「俺一人じゃ何もしてやれないんだ。」
初めてが俺達に会った日に幸村が言った。
いや、幸村が俺達にを会わせた日と言うべきか。
「だから、一緒に支えてやってくれないか?」
『翼の生える位置9』
色素の薄い茶色い髪や整った顔と裏腹に
そこにいるのに
確かにそこにいるのに
そこに存在していないような目が印象的だった。
「」
「仁王先輩だ。どうしたの?」
保健室の一番奥のベッド。
いつからかの指定席で
うちの学校の保健医はいい加減で保健室にいないことが多い。
今日も保健室は一人。
俺たちと出会ってしばらく経っては学校に来なくなった。
「仁王・・・は・・・」
幸村が俺だけにの秘密を話してくれた。
俺は目敏いからいろいろ気付いてくれそうだと笑って言った。
幸村が泣きそうに笑って言った。
「、脱げ。」
「・・・は?」
「脱げ。」
が座る保健室のベッドに俺は近付く。
「」
「ちょっ・・・仁王先輩!!」
ベッドに座るを追い詰める
俺もと同じベッドに腰を掛け
の制服に手を掛ける
「ごめん、」
「仁王先輩っ・・・」
制服の間覗いた白い肌
それと
にごった色をした
黒や赤や青いアザ。
「、これどうした?」
「な・・・んで・・・」
「足を引きずってた日、あったじゃろ?あの日から違和感が離れなかった。」
の制服から手を離す。
突然学校へ来なくなる前もそうだった。
はどこにいてもすぐに座りこもうとしていた。
最近もそう。
保健室も屋上もつけばすぐに座る場所を探していた。
それは意識的なものだったのか。
無意識的なものなのかは知らないが。
歩く時も体全てをかばうように歩いているように見えた。
体中が痛くて仕方がないとそんな風に見えた。
「、お前さんいじめられとんの?」
「・・・・」
「。」
「俺一人じゃ何もしてあげられないんだ」
泣きそうに笑う幸村。
俺は目ざといから何か気付いたら手を差し出してやってほしいと
あの幸村が俺に頭を下げた。
「、答えんしゃい。」
「精市には・・・・言わないで・・・」
「・・・・。」
「精市には言わないで!!」
「お前さんを一番心配しとるのは幸村じゃ。」
いや、今はもう一人いる、か。
「言わないで・・・お願いだから・・・・」
「・・・・・」
肯定も否定もしない。
でもそんなに必死になるってことは俺の問いは肯定されたようなもの。
「誰にやられた?」
「よくわかんな・・・名前も学年も知らない。」
「・・・・・」
「何もしないで。」
「え?」
「仁王先輩も知らないフリしてて。・・・・このままでいい。」
「いいわけなか」
「誰にも、言わないで」
お前は何をそんなに怖がる?
「あれ?仁王先輩もいんの?」
聞こえてきた明るい声は赤也だった。
はすばやく制服の乱れを直す。
「赤也どうしたの?」
明るい声色になった。
(赤也か・・・・)
俺たちに会ってある日突然学校に来なくなったゆうが
赤也に会ってから学校に来るようになった。
「仁王、を赤也に会わせたらどう思う?」
聞かれた質問に答えようがない。
「幸村がいいと思ったらそうすればよか。」
「ふふっ。・・・赤也ならを・・・・救ってくれそうだと思ったんだ。」
(赤也か。)
「、俺は教室戻るとよ。」
「え?」
ベッドから立ち上がった俺。
「内緒にしておく。安心するきに。」
人差し指を自分の口元に当ててに笑って見せた。
「赤也」
「はい?」
「がんばれ」
「は?」
保健室から出て行く途中で赤也の肩を軽く叩いて一声かけた。
幸村自身がの秘密をきっと赤也に話していない。
お前に自分から気付いてほしいんじゃ幸村は。
の寂しさに。
早く気付け赤也。
そしたらきっとが本当に怖がっているもの壊してやれる。
幸村、どうやらに何かしてやれるのも支えてやれるのも
赤也だけみたいだ。
立ち去る保健室からゆうと赤也の笑い声がした。
(とりあえずをいじめてる奴探し出すか。)
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