信じたのは
君が
そう言ったから。
『世界の見方』
関東大会決勝。
自販機で何か飲み物を買おうとしていた時。
聞こえたのは、ずっと聞きたかった声。
「いつから?」
「さあの」
「気付かなかった。」
「気付けなかった?」
「・・・意地悪。」
ダブルス1での俺と柳生のすりかわり。
みたいに気付けなかった奴は山ほどいるはず。
‘ペテン師’
そう呼ばれてる。
別に抵抗はない。
「怒ってる?」
「いいや。」
「嘘つき」
お前でさえ
そう呼ぶのなら心地いい。
は・・・、はもともと俺達立海大附属テニス部のマネージャーだった。
今は
青学に転校して、
青学のテニス部でマネージャーをしている。
「勝手にいなくなるからじゃ。」
「みんなにはちゃんと言ったもん」
「俺以外にな」
「・・・雅治、会ってくれなかった。」
(転校なんてして欲しくなかったからじゃ)
お前が
そう言ったから
信じてた。
“世界って綺麗なんだよ”
「ごめんなさい。」
「今さら」
汚い、真っ暗な、偽りの世界。
その世界代表の俺。
「大嫌いじゃ。」
「っ・・・」
こんな世界も
そんな泣きそうな顔しかさせてあげられない汚い俺も。
「嫌いじゃ」
「・・・」
醜い心も
朽ち果てた優しさも
俺だけが知っていればいい。
「・・・お前さんが言ったんじゃ。綺麗だって」
「雅治?」
嫌いな、大嫌いなこの世界が
ホントは美しいのだと
そう言ったのは
。
「好いとうよ。。」
「!!」
「ホントは行くなって言いたかった。」
“世界って綺麗なんだよ”
お前がそう言うのなら信じなくはない。
お前が近くにいるなら、確かに世界は美しい。
「ー!!」
走りよってくる人。
青学の・・・確か菊丸。
「・・・お迎えじゃ」
「あっあたし、あたしも・・・!!」
「しー。」
この目に映る全てが
この肌に触れる全てが
「全国でまた会おうの。」
この汚れた世界の全てが
「雅治!!」
お前がそう言うのなら
信じよう。
「世界って綺麗じゃの」
俺は一気に仲間のもとまで走る。
きっとまだお前は
おれの姿を見てるはず。
お前のこの美しい世界で
お前が俺のことを考えずにいられなくなればいい。
(勝手にいなくなった罰じゃ)
「・・・ペテン師」
「ん??顔真っ赤だよ?」
「・・・はめられたの」
「え?」
この綺麗な世界で
俺はお前のことを
考えずにはいられないから。
end.