それはある日の日常。






放課後の部活が終わった部室でのできごと。






私、テニス部マネージャー: 






<ガチャッ>






「みんなー?まだ帰らないの?」


「「「「「・・・・・・・・・・」」」」」


「・・・どうしたの?」


「・・・・・ねぇ、。」






















ジローちゃんが机の上を指差した。


























「これ、なんなのか知ってる?」














































『パンドラの箱』














































部活が終わってから早40分ほどが経過した。



いつもなら、ジャージから制服に着替え終えたレギュラーのみんなが部室からでてくる頃。



私はみんなが着替え終えてから軽く部室の掃除をするのがマネとしての仕事になっていた。



だが、今日は一向に部室からみんなが出てこない。



気になって部室のドアを開けてみると、



レギュラーのみんなは既に制服姿で、部室の机をぐるっと囲むようにしてそこに立ち尽くしていた。



そう、ジローちゃんが指さした机の上のものをみんなで見つめ。






「・・・・それ、何?」


も知らねぇってことは、一体誰なんだ?これ置いたのは。」


「・・・・宍戸さん。俺はそこ以外に疑問が山積みだと思います。」


「っていうか、さ。なぁ、侑士。」


「ああ。突っ込みどころ満載でどうしていいかわからへん。」


「・・・・でもさ、すっげー気になるよね、跡部。」


「・・・・・・・・・・ああ。」







とりあえず、部室の中に入って開けたままだったドアをパタンと閉め、



みんな同様足を進め、それを見つめた。



机の上にのったそれは、バスケットボールくらいの大きさの長方形の箱。



豪華な彫刻の彫られたいわば宝石箱のような箱。



気になるのは、その箱に張られた一枚の大きな紙だ。























‘パンドラの箱’


























太字の黒いクレヨン。



まるで文字そのものを覚えたての小学生が書いたようなその大きな文字。






「・・・忍足。」


「なんや、跡部。」


「開けろ。」

「断る。」







腕を組んだままの二人。



目線はずっと‘パンドラの箱’にあった。



静まり返った部室内。



話からすれば。






「・・・だっ誰がこの箱置いたかわからないってことだよね?」


「俺たちの中にこの箱に思い当たる節がある奴はいない。部活が終わってきてみたらここに置いてあった。」






跡部がそうはっきりと答えれば、みんなはじーっと前の前の箱を見つめるだけだ。



この場の誰もが思っている。



きっと誰もが思っている。



明らかに高価な箱の外観。



ふざけた宝石箱のようだ。



まるでいたずら。クレヨンでパンドラの箱。



部室の机のど真ん中に置かれたこの異物を。




















((((((誰か開けろ。))))))
















「・・・長太郎。」


「宍戸さん、俺には無理です。」


「なんでだよ。」


「嫌な予感がします。それはもう、
開けた瞬間消えたくなるような。


「・・・なぁ、。」


「・・・・岳人。開けろとか言ったら怒るわよ?」












たらりと、冷や汗。



みんなが息を呑み、視線はパンドラの箱。



・ ・・・気になる。



めちゃくちゃ気になる。



なんだろうこの、開けてください的オーラ。



なんだろうこの、誰か開けろオーラ。



誰が置いたの?



中身は何?



