一方的な言葉は
銃弾や爆弾のよう。
俺は第三者でもなく、被害者というわけでもない。
まさに当事者、最前線。
お前が敵というわけではないが
まるで、戦争だった。
『告白戦争』
「忍足、今日もかっこいいね!」
「・・・ああ。ありがとうな」
「今日も好きです。」
「・・・ああ。ありがとうな」
たった一人からの一方的な言葉は
銃弾や爆弾のよう。
廊下で俺を見つけて、側へとやってきた。
「・・・・・・・・なあ、。」
「それじゃっ!」
「ちょお!待てぇや!!」
走り去るの背中。
しばらく見ているといつも通りに
が足を止めて振り返った。
「忍足のバーカ!!でも好きー!!!」
いつも通りに、は爆弾投下。
叫ぶように俺に告げる。
「なあに、忍足。またさん?」
「くすくすっ大変だねえ。侑士」
「・・・・・・・・大変ってわけでもないねんけどな。」
「えーそうなのー?」
再び走り出したの背中を見ていた俺に
何人かの女子が近寄ってきた。
(香水きつすぎや)
確かに、大変。
銃撃戦、爆弾投下。
まるで戦争。
が撃ち込む言葉に俺は防戦一方で。
なぜならは、俺の話をまともに聞く前に走り去る。
「・・・・・なんやねん」
見えなくなったの背中。
唯一つ、思うのは。
なんていさぎの良い戦争なのかと。
「あっ忍足発見!」
「・・・・・」
戦争と言っても
が敵と言うわけじゃない。
ただどんな銃弾を撃たれるか、いつも身構える。
「・・1人?」
「見てのとおりやん」
昼を食べ終わり休むために座った中庭のベンチ。
中庭は人気の昼時場所だが、運がいいことに今日は誰もいない。
「、飯は?」
「食べたよ。休憩しに来たの。」
「ふーん。」
「忍足はもしや1人になりたい時間だった?」
「ははっ偶然ここに来たら誰もおらんかっただけや。そんな感傷にひたるような奴に見える?」
「少し。」
こうして話せば普通の。
嫌いではない。
むしろ一緒にいれば楽しいと思えるような奴。
ただ、
やはり戦争は避けたい。
俺はが座れるように座っていたベンチの端へと寄った。
「隣いいの?」
「・・・勝手に走り出さんのやったらな。」
「それはどうだろう。」
からかうように笑われて、
多少なりともはかわいいなと思った。
「・・・忍足」
「ん?」
「好っ・・・」
「ちょお!待った!!」
俺はの声をさえぎった。
いきなりか。
は言い逃げ常習犯。
一度も俺の話など聞こうとせず、撃ち逃げ。
それが本当の告白なら、なぜ答えを聞いてこない?
「・・・なんで?なんで、は俺から気持ち聞こうとせんの?告白なんやろ?それ。」
「当たり前でしょう?」
「せやったら、なんで?」
合わせたの目はいつだって真剣。
の銃弾に嘘があるとは思わなかった。
「忍足ってあたし以外に何人から告白されたことあるの?」
「は?」
「数で言うよりたくさんって表現が妥当じゃない?」
「・・・まあ。」
「だから、あたしが普通に告白してもいつかかすれちゃうと思ったの。」
今のも、銃弾?
「重ね撮りしたテープみたいに、何度も何度も告白されてたらきっとあたしの声なんて擦り切れちゃうんだろうなって。」
「・・・・・・」
「モテる人を好きになったからそれくらいの覚悟が必要なんですよ、忍足くん。」
笑う顔に、少しの寂しさ。
そんな顔をさせるのは、俺?
ベンチで聞くの話に俺は耳を傾けることしかできない。
「いいんだよ、答えなんか。忍足は聞いてくれるだけで。あっ迷惑だったらごめん。でも忍足の優しさ利用させて。」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「あたしが飽きるまで言わせてもらうから。」
‘飽きてなんかやらないけど。’
からかうように笑われて、
多少なりともはかわいいなと思った。
一方的な言葉は
銃弾や爆弾のよう。
俺は第三者でもなく、被害者というわけでもない。
まさに当事者、最前線。
防戦一方は割に合わない。
「・・・なんや、。いい匂い。香水?」
「え?」
手を伸ばして、指でさらったの髪。
さらさらと手から落ちていく。
もう一度すくって
少しゆるく人差し指に巻きつけた。
口付けるほどにその髪に俺は近寄って
(ホンマにええ匂い)
ゆっくり目を閉じて
の反応を待った。
・・・・・?
なんや恥ずかしがったり照れたりせぇへんの?
つまら・・・・ん?
「っ・・・・」
「?」
の顔は見たことがないほど真っ赤で
声がでないのか、片手で喉を押さえていた。
「あっ」
俺の手からの髪がこぼれた。
がいきなり立ち上がったからだ。
立ち尽くすはうつむくが
赤い顔は座る俺には見えている。
「・・・なぁ、」
口からでた無意識の言葉は
止まらなかった。
「付き合ってもええよ?」
「え・・・・・」
驚くが俺を見る
自分の言葉に俺自身も驚くが
なぜか心は落ち着いていた。
・・・待っていた。
からの答え。
「付き合ってもいいって・・・」
「・・・・・・・・・」
「・・・いい。」
「え?」
「そのていどの想いならいらない」
「・・・・」
「欲しくない」
座る俺。
立ったままの。
目は合ったままだった。
「あたしは、忍足の本気が欲しいんだよ」
が走り出す。
俺に背を向け
顔は赤みをおびたまま。
「・・・なんやねん」
‘本気が欲しいんだよ’
何なん?
唯一つ思うのは、
なんて、謙虚な戦争なのかと。
「!」
の背中に呼びかける。
立ち上がって、さほど遠くもない距離だが、の耳へ届くよう。
足を止めて振り返ったと
もう一度目を合わせた。
「たぶん俺、お前が思ってるより、ずっとお前のこと好きやで!」
俺が、想っていたよりも。
ずっと
きっと
絶対。
「・・・・・・・・・忍足のバーカ!でも好きー!!」
いつも通りの爆弾投下
いつも以上にの顔は赤いが。
俺に向かって叫ぶ。
「・・・なんやねん、それ」
いつも通りなのかそうじゃないのか。
がかわいいと思って笑った。
再び走り出したの背中。
見えなくなるまで見送った。
俺に、
戦力はあまり残されていない。
なぜなら俺はすでに戦意喪失。
撃ちこまれすぎた銃弾は既に胸を貫通していた。
もはや君に陥落されるまで
あと少し。
end.