It brings a tears into my eyes.




When I begin to realize.




I‘ve cried so much.




Since You‘ve been gone.




I guess, I‘m drowing in my own tears.










































『落花生』










































「っ・・・・跡部先輩!!」





朝、HRが終わって授業が始まる前。



血相を抱え、息を切らした鳳が泣きそうになりながら



俺の教室に飛び込んで来た。





「あのっ・・・」


「なんだよ。・・・何かあったのか?」





座っていた席から立ち上がり



教室の入口付近で何かを必死に伝えようとする鳳に近付く。





「なんや?なんかあったん?」





同じクラスの忍足もが鳳の様子を不思議に思って



鳳に近付いてきた。





「来てっ・・・ください!早く!跡部先輩!!俺の教室にっ・・・」





鳳が走り出す。



近くにいた忍足と目を合わせて俺は走り出した。



鳳の様子があまりにおかしい。



廊下を駆け抜けて行く俺と鳳を生徒たちが不思議そうに見ていた。




(鳳のクラス・・・)




・・・確か。



確か。
















「・・・・・・・・・・・・・・・」













ひらり。












「・・・っ・・・交通事故で・・・昨日っ・・・」










見慣れた席があった。



鳳のクラスの一番後ろにある席だ。



俺はあいつがいるこのクラスに



時折、来ることがあったから。



見慣れた席があった。



机の上に一輪挿し。



それに入った白い花びらの花が



花びらを一枚、その机に落としている瞬間を俺は見た。










「・・・・・」




「跡部先輩っ・・・が・・・亡くなったそうです・・・」










見慣れた席があった。



見慣れた姿はそこにはなかった。



代わりに



見慣れない花がそこにはあった。



が、死んだと



鳳は言った。






「・・・・そうか」



「・・・・・・・跡部先輩・・・」



「・・・・あいつ、死んだのか」






鳳のクラスの周辺は静かだった。



クラスの目も廊下の目も



すべての視線はどうやら俺にあるらしい。



俺は鳳の教室に足を踏み入れることなく



その白い花を目に映し。






「HRで聞いたのか。わざわざ知らせに走らせて悪かった」






鳳は



唖然としていた。



さきほど見せたつらそうな表情はそこにはない。



俺はもう一度白い花に一瞥すると



鳳を見ることなく踵を返して



元来た廊下を進み始めた。





「(!)っ・・・それだけですか?!それだけなんですか?!跡部先輩!!」





やけに静まりかえる廊下で



鳳の俺の背中に向けた声が響いた。



足をとめ、振り返り。





「・・・俺に何をしろって?」


「付き合ってたんですよね?!と・・・・。はっ・・・死んでしまったんですよ?!」


「・・・・そうだな」


「・・・そうだなって・・・・」





鳳は困惑の表情で俺を見続けていた。



俺の言動に不審を覚えるようなそんな目を向け。



しばらく合わせた視線は



鳳が俺に問いかけるのをやめたことで俺からそらす。



再び進める足。















「跡部先輩」














見慣れた姿はいなくなった。




(だから)




