死ぬほど好きってこういうことを言うの?













「仁。・・・仁!」



「・・・うるせぇよ」



「アイス、食べない?」


























『くるり、愛』

































セミが鳴く。



それはもう、うるさいくらいに。






「あっ仁。ジャリジャリくんとらないでよ。」


「知るか。」


「あたしが食べたかったのにー。」






屋上から見える入道雲は



仁が吐く煙草の煙みたい。












(今はアイス持ってるけど)













なんだかおかしい。



いつも煙草を持ってるこの人が今日はアイスを持ってる















(しかもジャリジャリ。)













「ぷっ…ははっ」


「・・・・」






いきなりは睨まないで。



さすがにひるむから。






「あー暑いもんね、仁。」






あたしが屋上にアイスを持って登場したのが5分前。



お昼休みにダッシュでコンビニまで買いにいった。






「もう授業始まってるね」


「・・・・」


「仁がサボってると思ってアイス持ってここまで来たの」






アイスを食べ終わった仁。



あたしはまだ。



アイスが溶けきる前に必死に食べきろうとしていた。











「・・・あちぃ。」



「うん、暑い。」












セミが鳴く。


耳をふさぎたくなるくらい。
























仁が煙草をくわえた。



















「仁、あたしにもちょうだい」


「テメーで買えよ」
















煙草に火をつける仁。















「そういうこと言うならアイス返せー。」









































始めは煙草を持つその手が、好きになった。





















「落ちる」


「へ?…あ。」





あたしが食べていた棒つきアイスから



アイスが屋上の床に落ちた。





「あーあ。まだ結構あったのに・・・。仁のせいだ。」


「アホか。」


「・・・だって、仁のせいだもん」





(煙草を持つ手に見とれてたなんて)





「・・・あちぃ」






































次にその声が好きになった。

















「仁。…アイス、買って」


「あ?」


「今日一緒に帰って、アイス買って」








次にその目が好きになって



髪が好きになった。








「そんなに食いたいなら今買いに行って来い」


「仁と買いに行きたい」








セミが鳴く



耳をふさぎたくなるくらいに。







「・・・・」


「・・・アイス、買いに行こうよ」



















いつからだったかな。



仁の全部が好きになった。


















「お前、趣味わりぃ」


「・・・悪い・・かも」








































死ぬほど好きって



こういうことを言うんだろうか。



あたし、あなたがいなきゃダメなんだ。










































「・・・あちぃんだよ。」


「うん、暑い」


「動きたくねえ」








































夏の暑さがセミを鳴かせる。



くるり、苦り、狂り。






































「じゃあ涼しくなるまで側にいてもいい?涼しくなったらアイス買いに行こうよ」






セミが教えてる。



まだまだ朝も昼も夜も暑いって。






「寒くなりすぎて食えなくなっても知らねえぞ」


「そしたら暑くなるまで一緒にいてもいい?」




















































くるり、苦り、狂り。




































セミが教えてる。



夏は必ず巡ること。






「・・・アホか」


「・・・アホ・・かも」




































死ぬほど好きって



こういうこと?



あたし、



あなたなしじゃ生きられない。



















「・・・勝手にしろ。」


「(!!)・・・うん!・・・勝手に、する」
















































くるり、苦り、狂り。





































































あたし、あなたなしじゃ生きられない。
























end.