チャーンチャラーチャーンチャチャーチャー♪
チャーチャラーチャーチャチャーン♪
「携帯鳴ってるでー?着信音、ハグリットの笛の奴誰?」
「うおっまじまじ?俺もその着信欲C−!!」
「あっあたしだ。弦ちゃんの着信音。」
「あん?弦ちゃん?」
休日の学校。
部活が午前中で終了。
部室に残っていたのは忍足、ジローちゃん、景吾。
それからマネージャーの私。
そのとき部室で鳴った一本の電話が、
このまぶしい陽だまりの日を、色変わりさせる。
私の携帯、鳴り響くハグリット、サイドディスプレイの表示。
着信:弦ちゃん
通信ボタンをポチッと。
「もしもし?弦ちゃん?」
(((誰だよ、弦ちゃん。)))
『何故、そんなにも君たちは。』
「ああ、か。久しぶりだな。」
「ねぇ、柳。真田は誰と電話してるの?」
「ああ。氷帝学園3年テニス部マネージャーにという弦一郎の幼馴染がいるらしい。今日は氷帝も練習で学校にいるそうだ。」
「え!!その人かわいいんすか?ってか真田副部長は携帯使えたんすね。」
「氷帝・・・確かこの近くじゃなか?」
「ふーん。見てみてぇな、その幼馴染。」
「とりあえず、ここで一度解散にしませんか?私は午後は神奈川に戻らねばなりませんし。」
「俺もだ。」
「いいよ。解散にしよう。じゃあ、これから氷帝に向かう組と、立海に帰る組だね。」
「俺も立海に戻る。今日の練習試合のデータを早くまとめたい。」
「じゃあ、柳生とジャッカルと柳が戻る組だね。ねぇ、真田。これから氷帝に行っていいか、そのさんに聞いてみてよ。」
「・・・・・・・・・」
「真田?」
「・・・・誰だ、貴様は。名を名乗れ。」
氷帝学園近くにいた立海レギュラー陣が、そんな会話をくりひろげていたとは梅雨知らず
私は弦ちゃんと電話で話していた。
「え?今氷帝の近くにいるの?」
「おい、。」
「ん?そうそう、うちも練習。弦ちゃんたちも?」
「おい、誰だ、弦ちゃんって。」
あたしが電話で話している途中で、いちいち横からうるさい景吾を横目でちらちら見る。
あまりにうるさいので、電話をあてている方とは反対側の耳の穴を指でふさいだ。
「あん?」
「うるさいって言うてるな、あれは。」
「跡部 ‘弦ちゃん’ より下みたいだね。」
ジローちゃんのそんな一言が、景吾に火をつける。
景吾は私の手から携帯を取り上げて
自分の耳に当てた。
「あっちょっと!景吾!!」
「おい、弦ちゃん。」
(弦ちゃん似合わねぇ!!)
景吾ほど、弦ちゃんなんて言っちゃいけない人もいないと、
私も忍足もジローちゃんもその場で思わず固まった。
<立海陣営>
「真田?どうしたの?」
「幸村部長、柳先輩達いっちゃいましたよ?」
『おい、お前が俺のの何かは知らないが、気安く電話なんざかけてくるもんじゃないぜ?』
「名を名乗れと言っている。」
『あん?弦ちゃんに名乗る名前なんてねぇ・・・・・・・ちょっと景吾!電話返して!・・・バカっ・・・押すんじゃねぇ!』
「・・・?!なのか?!」
携帯を景吾から奪取することになんとか成功した私。
少し離れたところで、忍足とジローちゃんが景吾を押さえ込んでくれてる。
「おいっ離せめがね!」
「俺だけなん?」
「ねぇ、跡部ー。弦ちゃんってさ、俺たちの知ってる中でそんなあだ名がつくのって・・・・。」
「あん?」
「もしもし、弦ちゃん?」
『?お前もしかして跡部と一緒にいるのか?』
「えっ・・そうだよ。部活終わったばかりだし・・・まだ部室に・・・・。」
『今すぐ助けに行ってやる!!』
「はい?助け?・・・・もしもし?もしもし?もしもーし!!弦ちゃん?!」
「・・・・。電話切れたん?」
「・・・・切られた?」
ぷつっと切れた電話。
弦ちゃん・・・・電話なんて久しぶりだったのに。
っていうか、携帯使いこなせてたんだね。
メールでさえ、返信に平均50分かかるくせに。
返信したあとメール届いたかって、
無意味メール今も送ってくる人なのに。
「おい、誰だよ、弦ちゃんって。なんでお前の携帯に電話かかってくるんだよ。」
「弦ちゃんは弦ちゃんでしょ。」
「どういう関係だ?あん?場合によっちゃただじゃおかないぜ?お前が。」
「あたし?!」
・ ・・・うわーい。
景吾目がマジだ。
やばい・・・・やばいよ、これ!