だから今朝



いつも部活を見に来るの姿がなかったのだと



妙に納得しながら。











「あのっ・・・好きになってくれませんか?」











震える手を握り締め



震える声で。



言葉はずうずうしく思えても



なんとも自信なさげなの姿に俺は小さく笑った。





「・・・・させてみせろよ」





それが



から俺への告白だった。































「なぁ、2年の跡部と付き合ってた女子、死んだんだろ?」


「あれマジなんだよな。よくいつも通りまわりに女はべらせて平然としてられるよなぁ」


「付き合ってたって言ってもどうせ遊びだろ?」


「さすが跡部様」

































こそこそと



ざわめく周囲に



時折俺の名前との名前が聞こえた。





「やだなぁみんな。陰口なんか言っちゃって。跡部の彼女なんか不特定多数だっての!」


「そうだよねぇ跡部。あっでもやっぱり悲しんでたりする?2年のあの純朴そうな子でしょ?」


「・・・・・」


「ねぇ景吾。そんなことより遊ぼうよー。部活暇なときいつ?」





窓際の一番後ろにある俺の席の回りで



女共が騒ぐ。



俺が席に座り無言でも



勝手に話は展開し、進んで行く。





「ひでぇよな、あんな平然として」





影でこそこそと俺の名前を出す奴等。





「あたしだって景吾の彼女でしょー?」


「くすくすっ」





耳が痛くなるような声で



俺にたかる女。



どちらもただひたすらうるさい。









「跡部先輩」









・・・寄せては返す記憶の波が



雑踏にまぎれる。















































































































































































































朝の部活帰りに声をかけられる。



あやふやな約束の確認にその女は来らしい。





「えー!景吾土曜ならいいって言ったじゃない!」


「予定なんて未定にすぎねぇだろ?変わるんだよ」





俺がどんな女といて



どんな会話をしていても



そのときちょうど目が合っても





「・・・・よぉ、


「・・・おはようございます、跡部先輩」





は俺に笑った。



たとえ以外の女が俺の隣にいても。



俺は、その理由を知っていた。





「跡部先輩。今日練習見に行ってもいいですか?」


「・・・聞かなくても見に来ればいい」


「・・・はい」





嫌がった。



は俺に嫌われることを嫌がった。



嫌われないように、俺が嫌がることをしないように



精一杯怯え、



俺に嫌われないように必死だった。



笑いつつも、が傷ついていたのを知っていた。







「・・・


「・・・なんですか?」


「俺にお前のこと好きにさせるんだろ?そんな自信がねぇ女に俺はなびかねぇ」


「(!)っ・・・・・がっがんばります!!」








わかりやすい奴。



くるくるとよく表情の変わる



傷ついた笑みは俺の一言に左右され



素直すぎるは本当に、心からの笑顔を見せる。











































































































































































































































































































「あっとべー!」





抱き付かれそうになった俺は



そいつが飛び付いてきたのをよけた。



俺がよけたその場に身軽に着地した金髪は立ち上がって



俺に再び抱き付く勢いで近付いた。





「・・・なんや、元気やなぁジロー」


「跡部!跡部!!聞いたよ!!いつも練習見にきてくれてた子、死んじゃったの?!」





昼時の屋上。



乾いた空気と曇一つない空。



先にいた俺と忍足を抜かして



ジローのあとから向日、宍戸、鳳が順々に屋上の扉をぬけ姿を見せた。



鳳と目が合うがすぐにそらされる。






「・・・ああ。本当だ、ジロー。さっさと俺から離れろ。近い。」






ジローが俺の答えに一度目を合わせると



すぐに俺の目の前から一歩後退した。





「・・・・跡部、お前なんかいろいろ陰で言われるぜ?ひどいだの冷たいだの」


「・・・勝手に言わせとけよ、お前に関係ねえだろ?向日」


「お前っ・・・!人が心配してやってんのになぁ!!」


「まあ落ち着けや。岳人。」





和やかなはずの昼休みが一瞬にして険悪に変わる。



向日の声に周囲の生徒たちは俺たちに注目し、



会話を止めていた。



俺のことだ。



間違っていない。



どいつもこいつも放っておけばいい。



騒がれることには慣れている。



陰口など気にする必要もない。






「・・・遊びだったって本当かよ。」






沈黙を破ったのは宍戸だった。



鳳が隣でしっかりと俺を目に映し。



俺は一つ、溜息を落とす。



宍戸と鳳を目に映し。



どいつもこいつも放っておけよ。



俺のことだ。





「・・・この話この辺で終わりにしようや。飯食おう、な?」


「忍足!跡部が関係ねえって言っても関係あるんだよ!俺たちの大将が一日中陰口たたかれてるんだぜ?」


「・・・・・・・そんなこと言ってもしゃーないやん、宍戸。」





ジローが、向日が、宍戸が、鳳が忍足を見た。



忍足がゆっくりと俺に顔を向け、目を合わせる。







「・・・・・・・・・遊び、だったんやろ?跡部」



「・・・ああ。本気になんかなるかよ、この俺が」







静まり返った屋上で。



忍足と俺の目だけが合っていた。



向日がその場に腰を下ろし、昼食を広げはじめ、



宍戸が大きく溜息をついた。



俺は忍足から視線をそらし、その場に腰を下ろす。



しまいには、この場にいる全員が腰をおろし、



無言のうちに昼食を始める。





「・・・でも、きっと」





ジローが静かに口を開く。






「きっとあの子は跡部のことが真剣に好きだったよね。いつもちゃんと跡部のこと見ててさ。」




「なんだか、疲れてますね。」




ちゃんだっけ。きっと跡部のこと、大好きだったよ。」


「・・・・・・・・・・・・・・・・」





知ってた。



知っていた。





「・・・・・・・・・・・鳳。」


「・・・はい」


「・・・・・花、の机においてある」





俺は鳳を見なかった。



鳳は確かに俺のほうを見ていただろうが俺は視線を下に落とし、



屋上の床を見ていた。





「あの花、今日中に散り終わる。」


「新しい花を?」


「・・・・・・・ああ。」





ひらり。



俺が目にした花びらが散る瞬間。



あまりにはかなく。



鳳が俺の言いたいことを理解する。



宍戸が小さく、それくらいてめーでやってやれよと言ったのが聞こえた。





―新しい花を、あの机の上に。―





‘きっと跡部のこと、大好きだったよ’





