憩中に水分を取ろうと外に設置された水道へ。



私はフェンスの外でを見つけました。



さんさんと降る太陽の光に照らされた彼女



その視線の先には






(仁王くん?)






・・・



日陰に入ろうとせず



仁王くんのいるコートに一番近いところから



フェンスごしに彼を見ていました。
















「・・・・は」












口にしなければ、よかったのです。










































は、仁王くんが好きなのですか?」


「え・・・」






聞かなければ知ることはなかったかも知れないのですから。



知らなければ、気付かなかった。






「・・・・うん。好きなの、仁王が。」






その明るい笑顔。



誰のためのものかなんて。






















「柳生。仁王ってあたしのこと嫌いなのかな?」


「そんなことはないと思いますよ。・・・・むしろ」


「ん?」


「・・・いえ、なんでも。」






(むしろ・・・)






私は気付き始めていました。







「スランプ脱出したよ!柳生」


「よかったですね。これでバスケが存分にできるではないですか」


「うん!・・・仁王の、おかげ。柳生も、心配してくれてありがとう。」


「・・・そう、ですか。」






私は、気付き始めていました。



仁王くんもきっと



のことが好きなのだと。



ですがそれは、



確信ではなかったので



に伝えることはありませんでした。









本当は、



それは単なる、私の悪あがき。



・・・いじわるがしたくなったのです。



ずるいではないですか。



仁王くんもが好きなのにも仁王くんが好きだなんて。



そして仁王くんはを突き放そうとしていた。



私には決してできないことを。







「柳生、仁王がね!」






があなたの事を話すたびに見せる笑顔



誰のためのものかなんて。



それでも、



明るく笑う彼女が



私は好きでした。



苦しみに似た喜びの



うれしさに沈む悲しみの





















はがゆき、切なさ


















突然のことでした。






?」


「柳生・・・やっぱり仁王はあたしのこと・・・嫌いなのかなぁ?」






なぜ、泣いているのですか。



あなたが泣くことなど何一つないというのに。









「っ・・・」






座り込んで顔をあげてくれないから聞こえる嗚咽。



その姿を見つけて駆け寄ったのに



どんな言葉をかけても



泣きやんで、くれません。






「に・・・お・・」


「・・・・・・」






笑って、ください。



私ではダメですか。



例えば、あなたが仁王くんを好きになる前に



私があなたに好きと伝えていたならば、今日の未来は違うものになれたでしょうか。



私の手が



あなたの涙を拭うことはできたでしょうか。



明るく



とても明るく。



一緒にいると曇り空さえ晴らしてくれそうな、



そんな彼女が好きでした。



なのに、今は。
















「っ・・・・・・・・・・仁王・・・・」













泣きやんで、くれません。



私が、いじわるをしたばかりに。



私では、あなたの心に降る雨を晴らすことなどできませんでした。








「・・・・・・・・・。ここにいてくださいね。」







笑って、ください。



その寂しい涙が誰のためのものかなんて。



どうか、晴らしてください。



あなたならできる。






「仁王くん。ちょっとよろしいですか。」






わかっていました。



あなたが彼を好きなこと



彼があなたを好きなこと。



確信していました。



けれど、伝えるにはあまりに













私の勇気が足りなかった。











「柳生。お前さんはが好きじゃろ?」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」






その笑顔、誰のためのものかなんて知ったことではないのです。



笑顔は、いつも近くにあったのですから。



やっと呼び捨てできるようになったのに。



私は、あなたの涙を拭えない。



晴らして。



雨が、止まないのです。



雨では雲をはらえない。



今、あなたの好きな人に全てを打ち明けます。



だからどうかたった一度だけ、



声にすることを許してください。



切ないばかりの、






































































「・・・・・・・・・・・確かに私はが好きです。」



























































この想い。












































































































































「柳生、お前・・・お前もが好きだったんだな」


「・・・さあ、どうでしょうね」


「さあってお前、自分でが好きだって言ったばっかだろぃ」


「さあ。」


「・・・・・お前なぁ」






仁王くんがの元へ行ったあと



部室には私と丸井くんが残されました。






「丸井くん」


「あ?」


「私の想いは・・・・」






どんなに想っても彼女の好きな人は



私にはならない。



もう二度と口にすることはないのでしょう。













「私の想いなどにとって都合のいいものであれば、それでいいのです。」











想いあうだけが恋ではない。



想うことこそ恋でした。





「柳生・・・・」


「丸井くん。・・・唄を。」


「唄?」


「さきほど言っていた唄を。私にも聞かせていただけないでしょうか。」





明るく



とても明るく。



一緒にいると曇り空さえ晴らしてくれそうな、



そんな彼女が好きでした。



誰かのための笑顔でも、見ていたかった。



あなたが私を好きになることはないと知っていても。





























「叶わない恋の唄だけど、君を想う唄。・・・素敵ではないですか。」


























































今ごろ、あなたの涙は拭われたでしょうか。




























































































































あなたの好きな、人の手で。
























































End.