出会ったのは中学に入ったばかりの頃だった。





幸村や真田、柳の三人の出現で騒ぐ男子テニス部。





そして、女子バスケ部に現れた誰をも魅了するプレイをしてみせる





その頃の立海はそんな話題であふれていた。





















『恋の唄3』




















「ん?」


「どうした仁王?」


「いや、今変な物音が・・・・」


「あー!!そこどいてー!!!!!」





掃除の時間に中庭でごみや落ち葉を掃いていた時。



は突然空から降ってきた。



驚いたというよりは、不審さが上回っていた。





「ごめん!!掃除中なのに汚した!追いかけられていたの!!じゃあね!」





掃いたばかりの落ち葉の上に着地した



軽快に走り出し、あっという間に姿を消した。



舞っていく落ち葉とごみ。



追いかけられていた?



せっせと掃きなおす中庭でそんなことを考える。





「なあ、仁王。さっきのさ。あれってじゃねえ?」


?」


だよ!ほら、女子バスケ部に入ってきたすっげー1年!!」


「・・・・あれが・・・」





共に中庭掃除をしていたクラスメイトに気付かされる。



落ち葉を巻き上げ、突如目の前に現れ去っていった、あれが噂に聞いていたバスケ部の・・・。



















































「幸村。」


「やあ、仁王。」


「さっき真田が・・・・・」


「あっ!昨日の落ち葉掃きの人。」





は幸村と同じクラスだった。



お互い噂になっていると幸村はつわもの同士。



すぐに意気投合したらしい。



幸村を訪ねたそのクラスで今度はと会話をすることになる。



は気さくで明るい、そんな奴だった。




















「仁王―!!かくまって、かくまって!!」


「またか、。」


「仕方がないでしょ?人気者なの。」


「・・・・ほぉー」


「冷たいなあ。突っ込んでよ!」
















が空から降ってきた日。



追いかけられていたと言う言葉はすぐに理解できた。



はモテた。男からも女からも。



・ ・・・初めて見たときから思っていたが整った顔の



細身で、かといって細すぎるわけでもない。



性格からしてもモテないわけもなかった。



そんなは、追い掛け回されるたびに仲良くなったテニス部の面々を頼った。



丸井とも、真田とも、柳とも、ジャッカルとも。



そして・・・・柳生とも。



はすぐに打ち解けていく。














「・・・いい加減にしてほしいんだよね。」


「・・・・・・・・・・・あたしにどうしろって言うんですか?」











ある日聞こえてきた中庭での会話。



声の主の一人はすぐにだと分かった。





「やめりゃいいんじゃない?」


「・・・・退部しろって言うんですか?」


「そう」


「・・・・・・・あたしはやめませんよ」





重い空気に俺は思わず声をかける。





「よお、


「(!!)とにかく調子にのらないでよね!!」





走り去っていくその姿は確か女子バスケ部の1つ年上の先輩だった。





「(ふう)・・・ありがとね、仁王」


「・・・呼び出されたのか?」


「仕方がないでしょ?人気者なの。」


「・・・・ほぉー」


「冷たいなあ。突っ込んでよ!」





のははっと乾いた笑い。



寂しいくらいに中庭に響いた。





「・・・・今度の試合でね。レギュラーに選ばれたの。」


「・・・それは、よかったとよ。」


「・・・・・よかったんだけどね」


「ねたみ?」


「・・・仁王はたまにストレートに言うのね。」





は背伸びをする。



俺に背を向けて、両手を伸ばす。



晴れている空に手を浸す。





「いいんだ!そのうち文句も言えないくらいバスケうまくなってやるんだから!!」





その声は



勇ましいくらいに中庭に響いた。





「やめないんじゃろ?バスケ。」


「やめられないよ。好きすぎて。」





あの先輩のねたみはきっと



のバスケのプレイだけではない。



俺に振り向いてバスケをやめられないと言ったは、あまりにも真っ直ぐだった。



真っ直ぐで



放っておくにはあまりにも、

















































は、綺麗過ぎた。


























































その頃の俺は疎外感や劣等感の塊。



上を見ればきりはなく、まして下など見る気もない。



ただラケットを降り、ボールを欲す。



その頃の俺は疎外感や劣等感の塊。



のように真っ直ぐになりたかった。



真っ直ぐに、のように誰にも壊せないほどの存在になりたかった。



いつしかの好きと言う言葉。



バスケではなく俺に向かせたかった。
























































































































「お疲れー」


「お疲れ様ー!!」





飛び交う声は部活の終わりを告げていた。





「あー腹減った!どっか寄ってこうぜぃ仁王。」


「・・・・・・」


「仁王?」





校門での俺の視線の先には



柳生と、の並んだ背中。





「・・・丸井」


「なんだよ、いきなり黙りこくっちまってよ」


「それ以上体重増えたら知らないとよ」


「ほっとけ!!」





いつしかの好きと言う言葉。



バスケではなく俺に向かせたかった。



だから、気付いた。



柳生がを好きになっていたこと。



が柳生と話しているとき、とても切なそうな顔をすること。








































邪魔をするつもりなどない。



俺にはできる。



周囲を欺くこと。



俺自身をも欺くこと。



この上なく、鮮やかに。










「丸井、おごれ。」


「絶対嫌だ!!」


「お前が太らんように俺がお前のこと見張ってやるから」


「マジ最悪だな、お前」







そうして歩き始める。



校門で見た柳生とが辿る帰り道とは正反対の道を。



並んで歩く2人には、背を向けて。















































End.