知っていた。



そんなこと、わかっていた。







「なんだか、疲れてますね。」


「・・・・・・・・・・・・・・・・誰が」


「跡部先輩です。他に誰が?」







実感はあっても自覚はなかった。



その時は俺とは生徒会室の隅に置かれたソファに座っていた。



他の誰からも言われたことのない言葉は、だからだと思った。





「・・・・・俺が疲れているように見えたのか?」


「・・・・・・・気のせいだったらいいです。」


「・・・へぇ」


「跡部先輩?」





は俺をよく見ていたから。



俺は、隣に座るの顔を覗き込むと



手にしていた生徒会の書類を手放し、



自分の頭をの膝に預ける。





「えっ?あのっ・・・跡部先輩っ・・・・・?」


「・・・・10分間だけ寝る。10分たったら起こせよ。」


「・・・・・あのっ・・・・・」


「疲れた・・・・・。」


「(!!)」





笑顔が、降ってくる。




(わかりやすい奴)




心からの笑顔。



傲慢な他の女子とはまったく違った。



どこまでも素直で。



側にいて、楽だった。



わかりやすくて、かざりっけのない言葉。



真っ直ぐな想い。





「・・・


「なんですか?」


「なぜ、俺なんだ?」





聞きたくなって、聞いた。











































































































































































































「跡部!」


「・・・なんだよ」





屋上の階段を他のレギュラー陣より一足早く降り始めた俺を



忍足が後ろから追いかけてきた。



俺と忍足は踊り場で足を止め。





「・・・俺は、お前が平然としてるなんて思ってへん。」


「・・・・・・・・・・・・・・・」





は俺に嫌われることを嫌がった。



嫌われないように、俺が嫌がることをしないように



精一杯怯え、



俺に嫌われないように必死だった。



笑いつつも、が傷ついていたのを知っていた。





「確かに、お前女好きやし、彼女を名乗る子もいっぱいおるし」


「・・・・・・・・・・・・・・・・」


「でも、その彼女の名目が長く続いていたのは、ちゃんだけやったやないか。」





わかりやすい奴。



くるくるとよく表情の変わる。






「・・・・・・本当は好きやったんちゃうん?」






・・・・・・・・・・・・・・違う。



ただの遊びだ。



人に依存するなんて、人に固執するなんて






「俺が本気になるはずねえって言ったろ?」


「・・・・・・・・さよか」






そんなこと俺にはない。

















「・・・


「なんですか?」


「なぜ、俺なんだ?」


















次の授業は英語だった。



ちなみに忍足は俺の隣の席だ。





「今日は教科書にのってる洋楽を聴いてみたいと思います。教科書58ページをひらいて。」





中年の英語教師はCDのデッキを弄り、



CDをセットした。



今、教科書で取り上げられているのはある外国人歌手の半生。



その歌手が書いた歌の歌詞が教科書に載っていてその歌を聴こうというわけだった。












「・・・・・・跡部先輩って冷たいって言う子がたくさんいたんです。でも私はそうじゃないと思いました。」



「・・・・・・・・・・・・・・・・」



「たくさんのものを背負ってて。本当は優しくて。」












打算的になんてけしてなれない奴だった。



かざりっけなんかなかった。



真っ直ぐだった。



いつも、そのままの想いをくれた。








歌が、流れる。













It brings a tears into my eyes.


When I begin to realize.













「・・・・・もう、やめとけ。」


「・・・・・え?」


「俺はお前の思ってるような奴じゃない。」








の膝から、頭をあげ、



を目に映し。



するとは真っ直ぐ俺を見返してきた。












I‘ve cried so much.












「・・・ダメですか?」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


「好きだと思ったから好きになって欲しいと思ったんです。」








素直すぎるんだよ、お前は。



打算的になんてけしてなれない奴だった。



かざりっけなんかなかった。



真っ直ぐだった。



いつも、そのままの想いをくれた。



わかりやすい奴だった。



一緒にいて楽だった。














Since You‘ve been gone.



I guess, I‘m drowing in my own tears.














震える手を握り締め



震える声で。



言葉はずうずうしく思えても




























「跡部先輩、私のこと好きになってくれませんか?」




























































それは、素直ならしい真っ直ぐな告白。





「・・・・・・・・・・・・・・・」


「・・・・跡部?」





It brings a tears into my eyes.


(涙があふれる 僕の目に)


When I begin to realize.