私は景吾によってじりじりと部室の壁に詰め寄られていく。
横目にこっちを見て楽しそうに笑ってる2人の姿を発見。
「おっ忍足!ジローちゃん!!」
「いやー、しゃあないって。跡部はに溺愛やし。」
「俺たちお邪魔そうだったら帰るよ!!」
「ジローちゃん明るく言わない!!助けてよ!!」
じりじり。
怖い、怖い怖い怖い!
「けっ景吾っ・・・・!」
ダメだ、聞いてない。
目が本気だもん。
あたしの背中に壁が当たる。
これ以上逃げ場はないし、前方には景吾しかいない。
あたしに向かって伸びてきた手にぎゅっと目をつぶった、その時だった。
<バンっ!!>
「ー!!」
「「「真田?!」」」
「げっ・・・・弦ちゃん!!」
「弦ちゃん?!真田が?!」
部室のドアが勢いよく開いた。
ってか、少し壊れて傾いた。
部室に飛び込んできた弦ちゃん。
私と景吾のほうを見て目を見開く。
いつの間にか、私の顔の両脇の壁に手をついていた景吾。
私と景吾の目線だけが弦ちゃんに動いていた。
弦ちゃんがぎりっと強く拳を握りしめる。
「跡部!貴様っ・・・!!」
「あん?」
「弦ちゃん!景吾!」
弦ちゃんが景吾にむかって突っ込んでくる。
弦ちゃんは私から景吾を引き離すと、景吾の胸倉を掴む。
景吾はその手を機嫌が悪そうに叩き払った。
「健全な男子中学生が、不健全な行為などもっての他だ!!」
「あん?健全な中学生男子だからこその行為だろうが!バーカ!」
「が嫌がってるのがわからんのか!!」
「気安くを呼ぶんじゃねぇよ!!」
・ ・・・・うわーい。
景吾と弦ちゃんの睨み合いが始まる。
嫌な空気。
ぴりぴりしてる。
私は壁伝いにとりあえず忍足とジローちゃんのところまで来てみた。
そんな私の様子に、景吾も弦ちゃんもにらみ合ったままで気付かない。
「・・・笑撃の出会いって奴やな。あっ・・・笑うほうのショウな。」
「何うまいこと言ったみたいな顔してんの!全然うまくないから!!」
「・・・、弦ちゃんとはどんな関係なの?」
「・・・幼馴染、だよね?」
「「「!!」」」
聞こえた声は穏やかで、とても優しく風のよう。
その姿は威厳を伴う、颯爽とした姿。
「幸村。」
「やぁ、忍足。芥川。それから、初めまして、さん。」
「・・・あたしの名前・・・・・。」
「うちには参謀って怖い奴がおる。何でもわかるんじゃ。」
「そういうこと!シクヨロ!」
「うわっあんたがさん?かわいい!!」
「・・・・なんや、団体さんやな。」
ぞろぞろと部室に入ってきた4人。
見たことのある顔ぶればかり。
立海のジャージを着てる。
確か、幸村君、仁王くん、丸井くん、切原君。
立海レギュラー大集合だ。
みんなの視線は、いまだにらみ合う景吾、弦ちゃんへ。
「ねぇ。弦ちゃんとは幼馴染なだけなの?」
「うん、そうだよ、ジローちゃん。」
「「「「弦ちゃん?」」」」
「にはそう呼ばれてるみたいやで?真田。」
固まる立海4人組。
私は小首をかしげた。
弦ちゃんは弦ちゃんでしょ。
何か問題でも?
「おい、真田。てめぇ、のなんだ。」
「お前こそなんだ。」
「あん?俺がの何かじゃねぇ。が俺の女なんだよ。」
「おい、こら景吾。誰が誰の女だって?」
聞き捨てならない台詞にいちよ口出ししてみるけど、
聞く耳持たず、2人のにらみ合いが続行される。
「ねぇ、さんは跡部さんと付き合ってるわけじゃないんすか?」
切原君が私に聞く。
いつの間にか部室のソファに我が物顔で座ってる立海レギュラーのみんな。
忍足とジローちゃんも反対側のソファに座ってあたしに小首をかしげていた。
私はとりあえず忍足の隣に腰を下ろす。
「弦ちゃんは幼馴染。私、生まれは神奈川だから。景吾は部長。」
「でも真田と跡部にとってはは想いを寄せる人ってわけじゃね。」
「・・・え?」
「ふふっ楽しくなりそうだね。ね、そう思わない?丸井。」
「えっ・・・おっおう!!」
・ ・・なんだろう、幸村君。
今のとても素敵な穏やかな笑顔。
その向こう側に黒いもやが見えたのはなぜ?!