このふざけた紙は誰が書いて誰が張ったのか。






「おっ俺が開けるー!!」


「ジローちゃんっ・・・・・!」






そのふざけた箱に、ジローちゃんが手を伸ばしたその時だった。



ジローちゃんの動きをぴたっと止めた、その重低音。













「ギリシャ神話の話や。プロメテウスが天界から火を盗んで人類に与えた事に怒ったゼウスは、
          
           人類に災いをもたらすために「女性」というものを作るよう神々に命令したんやて。」


「ちょっ・・ちょっと忍足!」


「作られた女はパンドラ。神々から全てを与えられた女の意。
      
     プロメテウスを罰するために、ゼウスはパンドラをプロメテウスの弟、エビメテウスに贈り物として与えた。」











忍足に続いて跡部が声にする。











「そしてゼウスはパンドラにけして開けてはならないと言って一つの箱を渡した。」


「だが、パンドラは好奇心に負けてこの箱を開けてしまったんや。・・・・箱の中身は何か、知ってるやろ?鳳。」










いきなり忍足に話を振られた長太郎を、誰もが見た。



ジローちゃんは、目の前の箱に手を伸ばしたまま、



固まってしまっていた。










「・・・箱を開けた瞬間。ゼウスが箱に閉じ込めたこの世のあらゆる災いが飛び出したんです。」










その場の空気が一瞬にして凍りつく。



長太郎を見て、誰もが固まる。



この世の災い、



パンドラの箱。



ジローちゃんが、伸ばしていた手を引っ込めて箱から無理やり目をそらした。





「おい、忍足。何勝手なこと言ってんだ。ジローが開けるのやめちまっただろうが。」

「おいっ!途中から説明に参加したのはどこの誰やねん!」



「・・・・ジっジローちゃん、開けないの?」


「・・・・。」


「ん?」


「この箱の中身、なんだと思う?」






誰もがジローちゃんの言葉に箱を凝視した。



パンドラ。あなたの気持ちがよくわかる。



開けちゃダメだと思ったら、普通に開けたいと思うよね!



中身を聞いてないならなおさら中身が気になるよね!






「・・・宍戸は、なんだと思う?」


「俺かよ。」






お次は宍戸をみんなで凝視。



宍戸はパンドラの箱を凝視したまま。



腕を組んで中身を考える。






「よっよく考えてみろよ!ここは氷帝テニス部の部室だぜ?ただのテニスボールとかっ・・・・」


「つまらへん。20点。」


「いや、10点だ。」


「(採点制?!)」






宍戸の答えに忍足と跡部が得点をつける。



正直厳しい。



こうなると、どうなるかってそりゃあ。



誰が一番面白いことを言えるかになって。






「おっ・・俺ですか?」






宍戸の隣の長太郎に目がいくのは必至だ。



長太郎をみんなで凝視。



長太郎はパンドラの箱を凝視。








「・・・誰が置いたかによりますよね。」


「長太郎は誰だと思うの?」


「・・・この場にいないとすれば、日吉か樺地。・・・もしくは滝先輩ですよね。」








んーっと口元に手を添えて考える長太郎。



私は再び箱に張ってある紙に目をやる。



このクレヨンで書かれたかわいらしい‘パンドラの箱’の文字。



日吉、樺地、滝・・・・・。



正直この中の三人誰が書いたとしても








どん引きだ。









「樺地なら作った船の模型とか、日吉なら古武術書とか。」


「無難だC−」


「たっ・・・・滝さんならっ・・・・・」


「長太郎?」








長太郎の顔が青ざめていて、私はちょっと不安になる。









「わっ・・・藁人形とか!!」


「「「「「・・・・・・・・・・・・・・あー」」」」」









ありえるなー。



誰もがそう思う。



ふふふって、滝がどこかで笑ってる気がして、あたしは頭を振る。






「現実味がありすぎちゃう?50点。」


「宍戸の6倍増しだろ。60点。」






正直、ここに宍戸の居場所はなくなりつつある。



辛口な2人の採点。



厳しいせいで宍戸は苦笑いする長太郎を横目で見るしかない。



次は誰かといえば長太郎の隣のジローちゃん。



みんながジローちゃんを凝視。







「ん?俺?・・・んー・・・・」







ジローちゃんが腕を組んで、パンドラの箱を見る。



小首をかしげる姿は正直とてもかわいい。







「白い煙がもくもくとか。」


「ジロー、それは浦島太郎。」


「俺おじいさんにはなりたくないCー!」


「だから浦島太郎だって。」


「四次元空間とか!」


「ドラ○もんのポケットな。」


「タイムマシン乗りてぇー!!」


「だからドラ○もんだって。」


「プレゼントいっぱいとか!」


「・・・・サンタ?」


「俺いい子だったかな?」


「クリスマスじゃねぇしよ。」


「今欲しいものはね、えーっと・・・」


「おい、お祭り頭。話を聞け。」






ジローちゃんの考えに次々と突っ込んでいくのは、ジローちゃんの隣にいる岳人。



2人のやりとりはかわいい。



みんな苦笑、そして温かい目で夢一杯のジローちゃんを見る。





「それで?ジローちゃんは結局中身はなんだと思うの?」


「ん?ああ、生物兵器とかじゃない?」




















・・・テロ?


