(ようやく 気付いたんだ)


I‘ve cried so much.


(泣きじゃくったよ)


Since You‘ve been gone.


(きみがいなくなって)


I guess, I‘m drowing in my own tears.


(僕の涙に 溺れそうだよ)


When I begin to realize.


(ようやく 気付いたんだ)


Since You‘ve been gone.


(きみがいなくなって)


I guess,


(僕は)






























































































































































































































































































































I loved you.

(君を 愛してた。)
















































































































































































































「あと・・べ・・・お前・・・・」




俺の隣の席の忍足が俺を小さく呼んだ。



目にうつしていたはずの英語がにじんだ。



頬が濡れ、雫が手の上に落ち、





涙が、あふれた。





「っ・・・・・・先生!跡部が具合悪そうなんで保健室つれてきます」


「えっ?はい、かまいませんよ。跡部くん大丈夫ですか?」





忍足が教卓の教師に向かって教室からでる意思をつげる。




(・・・ばかやろう)




そんな忍足のせいでクラス中の視線はおれへ。



俺は口元を片手で押さえうつむき、すぐさま席から立ち上がる。





「跡部・・・」


「いい・・・来るな。一人で行ける。」





忍足の顔を見ず、俺は足を進める。



髪が表情を隠してくれる。



教室の一番後ろを通って教室から出て行く。



俺が廊下に出るまでクラス中の視線は絶えず俺にあった。



いつの間にか俺は自分の胸を押さえていた。



ある程度教室から離れ、人影のない廊下で立ち止まる。










「っ・・・・・・・・」










涙が、今までの何倍も、何十倍もこみ上げてくる。



口元に手をあて、締め付けられるような胸の痛みを手で押さえ、声をかみ殺していないと



自分を保っていられなかった。



そうでもしていないと



このまま、この場に泣き崩れてしまいそうで。



胸が痛かった。





っ・・・・・・」





いつから、こんな。



こんなに、俺の奥に



お前は入り込んだんだ。



どこまでも素直で。



側にいて、楽だった。




















もっと側に、いたかった。

















「あのっ・・・好きになってくれませんか?」







「(!)っ・・・・・がっがんばります!!」








「跡部先輩」
















記憶を辿るように、に向かって歩いた。



締め付けられる胸の痛みに、耐えながら。














「なんだか、疲れてますね。」








「たくさんのものを背負ってて。本当は優しくて。」

















It brings a tears into my eyes.



When I begin to realize.



I‘ve cried so much.



Since You‘ve been gone.



I guess, I‘m drowing in my own tears.
















「好きだと思ったから好きになって欲しいと思ったんです。」















たどり着いたのは、



今の授業の時間は移動教室なのだろうか。



誰もいない、のクラス。






「・・・・・・・・・・・・・・・・・」






見慣れた席。



見慣れた姿はそこにない代わりに見慣れない花。



その花が、最後の花びらを落とすまさにその瞬間だった。













When I begin to realize.



Since You‘ve been gone.



I guess,















「っ・・・・・・・・・・





の机に落ちた花びらを抱きしめた。



小さな花弁を手を重ね、胸に置き。


















「跡部先輩、私のこと好きになってくれませんか?」
















I guess,I loved you.














「っ・・・いなくなってから・・・・・気付かせるなよっ・・・・・・・・」












頬を伝い、床に落ち、手を濡らし、



それでも涙が止まらない。



どこまでも素直で。



側にいて、楽だった。



もっと側に、いたかった。








っ・・・・歌が聞こえるか?・・・・・・」








俺のことだよ。



あの歌は、俺のことだ。



俺はお前みたいに素直にはなれない。



だから俺の代わりにあの歌から聞いて欲しい。



手のひらの花弁にそっと、口付ける。



聞こえるか?





「あのっ・・・好きになってくれませんか?」





見事だよ。



いつから、こんな。



こんなに、俺の奥に



お前は入り込んだんだ。



いつから俺の心は、奪われていたんだ。



人知れずの涙はとめどなく。



が残したこの想い。



抱きしめる花弁にたくして。



















It brings a tears into my eyes.


(涙があふれる 僕の目に)


When I begin to realize.


(ようやく 気付いたんだ)


I‘ve cried so much.


(泣きじゃくったよ)


Since You‘ve been gone.


(きみがいなくなって)


I guess, I‘m drowing in my own tears.


(僕の涙に 溺れそうだよ)


When I begin to realize.


(ようやく 気付いたんだ)


Since You‘ve been gone.


(きみがいなくなって)


I guess,


(僕は)



























































































































































































I loved you.

(君を 愛してた。)



























































end.