この気持ちを訴えたくて、ジローちゃんのほうを見てみる。
ジローちゃんは私に気付いて、そっと私に微笑んだだけだった。
切原君は、ふーんと声にすると、足を組み、
そのまま景吾と弦ちゃんのほうを見るので、みんなの視線も自然とそうなった。
「俺はな、小学校までと同じ月日を過ごしてきた。お前よりのことはわかる。」
「あん?俺はこの3年での全部をもらった男だぜ?」
「あげてない!!」
「は幼少の頃に弦ちゃんのお嫁さんになると言ったこともあるんだぞ?!」
「あん?俺なんかな、テニスやってるときの景吾は誰よりかっこいいって言われたことがあるぜ?」
2人の会話は、みんなに筒抜け。
私は恥ずかしさにうつむき始める。
「・・・言ったの?。2人ともうらやまCー!」
「・・・・・・言ったかもしれない。」
「なんすかあの自慢大会。」
「気にするな赤也。2人とも未知の方向に頭が突入しかけてるだけだぜぃ。」
「ふふっ・・・真田の奴。ルックスじゃ跡部に完敗のくせに。」
幸村君がとても楽しそうなのは、なんでだろう。
・ ・・でも私にとっては笑いごとじゃない。
2人ともまだにらみ合ってるよ・・・。
「あん?俺なんかな!熱がでたを保健室まで抱いて連れてってやったことがあるぜ!」
「それを言うなら俺はにバンソウコウをはってやったことが・・・」
「・・・忍足。」
「なんや、。」
「あのつまんない自慢大会とめて。」
「無理やな。跡部だけやと思ったら、立海にもを溺愛する奴がおったんやなぁ。」
「真田に好きな奴がおったとは、誰も知らんかった。いや、参謀は知ってたかもしれんが。」
忍足と仁王くん。
そろって私ににやっと笑う。
・ ・・違うって。
景吾も弦ちゃんもきっとそんなんじゃないって。
なんで、にらみ合うかな。
あの場所一体だけ空気がぴりぴりして、こっちはなんていうか、その。
「あーやべぇ、楽しすぎるあの2人。」
そんな切原君の一言に、うなずく立海陣。
忍足もジローちゃんもくすくすと笑ってる。
言うならば、そう。
こっちの空気はバラエティ番組を見てるときのようで・・・・。
「がお前など好きになるはずがない!」
「あん?じゃあ、が好きなのはお前だとでも言うつもりか?はっ!笑えない冗談だな!」
「ふふっ俺的には大爆笑だけどね。あっはははははははははは。」
幸村君!!
弦ちゃんに関してなぜそんなにも楽しそうなのか。
弦ちゃんは立海のみんなに好かれてる証拠・・・・・。
じゃなくてからかわれてるだけなのか。
ぽんっと私の肩に置かれた手。
「・・・忍足。」
「ええな、。想われてて。」
ちっともよくねぇよ。
忍足の笑みにいらいらしたので、その足を思い切り踏むと
忍足が声にならない叫び声で、足を押さえ込んだ。
ああ、どうしよう。
ジローちゃんはこの状況に飽きたのか、寝そうだし。
立海のみんなは楽しそうに弦ちゃんを見てるし、
忍足は足痛そうだし。
弦ちゃんと景吾はまだ睨みあってる。
またにらみ合ってる。
・ ・・・・なんとかしないと。
「・・・弦ちゃん!景吾!!」
「あん?がいやいやマネージャーやってるとでも言いてぇのか?」
「お前が無理やりやらせているんじゃないのかと言っている。」
「ちょっと・・2人とも!」
「どこがだよ?証拠があんなら出してみろ!ねぇだろ?あるわけねぇよなぁ?!」
「さっさとを転校させろ。今すぐにだ。立海に!!」
「あん?」
「ちょっと!景吾!!」
「、少し黙ってろ。」
・ ・・・・・あん?