さっきまでの夢一杯の発言はどこに?!








「・・・あかん。意外すぎて点数つけられへん。」


「採点対象外だろ。」









跡部がとても冷静に流してくれたのでとりあえずみんなで笑ってみる。



あははははははははは。



・ ・・すごく、乾いた笑いだったけど、



早くこの妙な空気をどうにかしたい。



っていうか、生物兵器だと?!(遅っ)






「がっ岳人は?!中身なんだと思う?」


「おっ・・お菓子とかだといいよな!こう山盛りにさっ!」


「それっ・・・いいよな!」


「そうですね!」






ナイス岳人!



かわいい回答をありがとう!



宍戸に続いて長太郎が合意する。



お菓子!いいよね!!










「「5点。」」










空気読めよ。










跡部と忍足のそろった声に、そう思いっきり突っ込みたかった。



5点じゃ宍戸以下じゃないか!



いやっ、確かに願望だし、面白味のない答えだったかもしれない。



けど、かわいくて、一番和ませてくれる答えだったじゃない!



岳人があまりの点数の低さに黙り込んだけど、私としては満点をあげたいくらいだった。






「じゃっじゃあ侑士はなんだって言うんだよ!」


「ん?そやなぁ・・・・。」






忍足をみんなが凝視。



忍足は腕を組んでパンドラの箱を凝視。












「・・限定フィギュっ・・・・」



「「「「「0点。」」」」」










これ以上オタク発言をさせたくない思いはみんな一致だったため。



見事に声がそろう。



っていうか、ただでさえオタクの疑いが大きいから、核心をつくような発言はやめて欲しい。







「ちょっ・・・・ひどない?」


「お前はもうしゃべるな。」







間髪いれず跡部が忍足を黙らせる。



忍足って、やっぱりオタクなのかな?



そんなこと考えていると、跡部が口を開いた。








「金塊、札束。」


「・・・・それはこの箱を置いたのが跡部だったときだけだよね。」


「20点。」








誰が跡部を採点したかといえば宍戸。



そんな宍戸の勇気ある行為は、跡部によって睨まれるけど、



よくがんばったと私としては拍手を送りたい。






さんは、パンドラの箱の中身、なんだと思います?」


「私?・・んー。」









最後かぁ、・・・・きついな。









正直そう思いながら、パンドラの箱を凝視した。



みんなの視線は私に集中する。



目の前にある箱、大体なんでパンドラの箱って書いてあるんだろう。



けして開けてはならない箱ってことでしょ?



・ ・・テニスボールは、この場にふさわしすぎる。



ここはテニス部の部室だし。



でもこの箱に入ってるというなら似合わないことこの上ない。



豪華絢爛な彫刻。



・・ ・本当にふざけた箱。



長太郎の言うとおり、置いていった人による。



でも、テニス部の誰かがおいたなんて、このパンドラの文字からは考えたくない。



ふと、私の頭に浮かんだのは彼ら、テニス部レギュラーのファンの女の子達。



これがファンからの贈り物だとしたら、



そしたら岳人のお菓子もありだ。



・ ・・・忍足はスルーとして、跡部の回答もこの金持ち学校の生徒ならありえるかもしれない。



テニス部への寄付とかね。



ジローちゃんは確か・・・・。





「・・・・さん?」


「・・・・・そういえばさ、この間忍足と跡部が女の子泣かせたって聞いたんだよね。」


「あん?」


「なんや、いきなり。」





2人ともそれぞれ告白してきた女の子をふったとかで、



その子達を泣かせたとか。



・ ・・跡部や忍足だけじゃない。



みんなモテる。



泣かせた女の子なんて星の数なんじゃ・・・。








「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・爆弾、とか。」


「「「「「・・・・は?」」」」」








ジローちゃんに限りなく近い答えを導き出した私。



だって・・・だってだよ・・・・?







