あたりは暗かった。
星も月もあるのに
夜空は暗い。
の家の部屋はどこも電気がついていない
広い庭でそれが更に暗闇を膨らませ
の家は黒に包まれていた
『翼の生える位置16』
「・・・。お前どうしたんだよ」
『・・・・』
「一週間も学校に来ねぇで・・・」
ずっと一人で家に?
の家の玄関に立つ俺は
右手に持った携帯を耳に当てて
黒に包まれたの家を見ていた
「」
『・・・・赤也。ど・・してここに』
「・・・会いに来た。に。」
『・・・・』
「お前学校来ねぇと会える時なんかねぇだろ?」
『・・・・』
「な、。・・・外出て来いよ」
一人じゃこの家はでかすぎると思うから
『・・・・』
「?」
『・・・・・』
一人じゃこの家は広いだろ。
一人じゃこの夜は暗すぎるだろ。
『・・・ごめん。』
「・・・・」
『ごめっ赤也・・・会えなっ・・・・』
「・・・んで・・」
なんで。
なんでだよ。
今まで毎日学校来てたじゃねぇか。
親権放棄
いじめ
俺が気付いてやれなかったこと
でも、毎日会えたじゃねえか。
なんで突然来なくなるんだよ
会えなくなるんだよ。
「・・・親権放棄のこと幸村部長から聞いた。いじめのこと仁王先輩から聞いた。」
『え・・・』
電話ごし
聞こえるか?。
「あと何を知ればいい?!あと何に気付けば俺はお前に会える?!」
叫びにも似た問い掛け。
電話ごし
聞こえるか?。
『赤也・・・』
一人じゃこの家は広すぎる
一人じゃこの夜は暗すぎる
一人にしておけない。
一人にしたくない。
こじつけの理由ならいくらでも
この口から吐き出せる
だから、俺に会ってよ。
「教えろよ・・・何を知れば、気付けばは会ってくれんだよ・・・」
『・・・・』
「教えろよ、」
『どうして赤也は・・・どうしてあたしに、会いに来てくれたの?』
電話ごし
聞こえるか?。
「・・・一人にしておけなかったんだ」
今はまだこじつけの理由で
ホントのことは人差し指で口をふさぐ
まだ知らなきゃいけないこと
ある気がするから
『っ・・・・会いたいっ・・・会いたい、赤也・・・』
「(!!)」
俺もだよ
電話ごし
届け。
届け届け。
届けよ。
「。・・・外出てきたくないなら俺が行ってもいい?ドア開けてくれねぇ?」
『・・・・(ぐすっ)』
「。」
泣いてる?
電話ごし
聞こえるか?。
「。俺も会いてぇんだよ。」
届け。
届け届け。
届けよ。
電話ごし。
今はまだこじつけの理由。
この口から吐き出す
『・・・・・開いてるよ、玄関』
「は?」
からの言葉にでかい家の玄関のドアに手を掛けた
(キィ・・・)
「・・・(不用心だろ)」
開いたドアの奥は
月の光も星の光もない暗闇だった。
「お前・・・危ねぇよ。鍵くらい・・」
『・・・いつでも帰って来れるように。』
「(!!)」
携帯はつながったまま。
俺はの家の中に足を踏み入れた。
‘いつでも帰って来れるように’
誰が?
すぐにわかった。
「(待ってんのかよ)」
一人の家で
一人の夜に
は待っていた。
きっと帰って来ないとわかっている両親の帰り
玄関のドアをしめると俺は夜の暗闇の中に閉じ込められたみたいだった。
「、どこにいる?」
『・・・階段上ってすぐ左の部屋』
階段?
暗くてはっきりわからない。
「一回携帯切るぞ。暗くてわかんねぇ」
『・・・うん』
「・・・・」
『ん?』
「・・・・」
『赤也?』
「・・・・・すぐ行く」
通話を切った。
携帯の光を利用して玄関のあたりを照らす
玄関から入って右手の壁にスイッチを見つけた
押すと辺りが明るくなる。
「・・・・すっげ・・」
屋敷、という表現は似合わないが玄関から入ってすぐに大きく開いた空間。
の両親は相当稼いでいたのだろう、自分の家の何倍とある広さに驚く。
靴を脱いで玄関にあがった。開けた空間はそこからいくつかの扉が見え、中央にはが行言っていたものであろう階段があった。
広さに圧倒されて落ち着くために冷たくて暗い空気を飲み込んだ。
(階段上ってすぐの左の部屋)
明るくなったの家の中では向かうべき部屋が階段を上りきらなくてもはっきり目に映っていた。
階段の下からその部屋を見定める。
(。)
俺は階段へと一歩、足を進めた。
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