「南!南!あれ誰?」
「なんだよ、いきなり・・・・」
「あのほら!テニスラケット持ってる、ほら!・・・・・・砂糖菓子みたいな女の子!!」
「・・・・・・・・・砂糖菓子?」
突然の出会いに歓喜。
君の名前を知りました。
夏に始まったこの想い。
秋。本日誕生日に
どうにか君を、俺だけのものにしたくて。
『砂糖菓子』
「おはよう、!」
「おはよー、清純」
「、。」
「ん?」
「今日は何の日でしょうか!」
「・・・・・・・・・部活に呼ばれた日?」
「ちがーう!!」
頬が冷えるのは風のせい。
息が白いのは秋が深いから。
今日は11月25日、休日。
そんな中、学校に来ているのは部活の練習に来ている生徒たち。
テニス部だって例外じゃない。
「先輩!フォーム見てもらっていいですかー!!」
「いいよー!!」
「あっちょっと!!!」
「またね、清純。清純もちゃんと後輩指導、してあげなよ?」
俺に手を振りを呼んだ女子部員のもとへと駆けていった。
「・・・・・そんな・・・」
急にぴゅ―と吹いた風に俺は身を震わせ。
昨日の晩、俺の携帯に電話。
我らが後輩、室町君から。
明日女子テニス部と合同練習をするってことで
勉強で忙しいところすみませんが、もしよかったら練習見に来ませんか?って。
俺たちは夏が終わって、結構前にテニス部を引退していた。
久しぶりに呼ばれた部活。
中学3年ってことは進級試験もある。
こんな時期に呼ぶのは少しおかしくて。
そう考えたら、明日が明日だからもしかして俺の誕生日パーティーでも開いてくれるんだろうか。
そう思うとなんだかくすぐったくなるような恥ずかしさと嬉しさが俺の中に生まれて、
一言二言で了解の返事をした。
「ん?」
『どうかしました?千石さん』
「明日女テニと合同練習なの?」
『そうですよ』
「・・・・じゃあもしかしても来る?」
「え?・・・ああ、はい。たぶん。」
明日は俺の誕生日。
君に、会えるの?
は女テニの部長。
俺がその存在を知ったのは今年の夏。なんて、遅い。
今までいろんな女の子に目をやっていて、
全然気付けなかったんだ。
こんなに近くにいた砂糖菓子みたいな女の子に。
「おい、千石。妄想中に悪いけどちゃんと指導しろって」
「あっ!ひどいな、南!妄想中じゃなくて回想中なんだよ!」
「ああ、わかったわかった!ほら、行くぞ!」
「うわっ!!」
南に首根っこ掴まれてずるずうと引きずられていく俺。
さっきよりもとの距離が遠ざかる。
離して、南!!
そう言おうとしたところで目に入った、
の、笑顔。
(・・・かわいい)
甘くて、砂糖みたい。
部活をやめて今まで以上に白い肌。
口に入れるとふわっと広がる真っ白な砂糖菓子。
そっくりだと思う。
今日、誕生日なのにな。
は俺の誕生日、知らないんだろうか。
「千石先パーイ!」
「ん?」
「「「誕生日、おめでとうございまーす!」」」
「おっ!ありがとー!!」
部活の休憩中。
女テニの女の子達三人組が俺に近づいてきた。
1人が手に持って俺に差し出すあったかい紅茶。
よくよく見ればその紅茶の紙コップは今日練習に来ている部員も元部員も手にしているもので。
「ってこれみんなに配ってる奴だよね?」
「いいじゃないですか。どうせ昨日いっぱい誕生日プレゼントもらいましたよね?」
「ばれたか。」
「先輩、先輩。15歳の抱負は?」
「んー。・・・・15歳もラッキーで!」
「「「もう十分ですよ!!」」」
・ ・・いやー女の子って本当にかわいいよね。
笑顔が特にそう思わせる。
3人組はひとしきり俺をからかって笑うと俺に手を振って去っていった。
おめでとうってきっと使い古されてきた言葉。
でも小さい頃から何度言われてもうれしいのは何でだろう。
