「・・・・・・・・・おい。」



「・・・・・・・」



「おい、バカ也」



「・・・・・・」



「・・・・・・ばーか也」








(バシっ!!)








「痛っ!!」


























『翼の生える位置18』






























いきなりの頭への衝撃と遠くから聞こえてきた俺を呼ぶ声。



目を開けるとそこにはめちゃめちゃ間近にの寝顔。



俺はを抱きしめていた。





「え??あれ?バカ也って・・・・バシっって・・・」


「うるさいバカ也。が起きるじゃろが」





背後からの声の主はすぐに分かる。



横になっていた体をそのままに首だけを後ろへ。





「・・・・仁王先輩」


「おはよーさん、赤也。」





俺を見下ろす視線。



テニスバックを背負って制服に身を包み



片手を上げて挨拶してくれた仁王先輩。



・・・・あきれてる気がするのは気のせい?






「仁王先輩どうしてここに・・・。」


「聞こえんかった?赤也。おはよーさん。」


「・・・・・おはよう?」





おはよう・・・・って!





「今何時っ・・・」






(バシっ)





「うるさいバカ也。が起きるって言ってるじゃろ。」


「っ・・・!」





俺の頭に仁王先輩からの衝撃。



振り返っていた首は元の状態に戻る。



・・・・の寝顔が見えた。



残る涙の痕。








「・・・そっかあのまま2人とも寝ちゃったのか・・・・。」







が泣いて



俺はを抱きしめまま



そのまま2人で眠ってしまったらしい。







「・・・手だしとらんじゃろな」


「出してないっすよ!・・・・多分。」


「多分?」


「・・・・はい」





再び首だけを仁王先輩へと向ける。



抱きしめたままの寝息が聞こえた。






(良かった)






何に対しての安堵なのか、分からない。



ただ、良かったと、心の底から思える。



の涙の痕と寝顔がそう思わせる。





「そう言えば仁王先輩、どうしてここに・・・。」


「昨日の夜、お前さんの家からうちに電話があった。」


「・・・・・げ。」


「うまく言っておいたきに、昨日赤也は俺の家に泊まったことになっとる。」


「今、何時っすか。」


「朝、6:00」


「・・・・げ。」





気がつけばと一緒にベッドの上、寝ていた俺。



家に連絡をいれたはずもない。



の部屋のどこの窓の外もまだ暗い。



一晩中、を抱きしめたまま寝ていたと?



俺に向かっていろんなところからいろんな意味で拍手喝采だ。






「もともとの家の場所は幸村に聞いて知ってた。メールして一晩待ってもお前さんから返事はない。」


「・・・・」


の家へ来てみたら、鍵は開いてるし、何かあったのかと思って家に入ってみれば開いたままのこの部屋のドア。」


「ははっ・・・・・・」


「お前さん達が抱き合ったまま寝てた。」






これだけ話をしていては起きる気配を見せない。



しばらくろくに寝てすらいなかったのかもしれない。






「そっから見えないかも知れないっすけど・・・・・の左頬、赤く腫れてるんです。」


「・・・・・・」





は体の左側を下にして眠っているから左頬は見えない。










「見られて、いじめられてることに気付かれたくなかったみたいで・・・。」










気付かれて、迷惑だと嫌われて、いらないと捨てられて。










「・・・学校。」


「え?」


「どうする?が起きるまでお前さん動けんじゃろ。俺はこれでもう学校に行く」


「早すぎません?」


「練習はいつからでも早すぎるなんてことなか。」


「・・・・俺も行きます。」






の体からゆっくりと手を離す。



の下になっている手も少しづつ動かして。






「・・・・・ん・・・」


「・・・・・・起きないっすね。」





少し眉間にしわをよらせたを見ながら俺は体を起こした。



はすぐに元の寝顔。






「いいのか?」


「いいっすよ。きっとは学校に来てくれますから」


「・・・・・」





昨日の家を訪ねたままだから荷物は学校に一式ある。




























































「今度は、から会いに来てほしいから。」


























































が起きて俺がいなくて、



それでも俺が言ったこと、覚えてていて欲しくて。



ただ一言、にメールをした。



仁王先輩と向かうまだ朝日が見えない暗い学校への道の途中。



が起きて俺がいなくて、



それでも俺が言ったこと、思い出して欲しくて。






(・・・・シャワー、部室で浴びよ)






ただ一言、にメールをしておいた。



























































































‘俺が言ったこと、信じろよ、






































end.                   この作品が気に入っていただけましたらココをクリックして下さい。