「・・・みんなのファンの子達の復讐とか、なーんて。あはははは。」


「「「「「・・・・・・・・・・・・」」」」」







・ ・・うわー。みんな固まってる。



思い当たる節があるってことなのかな。



宍戸や長太郎まで冷や汗モノの話だったらしい。








「かっ・・・かかってこいよ!おらぁああ!!」



「宍戸さんっ・・・落ち着いてください!」



。俺が死んだら花葬がいいな。」



「えっ火葬だよね?火葬だよね?」



「・・・あーなくはない話だよな。」



「・・・はぁ、跡部。モテるって罪なんやなぁ。」



「・・・やっと逝ったか、忍足。」

「まだ逝ってへんわ!!」








パンドラの箱に威嚇し続ける宍戸。



宍戸を落ち着かせようと必至の長太郎。



あたしに抱きついてきたジローちゃん。



妙に納得の岳人。



オタク忍足。



忍足を亡き者にした跡部。








みんな自由だ。








えっと、こんなとき私が言うべきは・・・。










「だっ大丈夫!みんなが死んでも私は楽しく生きるから!!」



「「「「「・・・・・・・・・・」」」」」









ぐっとガッツポーズして伝えたけど、私の言葉がうまく伝わなかったのか、



みんなが私を細い目で見てる。



・ ・・いえ、安心して欲しかったんだけど。



そんな目じゃなくてね。



みんなが慌てる中、跡部が1人冷静に言う。



腕を組み、パンドラの箱を見つめ。








「テニスボール、模型、書物、食い物、眼鏡の趣味・・・・」


「あっ・・・跡部?」


「他人のハッピーエンドこそ世の中つまらねぇものはねぇ。」


「・・・ただの最低発言やん。」







私的に気になったのは眼鏡の趣味という発言だけど。



それって忍足のこと?忍足のことだよね?



みんなは跡部を見つめる。



跡部はといえば、挑戦的な目をパンドラの箱に向け、



試合のときに見せるような、あの余裕の笑みで笑い。







「藁人形?生物兵器?金塊?爆弾?・・・上等じゃねぇか。」







金塊は違う。



・ ・・あー、突っ込むのって面倒くさい。



すると跡部がごそごそと、制服のポケットを探り出した。






「(?)・・・あとっ・・・」


「・・・・・引け。」






跡部の手には、7本の短冊切りになった紙。



それを見て予想されるのは、その正体がくじ引きだと言うことだけで。



・ ・・・一体いつから準備してたんだろう。



みんなは疑い深く跡部を見るけど、跡部は挑戦的に笑うだけ。



我らが部長の発言は絶対。



忍足が深い溜息をついて、跡部の手にある一本を掴む。



まだそこから引き抜かず、みんながくじを選ぶのを待っている。



次に跡部に歩み寄るのは宍戸。



忍足と同じようにくじを一本選ぶと掴んだまま、いまだ引き抜かない。



続いて、岳人が、ジローちゃんが、長太郎が。



最後に残ったのは私で、みんなが私をじーっと見る。



私はパンドラの箱に一度視線を送ると、跡部に歩み寄り、



みんなが握っていない残された2本のうち、1本を選択した。



残った1本は必然的に跡部のものになる。



跡部がにっと笑う。








「当たりは先が赤くなってる。」


「・・・・・ある意味はずれくじやけど。」


「いくぜ?」








さぁ、開けよう。









パンドラの箱を。



みんなで目配せをして、強く強くうなずくと、みんなでいっせいにくじを引く。



くじをひくとき、ぎゅっとつぶっていた目をあけて、



目の前のくじを確認した。







「・・・赤くない。」







なら、当たりくじ・・・もとい、はずれくじは誰が?



部室中を見渡せば、みんなの視線はたった一人に向いていた。



その人の周りだけ不穏な空気が漂ってる。












































「・・・・・・・・・俺やん。」

































































跡部がにやっと笑った。



落ち込み、肩を落とす忍足の肩にそっと手をのせる。






「・・・跡部。」


「さっさと逝け。」







・ ・・えっと誤解がないように訳します。



跡部は遠まわしにパンドラの箱を早く開けるように忍足に言ってるだけであって、



けして死ねと言ってるんじゃないんです。



・ ・・・あれ?そうだよね?そうだよね?



