想いを真っ直ぐに
言葉にできるほど素直じゃない
文字にできるほど器用じゃない
『言の葉の彼方』
「亮…なんでそんなにケガしてるの?」
「っ……なんでここに…」
「長太郎に聞いた。」
・・・あのおせっかい。
「連絡くらいくれてもいいでしょ?」
「…悪い。」
「…もう…会えないと思ってた。」
都内のコート。
氷帝のレギュラーから落ちて
強くなる為に
毎日長太郎と一緒に練習していた場所。
でも今日ここに来たのは
長太郎じゃなくてだった。
「休み時間になると教室からいなくなるし、メールも電話も返してくれない」
「…」
「あたしが心配してないとでも思った?」
不動峰の橘に負けたあの日から
俺はに会おうとしなかった。
「…怒ってる…よな?そりゃ。」
「…」
音信不通だった俺。
空気が重い。
が目を合わせてくれない。
「悪かった。…ごめん」
謝ることしかできない
だって会えなかった。
(今の俺、かっこ悪いだろ?)
負けたままの俺なんて激ダサもいいところ。
会えなかった。
このままの俺の姿なんて
見せたくない。
(心配してないなんて思ってねえよ)
「ごめん、」
謝ることしかできない
「…亮は…あたしのこと、好き?」
は顔を下に向けた。
まだ目を合わせてくれない。
「…」
「あたし、側にいたかったんだ。気休めの言葉しかかけてあげられなくても…」
一滴の雫がコートを濡らした。
「亮が辛い思いをしてるなら、側にいて支えたいって思ってた…」
「」
に近寄って
顔をあげさせる
「・・・泣くなよ」
「・・・・・」
の目には涙が溜まっていて
それは頬に伝う。
(俺は跡部や忍足みたいにはなれねえんだよ)
泣いてる女を泣きやませる術なんか持ってない。
想いを真っ直ぐに
言葉にできるほど素直じゃないし
文字にできるほど器用じゃない。
どうせならが欲しがってる言葉をあげたい。
(なんて言えばいい?)
泣くなよ
今、言葉にしてみせるから。
「…思ってること、そのまんま言う。」
「…」
「かっこわりぃな、俺」
変にかっこつけて
会えなかった。
待っててくれって一言言えばよかったんだよな。
聞けよ、きっと一度しか言えない。
気付けよ
「好きなんだ。」
どうしようもねえくらい
「亮…」
「だから、泣くなよ」
を泣きやませる術なんて知らない。
どうせならお前の欲しがってる言葉をあげたい。
これじゃダメか?
「初めて…ちゃんと聞いたかもしれない」
「そっそうか?」
「うん…初めて好きって言われた」
待っててくれって言えばよかったんだ
そしたらこんな風に泣かせたりしなかった。
「側に…いてもいい?」
もっと早く言えばよかったんだ。
好きだって。
「側に、いてくれ」
もう涙はふくだけでいいみたいだった。
今言葉にするから。
「…もう少し待っててくれ、俺強くなって、レギュラーにもどる。それまで」
「うん、待ってる。でも側にいるからね。ちゃんと会って。いろいろ話して」
「…わかった」
想いを真っ直ぐに
言葉にできるほど素直じゃない
文字にできるほど器用じゃない
でもいつも想ってる。
が欲しがる言葉をあげたいって。
いつも、想ってる。
end
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