冬は、嫌いだ。















『涙々』













真っ白な景色



眼前を埋め尽くす雪。







「…コート見えねー。」







都会に雪は降らない。



…そうでもない



見てみろよ。



白しかねえよ。









「あーかや。」







いつも部活の連絡に来てくれる



テニス部のマネージャーの先輩。





「今日も筋トレっすね」





コートは雪で使えないから



最近の部活はずっと体力作りと筋トレ。





「ううん、はずれ、赤也。」


「え。」


「今日は雪合戦だって。テニスコート集合。」


「…柳先輩?」


「真田。」


「え。」





あの真田先輩がそんな発案するわけない。



絶対柳先輩か、仁王先輩にのせられたんだって



思わずそう考えた。














冬は、嫌いだ。



寒いっつーより



いろんなものが冷たく思えて



仕方がないから。



(こうなるとテニスもできないしさー。)

















「…マジかよ。」










放課後のテニスコートでは



テニス部員が全員本気で雪合戦。





「死ね!赤也!!」


「うをっ!!」





丸井先輩の投げてきた雪玉を



全力で避ける。





「当たった奴から雪かきだからな!!」





あ、ジャッカル先輩雪かき一番手。











安全なところに行こう。



俺の出した結論。



戦場のコートを走って目的の人を探す










「って、先輩も参加!?」


「あたしに当てちゃいけないのよ赤也。あたし、当て専門なんだから。」







目的の人は



ジャージを着てマフラーをまいて



しゃがんで雪玉を作っている先輩。



もともと白い手が真っ赤だ。







「手、冷たくないんすか?真っ赤(かわいいけど)」


「…赤也。」


「え?…のわっ!!」







俺の顔面すれすれを通過した雪玉。



さっき先輩が作っていた雪玉だった。







「あたし当て専門なんだって。」


「ちょっと待って!!まだ当てないで!!」










話聞いて。



俺、冬も雪も嫌い。








「初耳」


「だから、雪合戦嫌っす。」


「楽しくない?」


「ビミョー。」









(ばしっ!)








…顔が冷たい。



なぜって?



先輩が俺の顔に投げてきた雪玉が



たった今顔面に直撃したから。



顔から雪をはらう





「…先輩、話聞いてました?」


「赤也、雪かき。」


「だーからっ」






「雪かかないとテニスができない。冬が寒いのは当たり前。
いろんなものが冷たいって思うのは赤也がそのぶんあったかいから。」








好きになったらいいじゃない。



あなたが言った。







「…なれますかね。」


「なれるよ、だってあたしは冬好きだもん。雪合戦楽しいよ。」







笑うあなた。



白い息。



あなたが好きだと言った。



ただそれだけ。



(俺って単純。)



少し冬が好きになった瞬間は



冬の外が熱いと感じた時だった。










あなたの手のひらで



溶けた雪の一滴。



ほら、
















涙みたいだ。

















end.