聞き飽きないのは、言われるたびにくすぐったくて
ほんの少し恥ずかしくなるのはなんでだろう。
秋の深まっていく今日この頃はとても寒くて。
そんな中、元気に練習をしている部員たちが微笑ましくて仕方がない。
引退した俺たちは今日はコートには立てないから。
「あっ!いいな、清純。紅茶。」
「。お疲れー!」
「寒いね。あたしももらってこようかな。」
「・・・・・・・・・なんだったら飲む?」
が手をこすりながら白い息を吐きだしていた。
さっきのさっきまでコートの上で頑張る後輩にテニスのアドバイス。
頑張るのはも一緒。
そんなに俺は飲みかけの紅茶の紙コップを差し出した。
・ ・・・狙ってたわけじゃなくて。
って言ったら嘘だ。
「・・・・いいや。清純との間接キスは今日じゃなくても!」
「・・・・・・ばれたか。」
「ばれたね。」
「(・・・・あ。)」
砂糖菓子。
「南ー!紅茶まだある?」
「あるぞー?」
「あっ俺も行くよ!!」
が南の元に向かって足を進めるので俺もの隣に並んで歩いた。
ちなみにあったかい紅茶は南のいるベンチの近くに、ポットに入っておかれてる。
「ねえ、」
「ん?」
「あててよ、今日が何の日か!」
「・・・・・・・・紅茶の日?」
「違う!!」
紙コップを手にしたに聞く。
紅茶を飲みながらが小首をかしげる。
(・・・本当に知らないの?)
続かない会話。
当てて。俺に言って。
おめでとうをちょうだい。
昨日の室町くんの電話を切った後。心に決めた。
明日は俺の誕生日。
今まで迎えてきた15回の誕生日の中で一番うれしいプレゼントが欲しい。
君がおめでとうをくれたら、伝えたいことがあるんだ。
夏に始まったこの想い。
秋。本日誕生日に
どうにか君を、俺だけのものにしたくて。
「・・・清純?」
「(・・・かわいい)」
「今日・・・何の日だっけ?」
「・・・・。かわいい。」
小首をかしげる君。
そんな聞き方は反則。
思わず声にだってだしたくなるよ。
「・・・それ。聞き飽きたよ」
「飽きちゃダメだよ!」
「だって清純、会うたびに言うんだもん。」
本当にそう思うから。
その仕草。俺以外に見せないで。
「南ー!紅茶おかわりー!」
「自分でくめよそれくらい!横着すんなー」
「何よ。ケチだなぁ南。」
「ー!聞こえたからな、今の!!」
「ははっ・・・・・・」
・ ・・・・・あ。
砂糖菓子。
南に笑ったの笑顔。
やっぱり甘くて、砂糖みたい。
ねえ、それ。
俺だけのものにならないかな?
女の子ってみんなかわいい。
笑顔がとくにそう思う。
でも、君の笑顔は特別。
俺の特別。
「かわいい、。」
「・・・・・・飽きたって」
「だって、本当にそう思うんだよ!」
「・・・・・そうやって、さっきの子達にも同じこと言ったの?」
「え?」
小さなの声。
すべてを聞き取ること、できなくて。
ただは寒いねと言って
困ったように笑った。
(・・・・なんで)
なんでそんな顔。
笑って。
砂糖菓子みたいな笑顔。
俺の特別。
「っ・・・・・・」
「練習始めー!」
「あっほら!清純も行かないとね!」
「!」
は部員たちと一緒にコートに走り出した。
俺は目でその後姿を追うしかなくて。
だって、理由なんかわからない。
君が、困ったように笑う理由。
「千石さーん!」
「・・・・今、行くよ」
今日は俺の誕生日。
昨日は学校でいろんな子達におめでとうをもらった。
今日は休日で平日の昨日にしか、みんなに会えるときなんかない。
みんなそう思ってか。
昨日は学校でいろんな子達にプレゼントをもらった。
にも見せに行った。
見てみて!って。
なんて幼稚な気の引き方。
はその時も笑って小首をかしげるだけだった。
