うれしかったこと。
清純に好きって言われたこと。
『オレンジ』
探すのは
いつもオレンジだった。
「、見てた?」
「見てたよ。勝ったね、清純」
「うん!!が見ててくれたからだよ!!」
探すのは
いつもオレンジ。
緑のコートに劣らない。
空の青に劣らない。
その鮮やかな。
うれしかったこと。
清純が駆け寄って来てくれたこと。
「次も勝つよ!」
「うん。がんばってね清純!」
探すオレンジ。
本当は探していたのは彼自身。
緑のコートに劣らない。
空の青に劣らない。
その鮮やかな。
初めて知った清純は
女好きでただのラッキーで。
でもそれだけじゃなかった。
一つのことに夢中になって
努力を惜しまない人だった。
だから、うれしかった。
‘好き’その一言が。
そうやって舞い上がっていたあたしが馬鹿だったんだ。
探すオレンジ。
悲しかったこと。
清純が知らない女の子と歩いていたこと。
女好きでただのラッキーで。
「あの人がいいならそっちへ行きなよ」
「待って!!!」
あたしも
あなたじゃなくてかまわない。
「違うんだ!信じて!」
喉が痛い。
言葉がでてこない。
ゆるむ涙腺から涙を落とさないように
必死だった。
言わないなら
あたしが言ってあげる
「バイバイ。」
走った。
オレンジを見ないよう。
涙は耐えたまま。
足を止めて振り返った。
あなたが追いかけて来てくれるんじゃないかって
息をきらして名前を呼んで
あなたが抱き締めに来てくれるんじゃないかって。
ホントはね
別の人のところなんか行ってほしくない。
あたしだけを見ててよ。
あなたが、好き。
背中にかかった重み
私の視界にはオレンジ。
はなして
心の中で本当は思っていない
その一言を言おうとした時
後ろからあたしを抱き締める清純の腕が震えていることに気付いた。
「信じて。」
震えた声。
耐えていた涙があたしの頬をつたった。
「違うよ。道を聞かれただけなんだ。あの女の子の名前も知らない。」
そっと清純から触れた唇。
暖かくて、甘くて、切なかった。
「・・・信じて」
あなたがそう言うなら、あたしは・・・。
そっと微笑んだら、あなたも笑って、
今度は正面から私を抱き締めた。
よかったという安堵の溜め息が聞こえてきた。
「が離れて行っちゃうんじゃないかって、怖かったんだ。」
震えの理由。
本当は苦手なんだ、こういう言うの。
でも精一杯の勇気であなたに伝えるから。
もう一度抱き締めて口付けてくれますか?
「あなたが、好きです。」
オレンジを探す。
緑のコートに劣らない
空の青に劣らない。
その鮮やかな。
大好きなあなた自身を探す。
end.