夏が過ぎても
太陽は空を支配し続ける。
夏が過ぎても
まだあの時の熱は帯びたまま。
そう、夏が過ぎても。
『夏の終わり』
夏は過ぎたはずだった。
それなのに秋晴れと呼ぶには高い太陽の位置に眩暈すら覚える。
「キヨ。」
「あっもサボりだ。」
学校の中庭の木陰。
キヨは座って空を眺めていた。
「あっついよねー。二学期に入ったのに。」
「うん。教室にいると蒸すもん」
「あははっ」
キヨが笑う。
太陽に負けないくらいまぶしく。
「・・・・部活が終わったからこれから勉強ばっかりになるんだろうなぁ」
「やる気なんかないくせに」
「バレた?」
「うん」
「南には内緒ね、。」
キヨはいつだって笑顔だった。
いつだって笑いかけてくれた。
「・・・キヨは」
「うん?」
「キヨは高校生になってもテニスするんでしょ?」
「・・・うーん。多分ね」
「多分?」
キヨが笑う。
太陽に負けないくらいまぶしく。
「俺これでも負けるのってショック大きかったりするんだよね」
キヨが、笑う。
「・・・・・・キヨの中では、夏はまだ終わってないんだね」
「(!!)」
夏が過ぎても
太陽は空を支配し続ける。
夏が過ぎても
まだあの時の熱は帯びたまま。
そう、夏が過ぎても。
「・・・やっぱそうなのかな。」
「・・・・・・」
「・・・多分なんかじゃないよ。俺はテニスが好きだから。だから、高校生になってもテニスはやると思うんだ。」
「・・・・うん」
「でも、疲れちゃったのかな。踏ん切りがつかない。」
「・・・・うん」
疲れたなんてキヨは一度も言ったことがなかった。
いつだって太陽に負けないくらいまぶしくて
笑っていたキヨ。
「キヨの中では夏は終わってないんだね。」
「・・・うん。」
夏が過ぎても
太陽は空を支配し続ける。
夏が過ぎても
まだあの時の熱は帯びたまま。
そう、夏が過ぎても。
「・・・一緒に泣きましょうか。」
「え?」
「悔しかった・・・でしょ?」
キヨは笑う。
人に努力をひけらかすこともせず。
一心に。
努力して、テニスが好きで、勝ちたくて。
「・・・俺は泣かなくていいや」
「え?」
「が代わりに泣いてくれるから」
太陽が支配する空の下
あたしは目に涙を抱えていた。
「っ・・・ごめんね、キヨ。」
「どうして謝るの?」
「あたし、キヨに何もしてあげられない」
太陽を避ける木陰に2人。
あたしはキヨの肩に頭を預ける。
キヨはそっとあたしの手を握って。
「俺が笑っていられるのはが俺のことをそうやって考えていてくれるからだよ」
夏が過ぎても
太陽は空を支配し続ける。
夏が過ぎても
まだあの時の熱は帯びたまま。
そう、夏が過ぎても
キヨは笑う。
太陽に負けないくらいまぶしく。
「俺はテニスを続けるよ。」
「・・・うん」
「ありがとう、。」
あなたが笑っていられるよう
あなたが辛い時あたしが代わりに泣くよ。
だから
「ずっと笑っていて、キヨ」
太陽に負けないくらいまぶしく。
これは
あなたの為に何も出来ない
あたしの泣き言。
夏が、終わる。
end.