「なぁ、知らん?」
「あー・・・・ね・・・・。」
「何や。何かあったん?」
「実はさ、・・・」
『幸せにすると誓うから』
カバンはの席にかかってた。
靴も下駄箱にあった。
けれど、いつも明るくて笑っている自身の姿は教室には見当たらなかった。
「こんなとこにおったんか。」
「何よ。・・・今は忍足と話す気分じゃないの。どっか行って。」
「ひどいなぁ。俺、心配してのこと探してたんやで?」
誰もいない授業中の保健室。
は保健室にあるベッドに俺に背を向ける形で腰掛けていた。
保健室の入り口に立って見つけたの背中に、いつもの明るい印象はなくて
どうしようもなく苦しかった。
「・・・別れたんやて?」
「・・・・」
少しずつに近づく。
一歩一歩の様子を伺うように。
「誰か・・・話しちゃったんだね、忍足に」
「。」
同じベッドのの隣に座ろうとして、気が付いた。
「泣くなや。らしくない。」
「っ・・・・」
「・・・・俺に話してみいひん?いつものろけてたみたいに。きっと楽になるで?」
あとから、あとから零れてはとめどないの涙は
どうしようもなく苦しかった。
「好き・・・・だったのっ・・・。」
「そうか・・・」
「なんでっ・・・あたし・・一緒にいたかっ・・・」
には、付き合ってる奴がいた。
いつも明るくて笑ってるは
そいつの話をする時、とても幸せそうな顔をしていた。
俺は、その表情を見るたびにどうしようもなく苦しくて。
「ずっと前から・・・ずっと前から想ってた・・・・。」
「・・・・うん」
俺もや。
「どうしたらよかったの?・・・・どうしたら側に・・・いられた?」
「・・・」
俺もや。
俺かて、ずっと好きやった。
のこと。
「泣くなや、。らしくない。」
の隣に座る俺にはこんなに近くにいても
の涙をどうしてやることも出来なかった。
俺にとってはとそいつが別れたことは朗報。
でも、。
幸せな顔をするのも、そんなに泣くのも
いつも
そいつのせいなんやね。
「失恋には、新しい恋がええって聞いたことない?」
「え?」
泣くなや。らしくもない。
「俺のこと好きにならへん?」
誰かの代わりでも、俺はかまわないから。
「・・・・・・・」
「なぁ、。」
泣くなや。
言葉もいらん。うなずいてくれるだけでいい。
「・・・・ずるいよ、忍足・・・。」
「うん・・・・。ずるくてもええねん。卑怯でも。が弱ってるところにつけこむから、俺のこと好きになって?」
「・・・・・」
あとから、あとから。
の涙は止まらない。
「っ・・・・」
「。」
が両手で顔を覆ってうつむいた。
が好きになったそいつより、俺が先にお前と出会っていたら、
に幸せそうな顔をさせてあげられるのは、俺だっただろうか。
「泣くなや、。」
明るいあの笑顔はずっと俺に向けられていただろうか。
弱ってるところにつけこむから、俺のこと好きになって?
言葉はいらない。うなずいてくれるだけでいい。
誰かの代わりでもかまわない。
の明るいあの笑顔が見たいだけ。
「俺じゃ、あかんの?」
「・・・・・・・・・っ・・・忍・・足・・・」
は顔をあげてはくれない。
泣かないで、うなずいて。
いつもみたいに明るい笑顔のでいて欲しい。
例え俺じゃない誰かにむけた笑顔であっても。
「・・・・好きや、。」
「・・・・・・」
「俺のこと好きになってくれへん?」
好きなんて言ってくれなくてもいい。
言葉はいらない。うなずいてくれるだけでいいから。
だから、泣くなや。
の笑顔がみたいだけ。
「・・・」
両手で顔を覆ったはうなずくことはなかった。
小さな声で‘ごめん’と涙声で聞こえてきたことが
どうしようもなく苦しかった。
誰かの代わりでも俺はよかった。
ただあの明るい笑顔が見たいだけ。
泣くなや、らしくもない。
弱ってるところにつけこむから、俺のこと好きになって?
言葉はいらない。
うなずいてくれるだけでいい。
幸せにすると誓うから
だから、うなずいて?
end.