「・・・・・わかった。じゃあ、もう一生しゃべってやんない。」
景吾の一言に私も少しキレる。
何よそれ。
少なくとも2人の話の内容で、私は当事者でしょ。
黙ってろって何。
「・・・いやっ・・・ちょっと待て。・・それは勘弁しろ。」
「じゃあ、話聞いて。弦ちゃんも。」
「。お前本当は氷帝がいやなんじゃないのか。」
「だからっ・・・話聞いてって!!」
「あん?じゃあに直接聞いてみようぜ?俺と真田。本当はどっちが好きか。」
「・・・・・はい?」
だからっ・・・話聞こうよ!!
しかもいろんな話がまとまってて、
ううん、2人の間でしか話がまとまってなくて、ついていけない。
・ ・・・ってちょっと!!
「もちろん俺様だろ?。」
「。まだあの約束は生きているよな。結婚しようと。」
「あっはははははははははは。」
「幸村くん爆笑しない!!」
えっと、今の状況は。
忍足をソファからどかして、そこに自分が座りあたしの左手を取る景吾。
顔面が近い。
ソファには座らず、部室の床に片膝つけて、あたしの右手を取る弦ちゃん。
顔面が近い。
・ ・・・近い。
近い近い近い!!近いよ、二人とも!!
「なぁ、。こんな奴のどこがいいんだよ。俺のほうが何倍もかっこいいじゃねぇか。」
「・・・・弦ちゃんは、かっこよくないけど、優しいよ。」
「・・・今のはほめ言葉か?」
「しょうがないよ、真田。顔は跡部に完敗だから。」
「幸村部長。それじゃぁ傷口に塩どころか豆板醤塗ってるようなもんすよ!!」
「あー。それ痛そうじゃな。」
「いや、痛いだろぃ。」
なんでそんなに立海のみんなは楽しそうなの。
景吾が私をじっと見つめてくるので、私は戸惑いながらも
その目を見つめ返した。
すると、弦ちゃんが右手を握る力を少しだけ強める。
「弦ちゃん・・・・・」
「跡部はお前の気持ちを無視していきなり襲ってくるような男だぞ?」
弦ちゃんはきっとこの部室に入ってきた始めの状況のことを言っているのだろう。
「・・・景吾は、強引だけど、たまに優しいよ?」
「跡部ー。弦ちゃんに負けてるC。たまにだって。」
「それ以上言ったらあかんで?ジロー。」
どっ・・・どうしたらいいんだろう、この状況。
景吾も弦ちゃんもがっちりと握った手を離そうとはしてくれない。
2人の視線が強くてするどく、
私はどちらとも目をあわせることができない。
(だっ・・・誰かっ・・・!!)
助けて欲しい。
どっちが好きとか、そんなんじゃなくて。
私は。
・ ・・私は。
「・・・・・跡部。俺はを困らせるようなことはしたくない。」
「・・・不本意だが、その意見には賛成してやる。」
「・・・・・・・・・・・え?」
2人の手が、ほぼ同時に私の手から離れる。
2人が同時に立ち上がり、
再びにらみ合い、そして、2人で同時にふっと笑った。
「「テニスで勝負だ。」」
・ ・・・・なんで?
この2人にしかわからない話の内容。
勝負ってなんの勝負。
何が決まるの。
何を決めたいの。
何がわかるの?
「・・・・・。大丈夫ー?」
「・・・ジローちゃん。なんかよくわかんないけど、ストレスで軽く胃が痛い。」
「・・・・もう、ほっとけばええんちゃう?あの2人の好きなようにさせてやったら。」
「でもっ・・・・・・。」
「おい、忍足。そこにいる奴の誰一人として、に指紋つけさせんじゃねぇぞ。」
「・・・・・了解(さっき俺にさわったわ。)」
景吾が余裕の笑みを残しながら、私のほうを見た。
弦ちゃんが壊した部室のドアをくぐって、景吾と弦ちゃんがコートに向かう。
・ ・・なんで、そうなるの。
私はもうかける言葉もなく、2人の背中を目で追うだけだ。
「ふふっ・・・弦ちゃんか。」
「いや、幸村。それで呼ぶなよ。鳥肌が立つだろぃ。」
「弦ちゃん。・・・・いい呼び名じゃ。」
「うわっ鳥肌やばいっすよ、俺!」
みんな、楽しそうになどしないで。
なんであの2人、あんなに。あそこまで。
「だーいじょーぶだよ!!!」
「・・・・・え?」
「2人とも楽しそうだもん!」
ジローちゃんが私の手をひいてコートにつれだしてくれる。
いきなり見た太陽がまぶしくて、くらくらした。
視線の先のコートの上。2人がラケットを片手に向かい合ってる。
(・・・楽しそう?)
