「存在の・・・否定・・・。」








俺の一言は生まれたしばらくの沈黙に吸い込まれた。







「それが・・・が登校拒否になった理由っすか?」


「・・・もう一つある。」


「仁王。」


「すまん、幸村。のことで言ってないことがある。」








仁王先輩が話始める。



幸村部長が話したのとは違う



もう一つのの真実。



















『翼の生える位置15』















「・・・いじめ?」


の体にあざがある。転んだだけじゃ説明がつかんようなあざが。」





俺の隣に座っていた仁王先輩は無表情だった。





に手を出してる奴は大体見当がついた。確定はできんが」





淡々と話す仁王先輩。



いじめ?



あざ?



知らない。



気付かなかった。





「赤也」





幸村部長が俺を呼んだ。





「知らなかったのは俺も同じだ」


「幸村部長」





切なそうに笑う。



のことを一番心配している人だと思わされる。





が言うなと言ったんじゃ。幸村に知られることを怖がってた。」


「怖がってた?」





どうして?



何がを怖がらせる?





「赤也」





いろんな情報が頭をめぐり



疑問は頭を浮遊する







まだお前について知らなきゃいけないことある気がする





「何すか。幸村部長。」


の家に行ってみてくれないか?」


「えっ・・・」





幸村部長からの急な提案。





「大丈夫。赤也なら」


「・・・・」





切なそうに笑う幸村部長



無表情に幸村部長を見る仁王先輩





「赤也じゃなきゃダメなんだ」


「幸村部長・・・」


「・・・行け、赤也。幸村がそこまで言うならお前じゃなきゃダメなんじゃ」


「・・・・」





仁王先輩は表情を変えた。



意地悪く俺に笑いかけてる





「いってらっしゃい、赤也」





いろんな情報が頭をめぐり



疑問は頭を浮遊する







まだお前について知らなきゃいけないことある気がする



会いに行って俺が何ができるわけでもないけど










会いたいんだ。









俺がまだ知らなきゃいけないこと



教えて欲しい。






































イスから立ち上がって駆け出した。



幸村部長の病室を飛び出て



途中、廊下で看護師に走らないで!って言われたのも



聞こえないフリをして。










































「赤也じゃなきゃダメ?そんなことなか。幸村、お前だって・・・」


「俺が入院して、初めてお見舞いに来てくれたを連れて来たのは、赤也だと聞いた」


「・・・・」


「俺じゃダメなんだ。は言ったよ。赤也に会わせてくれてありがとうって」


「・・・幸村」


「赤也なら、を寂しくさせない」


































































































どれくらい走った?



空は茜色。



の家の記憶は俺の家から



あの雨の日にを家に送ったあとの帰り道を今度は逆に辿る。



そう言えばあの日。



は何かにおびえていた。



必死に何度も俺に謝って。



雨なんか降ってないのに



雨の音が聞こえてくるのは、あの日の記憶がこんなにも鮮明だからか。





「・・・・あった。」





周囲の家よりはるかにでかい一軒家。



、一人でいるのか?


























足を進める。



の家は庭が広く少し歩かないと玄関にたどり着けない。



開いていたの家の敷地を囲む塀に



取り付けられた門を通った。





?」





の家の玄関の前で少し大きめに声をだして名前を呼んだ。



あたりは静まりかえり俺が動く度にする布ずれの音と



走って来たせいでする息切れの音しか聞こえない。





(玄関のチャイム・・・)





大きな玄関の外観にありそうな、なさそうなチャイムのボタンを目で探す。





<ブー・・・>





見つけたボタンを押せば、チャイムと言うよりブザーの音がした。





(。出て来いよ。)





<ブー・・・>





もう一度、ブザーの音。





(。)





広すぎる庭にブザーの音は吸い込まれる。



俺がを呼び出す音は



でかい家の中、に届いているのか。



反応のないブザー音。



俺は制服のポケットに手を突っ込んで、ケータイを取り出す。



ディスプレイにの名前と数字の羅列を表示させた。





(。)





通話ボタンを押してケータイを耳に当てて待つ。



の声が聞こえるのを。





<プルル・・・>





ケータイの呼び出し音。



一回。





<プルル・・・>





二回。





<プルル・・・>





三回。









「出ろよ、。」








時間が過ぎる。



かけ続ける電話。



聞こえてこないの声。






(出ろよ。)






空は暗い。





<プルル・・・>





留守電にさえ代わらないのケータイ。



何度目だ?



呼び出し音。










!!」








ケータイを耳に当てたままで玄関に向かって名前を叫んだ。








!!俺だよ!いるんだろ?!出てきてくれよ!!」







声は、暗闇と広い敷地に吸い込まれるばかり。



知らなかったんだ。



お前のこと、今までまったく。








学年一位。不登校。幸村部長の幼馴染。



笑顔。怯えた声。寂しそうな顔。



親権放棄。いじめ。







でも言ったじゃん。



風の強い屋上で、俺に会いに学校に来たって言ったじゃん。











俺も会いにきたよ。



会いに来たんだ。



に会いたい。だから学校にも来てほしい。



何かに怯えているなら、大丈夫だって側にいるから。



何かが怖いならそれから守ってみせるから。



でかい家の中、壁の向こう側。側にいるんだろ?



会いにきたよ。に。





!!」





応えてほしい。



こんなにも会いたいと願うから。





































































































『あか・・・や?』





鳴り続けたケータイの呼び出し音が止まった。





?」





聞きたかった。



の声が。





「・・・・、今お前の家の前にいる。でて来れるか?」





会いに、来たんだ。



に。

























end.                                            この作品が気に入っていただけましたらココをクリックして下さい。