「仁王先輩さっきから誰とメールしてるんすか?」
「んー?。」
『翼の生える位置5』
朝の部活前にも
部活後にも
こうして仁王先輩のクラスに遊びに来た休み時間にも
珍しく人前で仁王先輩が携帯をいじっていた。
廊下側の仁王先輩の席に仁王先輩は腰掛けて。
俺は廊下側の窓から顔を出すようにして仁王先輩に話しかけていた。
「?」
「赤也、次の授業は?」
「英語っすけど」
「あーじゃあダメじゃ」
「ちょっと何すか。気になる。」
「次の時間、が屋上にいるって。俺は一緒にサボるとよ」
・・・思ったけど
「幸村部長も他の先輩達もに甘くないっすか?」
「特別だからのぅ、は。」
特別?
先輩達にとって特別の。
じゃあ俺にとってのは?
「(友達・・・?知り合い止まり・・・?)」
「そうじゃ。赤也。」
「・・・なんすか」
思いついたような仁王先輩の口調。
ちょっと怖い。
何を思いついたんですか、ぺてん師。
「赤也、にメールして。」
「俺が?」
「それでから承諾が得られたら一緒にサボろ。」
ぺてん師先輩。
俺にその口調でも全然かわいいとか思いません!
「別にから承諾得なくてもサボったって・・・」
「メールして。」
携帯をいじる仁王先輩。
俺の制服のポケットに入っていた携帯が震えた。
仁王先輩からメール。
「・・・仁王先輩。」
「それがのアドレスと電話番号。」
俺の携帯のディスプレイには開かれたメール。
のものらしいアルファベットと数字の羅列。
仁王先輩を見る。
携帯を見る。
仁王先輩を見る。
携帯を見る。
仁王先輩を見る。
仁王先輩が口パクで俺に言う。
メ・ェ・ル・し・て。
メールしなきゃきっと
悲惨な未来でも待ってるんじゃないかと
本気で思った・・・。
最初にに送ったメールは
アドレスは仁王先輩から聞いたことと
‘俺もサボっていいですか’
ってなぜか敬語で質問。
俺の携帯は一分と待たずに震えた
「なんじゃって?」
「・・・・・」
‘次の授業が英語じゃなかったらいいよ’
からの最初の返信。
なんだよ、。
仁王先輩と同じ思考回路かよ・・・
でも英語正直でたくねぇと思ってたし。
‘サボる。’
に送ったメール
‘英語でしょ。’
から返信。
は確信犯だった。
「・・・仁王先輩。俺サボります。」
に承諾はとれません。
だってあいつ確信犯。
「なんて?」
「次が英語だったらダメだってきました。でも俺サボりますよ。」
英語嫌いだし。
俺苦手なんじゃなくて、嫌いなだけだから
英語。
「まっいいか。行くかの。屋上。」
仁王先輩のクラスの教室を仁王先輩の後に続いて俺も離れた。
屋上に続く階段。
は携帯をいじってそこに立っていた。
手すりに寄りかかっている。
「赤也。来ちゃったの?」
「英語嫌いなんだよ。苦手じゃなくて。」
「くくっ。そう言うことじゃ、。」
仁王先輩がの横を通って屋上のドアの前に来る。
そのドアのノブを握って右足でドアの左下を蹴りながらノブを回す。
屋上に続くドアが開く。
立ち入り禁止の屋上は入るのに少しコツがいるんだ。
俺も仁王先輩に続いて屋上のドアを通り抜けようと
を通り過ぎようとした。
「ねえ赤也。またメールしてもいい?」
の前にいる俺。
「別にかまわねぇけど」
「じゃあ、赤也。メル友ね。」
うれしそうなの笑顔に
俺の時間は止められて
動けない俺は取り残され
が先に屋上のドアを通った。
「メル友?」
遅れて屋上にでた俺に屋上の入口近くのフェンスに体を預けていた仁王先輩が
聞こえていたくせにからかう笑いで聞いてきた。
「・・・いじわるっすね、仁王先輩。」
仁王先輩が静かに笑う。
瞼を閉じて、腕を組み、フェンスに体を預けたまま。
は入口から一番遠く離れて
屋上のフェンスの外を見ているようだった。
顔が見えないから表情はわからない。
俺は仁王先輩をもう一度見た。
(俺とが連絡とれるようにさせたかった訳?)
変わらずに瞼を閉じている仁王先輩を見て
漠然と浮かんだ考えだった。
この人は無意味なことは好まない。
何をするにもいつだって意味がある。
それが俺の知っているぺてん師だったから。
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