俺はその仕草がかわいいって思うばかりでかわいいって言うばかりで。
そうか、は明日俺を祝ってくれるつもりだなって。
根拠もないのに思ったり。
「・・・・千石?」
「・・・南。俺ってバカ」
「は?・・・いやそんなの前から知ってるけど・・・ってなんだよいきなり」
「南、ひどいね」
ぐすって俺が泣き前をすると南があきれてた。
俺は熱く後輩にアドバイスする南の隣で
遠くのコートで同じく後輩の練習を眺めるを見た。
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
きっと、知ってるよね。
・ ・今日が俺の誕生日だって。
言ってくれるよね、おめでとうって。
ねえ、伝えたいことがあるんだ。
砂糖菓子みたいな君に。
「じゃあ、今日はこれで練習終わり!先輩達にお礼を言います!ありがとうございましたー!」
「「「「「「「ありがとうございましたー!!」」」」」」」
日が暮れるのが早い秋。
夜がすぐ迫ってた。
空はもう暗くなりかけてて。
寒い中練習を頑張った後輩たちに、今日集まった旧部員たちはお疲れの声。
「千石先輩!まだ帰っちゃダメです!!」
「ん?・・・なんで?壇くん」
「ダッ・・・ダダダーン!!とにかく帰っちゃダメですー!!」
「ははっ・・・・・わかったよ」
ちょっと意地悪をしてみたくなって。
後輩たちが慌てて部室に入っていく。
みんな秘密とか下手な部類なんだろうな、とか思ったりする。
「・・・・南も残ってくれるんだ。」
「なっ・・・・なんのことだよ!」
「・・・南も嘘つけない人だよね。」
嬉しい。
昔から。誕生日って変わんない。
必ずやってきて。
ありがたくもそれを祝ってもらえる。
ちょっと離れた同じコートの上では女テニが解散しているところだった。
が笑って後輩たちと話している。
きっとも祝ってくれる。
みんなと一緒に。
の様子を見ていると後輩と話を終えて、こっちに向かってが歩いてきた。
俺たちに手をあげてお疲れと言った。
「南。今日は帰るね」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・え?」
「待てよ、!だってこれから・・・」
「・・・・ごめんね。何か風邪っぽいし帰るね。」
困ったように、が笑った。
すぐに踵を返してが俺たちに背中を向ける。
・ ・・・なんで?
本当に知らないわけじゃないでしょ?
君はおめでとうもくれないの?
言ってよ。ちょうだい。
伝えたいことがあるんだ。
が祝ってくれたら、お願いできる。
最高のプレゼント。
ちょうだい、俺に。
砂糖菓子。
「・・・・南。俺ちゃんと戻ってくるから!」
「・・・・わかった!!」
の背中を俺は追いかける。
俺は走って、は歩いていたからすぐに追いつく。
「!、待って!」
「・・・・・・なんで?」
「まっまだ当ててくれてないよ!今日がなんの日かって!」
「・・・今日?」
の足はとまらない。
俺とはもう校門の近くまで来てしまっていた。
本当に、このままじゃ帰ってしまう。
君が。
「・・・・・・知らないよ。何の日かなんて。」
「・・・・っ・・・・」
「バイバイ、清純。またね。」
帰らないで。
「・・・・なんで?知ってるでしょう?」
「知らない」
「!」
「知らないったら!!」
の手首を掴んでの足を止める。
の手首は細くて、吹いている風は冷たくて。
俺はの瞳を捕らえる。
を俺の真正面に向かせる。
「・・・・・・・・・・?」
「・・・・・・知らない・・・・知らない、清純なんて・・・・」
は、泣くのを我慢してるみたいで、
唇をかみ締めていた。
・ ・・・なんで?
俺、何かした?
