幸村部長がある日いきなり倒れて。





しばらくはテニスが出来なくなると知って。

























『翼の生える位置11』
























「柳先輩。今日は幸村部長のお見舞い行くんすよね。」


「ああ。」


も連れて行きましょうよ。」


「赤也、は・・・」


「俺が連れて来るっす。」









いつもの昼休み。



幸村部長のいない屋上には姿を見せようとはしなかった。



多分ずっと保健室で過ごしてるんだと思うけど。
















ある日突然倒れた幸村部長。



ギランバレー症候群に酷似した病気でテニスが出来ないと柳生先輩が説明してくれた。



俺たちレギュラーはよくそんな幸村部長のお見舞いに行っているけど



何度誘ってもは一緒に幸村部長に会いに行こうとはしなかった。

















































「・・・赤也」






案の定保健室の一番奥のベッドに座っていた



今日も保険医はいないらしい。



と向かい合うように一番奥のベッドの隣のベッドに腰をかける。










、今日もみんなで幸村部長のとこ行くんだけどさ」


「行かない」








即答かよ。







「・・・なんでだよ、


「なんででも」


「幸村部長会いたがってるぞ」


「・・・・」



















神様は不平等。







「・・・嫌だ。」





「行かない。・・・行けない。」







不当に奪われた彼のもの。








「幸村部長がお前のこと思ってるみたいに、だって幸村部長が大切だろ?」







精市はテニスのものじゃないし



テニスは精市のものじゃない。









「・・・見たくない。」


「え?」


「動けない精市なんて見たくない!」」








でもテニスは精市のすべてだ。







「・・・






いつから?



誰にも話せない本当のこと赤也にだけ話せる。









気付けばいつもいつの間にか夜から朝に変わっている。



驚くことなくそれを受け入れる毎日。



誰もいない家で起き上がれば



体に残るアザがやけに目に付いて。



見ても痛みを思い出すとかそんなことはなかったけど。








学校に行く気なんかまったくなかったある日。



精市から電話。






「会わせたい奴がいるんだ」






精市に言われるがまま学校に来て



精市があたしに会わせた人が赤也だった。












、幸村部長はがんばってんだよ。またテニスができるよう。幸村部長の特別のお前がそれを見てなくてどうするんだよ。」









いつも、側にいてくれた。



あたしはダメな人間で、醜い人間で。



でも精市はいつも側にいてくれた。



あたしに大切なものをくれた。














「・・・会いたい・・・精市・・・」


「(!!)よく言った!!」












会って伝えたい。



ありがとうとごめんなさいと



赤也に会わせてくれてありがとうって



あたし赤也になら本当のこと言えるんだ。



まだ言えないことももちろんあるけど。










































「おっ」


「赤也ちゃんと連れてきたじゃん」





放課後の校門で先輩達が待っていてくれた。






俺とを。






、花買ってくから選べよ」


「あたし?」


「ブン太さん残念すね。ケーキじゃなくて」


「まったくだ」











居場所なんかどこにもなかった。



でも今は空の上じゃなくて青空の下、歩いているよ。



みんながいるから、赤也がいるから。












精市、











たくさんありがとうを伝えなきゃ。



いつも側にいてくれたあなたに。























end.                                      この作品が気に入っていただけましたらココをクリックして下さい。