確かに2人は、口元に笑みを浮かべてるけど。
「ライバル、っすからね。」
「ライバル?」
切原君のほうを思わず見れば、切原くんは私に笑い、
その隣の丸井くんもフーセンガムを膨らましながら、私に笑う。
「皇帝と帝王、だろぃ?あの2人。」
弦ちゃんと景吾。
「は誰にも渡さねぇ。」
堂々たる姿。笑み。
「を守れるのは俺だけだ。」
幼馴染の彼と、氷帝の中等部に入ってから出会った彼。
どちらが好きとかじゃなくて。
「ふふっ・・・・・弦ちゃんか。」
「だいぶひきずるタイプじゃね、幸村。」
「・・・・なぁ、。腹減ってへん?」
「え?」
休日の午後。
午前中で部活が終わって、照る太陽。
コートのほうを見ている私に忍足がそう聞くから、みんなの視線が集中する。
「そういや、俺たちも昼飯まだじゃな。」
「だいぶ腹減ったぜぃ。」
「そうだね。ねぇ、芥川。どこか近くのお店、俺たちに紹介してくれるかい?」
「いいよー。っていうか俺たちも昼まだだC−。ね、、忍足。」
「えっ・・うっうん。」
「なんだ、じゃあ一緒に昼飯行きましょ。せっかくこんなにかわいい人に会えたんだからもっと話したいし。」
「えっ・・・あの・・・・・」
コートの上では既にボールが行き交っている。
打球音、2人の駆け回る足音。
楽しそうな笑み。
私は2人をじっと見据える。
「ふふっ・・・・大丈夫だよ。あの2人なら。」
幸村君の声に、私はみんなを見渡す。
ふいに背中を押される。
コートの出口に向かってだった。
「ジっ・・・ジローちゃん!」
「行こう、!」
ジローちゃんに背中を押され、周りには忍足、仁王くん、幸村君、丸井くん、切原君。
首だけ振り返って、コートの上を見る。
幼馴染の彼と、氷帝の中等部に入ってから出会った彼。
景吾と目があって、弦ちゃんと目があって。
私は、大きく息を吸い込んだ。
「景吾ー!弦ちゃーん!!早く来ないと先行っちゃうからねー!!」
するとラケットを持つ2人の手が下りて、動きがとまって、
2人がコートの向こうからこっちにかけてくる。
何かを、叫びながら。
「忍足ー!!てめぇ、誰にもに指紋つけさせねぇように見てろっつただろーが!!」
「って俺かい!!」
「赤也!!に近寄るな!!」
「なんすか、弦ちゃん。・・・うわっ・・・鳥肌がヤバイ!!」
ジローちゃんが私の背中を押す力を緩めた。
忍足を追いかけたまま、景吾が私を通り過ぎ、
弦ちゃんも切原君を追いかけて私を通り過ぎる。
逃げる忍足、切原君。
「ねぇ、。」
「何?」
「・・・本当はどっちが好きなの?跡部と弦ちゃん」
ジローちゃんのくすくすとした笑い声。
私の背中のほうから私に聞いて。
私は、少し先にいる景吾と弦ちゃんを見つめた。
忍足も切原君もうまく逃げ切ってるみたいだ。
どっちが、好きとかじゃなくて。
「どっちも大切な人・・・・かな?」
そういった私に、周りいたみんながははっと笑った。
「ねぇ、仁王、丸井。俺たちも欲しいね、マネージャー。」
「俺はがマネージャーにほしいぜぃ。」
「同感じゃ。いっそさらうか。」
「え?」
「言っとくけど、はあげないよー!!」
あっはははははは。
そう笑った幸村君。
正直彼の後ろの黒いもやが消えなかった。
私はもう一度少しだけ先にいる弦ちゃんと景吾を見た。
弦ちゃんは赤也を叱っていて。
景吾は忍足を正座させてる。
‘本当は、どっちが好きなの?’
どっちが、好きとかじゃなくてね。
「!早く来いよ!」
「気安くを呼ぶな。」
「あん?は俺のだぜ?」
「断じて違う。」
「あっははははははは。」
「幸村君!爆笑しないの!!」
「だって、真田が弦ちゃんだよ?今笑わなくていつ笑うんだい?」
その声にここにいる誰もが噴き出した。
幸村君の声が聞こえなかった景吾、弦ちゃん。切原君と忍足が小首を傾げてる。
しまいには仁王くんがあの顔で誰かを好きなのも笑えると言い出した。
ジローちゃんがくすくすと笑い続ける。
「だから、そんなに笑わないの!」
少し先にいる二人。
景吾と弦ちゃん。
私にとって。
どちらも、大切な人。
End.