わからなくての手首から手を離して、
そっとの頬に手を添えた。
の肩がびくっとはねる。
「・・・・かわいい、。」
「・・・・・・聞き飽きた。」
「・・・かわいい。・・・・・かわいい、かわいい。かわいい。」
「っ・・・・・・やめて!」
がうつむく。
本当にそう思うから言うんだ。
君が聞き飽きても本心だから何度だって。
「・・・やめてよ・・・・。他の女の子と同じにしないで」
「え?」
「みんなに言ってること、言わないで・・・・」
「・・・・・?」
「・・・・・・同じにしないで」
・ ・・・ダメだ。笑うなって俺。
いくらうれしいからって。
が頑張ってるんだから。
俺が頑張んなくてどうすんの?
「同じなんかじゃないよ。」
「・・・・・・・・・・・」
「は、俺の特別。」
だから顔をあげて。
ちょうだい、砂糖菓子。
甘くて、砂糖みたいな君の笑顔。
「かわいい、!だけ!!」
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・・かわいい」
寒い風に負けないようにを抱きしめる。
は小さくて俺の腕の中にすっぽりと納まった。
寒いけどあったかい。
紅茶みたいで。
そういえば今日のあの紅茶も甘かったな。
白い砂糖が入って溶けてたんだろうか。
「・・・聞き飽きたよ、そんなの」
「・・・・・ねえ、言ってよ、。」
「・・・言わないよ」
「なんで?知ってるでしょう?今日が何の日か」
「・・・・・だって。」
突然の出会いに歓喜。
君の名前を知りました。
夏に始まったこの想い。
秋。本日誕生日に
どうにか君を、俺だけのものにしたくて。
「だって清純は、一度だって言ってくれたことないじゃない。」
今更だけど。
今更だけど言わせて。
「・・・・・・好きです、。今日一日でいいから俺のこと好きになってください」
「・・・・今日だけでいいの?」
「・・・・・そう言ってくれると思った!!」
「・・・・・・バカキヨ」
あ。
砂糖菓子。
君が笑う。
「誕生日おめでとう、清純。」
きっと使い古されてきた言葉。
でも小さい頃から何度言われてもうれしいのは何でだろう。
聞き飽きないのは、言われるたびにくすぐったくて
ほんの少し恥ずかしくなるのはなんでだろう。
特別な君からのおめでとうが他の誰かがくれるものより
こんなにうれしいのは、どうしてだろうね。
「大好きだよ!!!」
砂糖菓子のような君。
伝えたかった。
俺の誕生日の今日。
初めは見ているだけでよかった。
でもいつからか俺だけのものにしたくて。
ねえ、
世界中に叫びたい。
「大好きだよ、!大好き!」
「・・・・・・・・・あたしもです。」
笑っててほしいんだ。
甘くて砂糖みたい。
真っ白で口に入れればふわっと広がる。
大好きだから、
かわいい君が。
俺の特別の君が。
「「「「「「「「ハッピーバースデー!!千石先輩!!!!!!!!」」」」」」」」」
「ありがとう!!」
クラッカーの音と同時スタート。
部室のドアを開けた瞬間。
くすぐったくなるような恥ずかしさとうれしさ。
その言葉、昔から変わらない。
何度言われたって何度繰り返されたって。
俺とは手を繋いだまま部室の中に入り、用意された席についた。
「先輩もおめでとうですー!!」
「だっ・・・・壇くん・・・」
みんなが笑うのでも笑うしかなく。
砂糖菓子。
うれしいので俺も笑う。
パーティーの最中。
が俺の耳とでそっと言う。
「誕生日おめでとう、清純。・・・・・・大好き。」
君からの初めての好き。
うれしくてかすめとるようなキスを送った。
もちろん一瞬のことで。誰も見てないところを狙って。
の顔が赤く染まって。俺はそれにまた笑う。
‘おめでとう’
きっと使い古されてきた言葉。
でも小さい頃から何度言われてもうれしいのは何でだろう。
聞き飽きないのは、言われるたびにくすぐったくて
ほんの少し恥ずかしくなるのはなんでだろう。
特別な君からのおめでとうが他の誰かがくれるものより
こんなにうれしいのは、どうしてだろうね。
今まで迎えてきた15回の誕生日の中。一番のプレゼント。
大好きだよ、君が。
世界中に、叫びたいくらい。
End.