なかなかその場から動かない忍足。



私はパンドラの箱の話を思い出す。



・・・あれ?この世の災いが入っていた箱。



確かパンドラはびっくりして慌ててその箱をしめて・・・・。









「・・・確か、パンドラが慌てて箱を閉めたから、箱の中には希望だけが残ったんだったよね。」



「(!)・・・・・。」



「きっ希望だといいね!忍足!!」



「まっ一度開けられたパンドラの箱ならな。」



「・・・・・・・・・・」


















だから、空気読めよ。


















跡部の余計な一言に、忍足は深く深く溜息をつく。



けれど、赤い色がついたくじを引いたときから覚悟を決めていたのか。



忍足はパンドラの箱を見据えると、誰よりも近くにそのパンドラの箱を引き寄せる。



ごくっ



誰もが息を呑み。







「・・・ほな、いくで。」







誰もが急いでもの影に隠れた。



爆弾の可能性は否めない。








「・・・・おい、こら。」



「大丈夫っ!忍足のことは絶対忘れないからね!!」



「全然うれしないわ、ジロー。」



「さっさと開けろ。」



「・・・跡部。死んだら化けて絶対お前の枕元にでたるからな。」








ごくっ



誰もが息を呑む。



誰もが物陰に隠れ、忍足を見守る。



・ ・・中身、なんなんだろう。



本当に爆弾だったら、忍足は・・・。



でも、お菓子かもしれない、テニスボールかもしれない。



でも、もし忍足が死んじゃったら・・・・。
















「だっ騙されないんだからっ!まさかの忍足落ちはないからねっ!!」


「・・・何の話や。」














忍足が、ゆっくりとパンドラの箱を開けた。



‘パンドラの箱’



そう書かれた紙がぺらっとめくれる音がした。













「「「「「・・・中身は?」」」」」












全員が物陰から、パンドラの箱の中を見つめる忍足に投げかける。



箱の中に、忍足が手を伸ばす。
































































「・・・手紙やな。」



「「「「「手紙?」」」」」

























































忍足がパンドラの箱から手を出すと、その手には、白い封筒。



みんなは、ぞろぞろと物陰からでてきて、



再びパンドラの箱の元に集合する。



パンドラの箱の中は真っ赤なフェルト生地。



その中身は空っぽ。



つまり、忍足が手にしている封筒以外はいっていなかったことになる。







「・・・手紙、なんて?」



「ちょっと待ってな。」







かさっ・・・。



忍足が封筒をゆっくりと開ける。



みんなはその封筒に注目し、忍足が手に広げた手紙を覗き込む。










「・・・・・・あん?」










跡部が、忍足の手から手紙を奪って睨むように文字を追う。










































































‘神々からすべてを与えられたパンドラには、様々な感情があった。



恐怖、好奇心、自制心、探求心・・・・。



そう、言葉にすれば様々だ。



パンドラの箱を与えられ、パンドラは災いを世界にまいてしまったが、彼女は成長もした。



どんな困難があっても、災厄があっても、希望を箱の中に残すことができたからだ。



今回この箱をお前たちに渡したのは、お前たちの心と闘って欲しかったからだ。



これを開くも開かないもお前達次第。



だが、もし開けることになっても、それまでの過程には自分との葛藤、仲間との葛藤があったはず。



パンドラと同様、この箱で少しでもお前達が成長するよう、それを願っている。



開けた箱の中に残るのが自分たちの葛藤の末に見い出した希望なら、これほどいいこともない。



以上だ。



行ってよし。’




















































































「「「「「・・・・・・・・・・」」」」」




















・ ・・太郎か。



















びりびりっ・・・・



跡部は力一杯手紙を破いた。






「・・・跡部、落ち着けや。」


「希望なんか残るか!」


「・・・監督。ゼウス気取りたかっただけじゃ・・・。」


「しっ宍戸さん!それ以上はっ・・・!」


「・・・よく考えればこの箱も監督の趣味だよな。」


「・・・・・・・・・・・ぐー。」


「ジローちゃんっ!まだ寝ないで!!家に帰ってからにして!!」






行くならお前が逝け。



誰もが太郎にそう思った。



この日を境に榊太郎(43)。



レギュラーから白い目で見られるようになり・・・・。











































「行ってよし!」




「「「「「「(・・・・・・・逝ってくれ。)」」」」」」















































































































パンドラの箱の中身は災厄。



最後に残ったのは希望。



今回のパンドラの箱に残ったのは、一言で言えば、



太郎への嫌悪感でしかなかったけど。

















































































教訓:開けちゃいけない箱もある。















































終われ。