家でも学校でも
そこにあったはずの記憶や思い出は
お前が塗り替えていってしまう。
・・・・・って
俺はいつからこんなにロマンチストになったんだ。
『ロマンチストエゴイズム』
「ブン太!!見て見て!!」
「どれ?」
「ほらあれ!かわいい!!」
一生懸命?
そんな言葉がふさわしいかのように
が俺の袖を引っ張った。
「・・・あのピンクの?」
「その隣の白いの!」
が魅かれているのは
ゲーセンの前、路上に出されたUFOキャッチャー。
「ブン太」
「・・・とれるかわかんないぜぃ?」
「やった!」
白い・・・何だこれ?ブタ?ネコ?
「ウサギでしょ!」
500円かけてとったUFOキャッチャーのウサギ(?)のぬいぐるみ
が両手で抱き締める。
「うん!やっぱりかわいい!!」
「・・・本当にウサギ?」
「ウサギだよ!」
かわいいと言ってはうなずいて、両手でぬいぐるみを抱き締める。
気にいってくれるのはいいんだけど
「、それ左手だけで持って」
「ん?こう?」
左手だけで抱きしめたウサギの人形
空いたの右手は俺の左手がさらわせてもらう
「・・・ブン太」
「ん?」
「なんでもない」
ぬいぐるみからの右手奪取に成功。
なんでもないと言ったは
頬染めて俺に笑いかけた。
俺が取ったものだから気にいってくれるのはいいんだけど
俺がいるのはの右側だから
右手だけは空けておけよ。
手を繋げるように。
せっかくのデートだろぃ?
デートなんてのは久しぶり。
俺の部活とか、の塾とか。
2人の会える時間が噛み合わないことばかり続いたせい。
最近は会えない時間さえもと一緒にいる時間が大切だと知るために必要なのかな、
なんて考え始めた俺。
・ ・・・自分でもわかるくらいロマンチスト。
綺麗だと思うものを見つけたらにも見せたいとか。
ここに一緒にいるのがだったらいいのにとか。
(・・・いや、普通か?ロマンチストってわけでもない?)
そんなことを考えながらと食べる昼食。
向かい合わせに座ったの膝にのったウサギのぬいぐるみが俺を見ていた。
「・・・・・・なんだよ」
「ん?ブン太何か言った?」
「なんでも。」
・ ・・・ヤバイな。
にせがまれてなんとか取ったぬいぐるみ。
どうやらそのせいで2人っきりにはなれない様子。
なぜなら、
と手を繋いで歩く道。のもう片方の手は奴に奪われ。
そしての手の中で奴は俺のことを監視し続けていたから。
(・・・・お前、ウサギじゃねえだろぃ?)
「あっブン太!このお店入ってもいい?」
「ん。」
が入った雑貨屋はアクセサリーがたくさん置いてあって
はそれを眺め、見ては手に取り俺にどう?っと聞いてくる。
・ ・・・ならなんでも似合う。
言えもしない想いを引きずる、いつから俺はこんなにロマンチストになったんだ。
再びの腕の中にいるウサギと目を合わせた。
(・・・・なんだよ。そうやってそこにいられるのは俺のおかげだろぃ?)
「これかわいい!!」
「・・・・気に入った?」
「うん!買っちゃおうかな。」
の声にぬいぐるみとは目を離す。
今度はが手にしたブレスレットを見る。
「似合うかな?ブン太。」
「・・・・買ってやるよ」
「え?」
ひょいっとの手から奪ったシルバーのシンプルなブレスレット。
そのままレジに直行する。
・ ・・・・ならなんでも似合う。
これも、似合う。
「本当にありがとう、ブン太!!」
「デート久しぶりだろぃ?たまにはな。」
「ありがとう!」
「・・・・どういたしまして。」
の手にいるウサギが俺を見ていた。
・ ・・・勘弁しろよ。
ヤキモチか?
そりゃお互い様。
の左手はお前に取られてんだから。
「ね、ブン太は行きたいお店ないの?」
俺は、もっと早くに会いたかったんだ。
「あたしも何かブン太にあげたいな」
もっと早くから一緒にいたかった。
ただ繋いだ手を離すこともできずに
俺の思い出や記憶ががいる景色に塗り替えられるのを待つ。
ただ待つ。
の思い出や記憶が俺のいる景色に塗り替えられるのを。
「ブン太。ブレスレットもだけどぬいぐるみもちゃんと大事にするね!」
「・・・・・・・・・・・・俺それ、ブタかネコだと思うんだけどよ」
「ウサギだよ!耳長いよ!」
「ブタかネコ。」
「ウサギ!」
・・・・・・・過去を変えることなんて
無理だとわかっているから。
だからせめてこれからは
(ずっと一緒にいようぜぃ、。)
360°俺のまわりを塗り替えて。
繋いだ手は離せないんじゃなくて、俺が離したくないだけ。
・・・・・って
俺はいつからこんなにロマンチストになったんだ。
ずっと一緒にいようって
そう言えたらどんなにいいか。
「ブン太ー?」
「・・・ブタ」
「ウサギだったら!」
「ネコ」
「ウサギ!」
ロマンチストにはなれても
正直者にはなれねぇよ
「・・・・・・・・・・・・・ねぇブン太」
「ん?」
「これからもずっと一緒にいようね!」
白いぬいぐるみ、俺を睨むな。
俺とは両思いなんだよ。最初からお前は入れねえっての。
・・・この際イヌでよくね?
「・・・・」
ロマンチストにはなれても正直者にはなれないから
手を少し強く握り直して答える
は俺の代弁者?
「・・・絶対大事にしろよ?そのイヌのぬいぐるみ」
「・・・いつからイヌになったの?」
この道も今日も
家や学校での思い出や記憶も
お前がいる景色に塗り替えて。
俺の360°を張り替えて。
それが可能なくらい
ずっと一緒にいようぜぃ?
End.