「うーんと・・・・」
「ジローちゃん、さっきからどうしたの?」
「あっ。なんでもないよ。・・・・えーっと」
「・・・・・」
ジローちゃん、なんでもなくなさそうだね。
『幸せをあげる』
「悩みごと?」
「うーん・・・」
ジローちゃんがうなる。
うーん、とか。
えーっと、とか。
「考えごと?」
「えーっと・・・」
「あたしじゃ相談できないこと?」
「そうじゃないんだけど・・・けどね、。・・・・うーん」
「・・・・」
ジローちゃんがうなり始めたのは
デートの最中。
あたしとジローちゃんが付き合い始めて今日で3ヵ月。
今日のデートでジローちゃんはあたしに指輪をくれた。
うれしくて、うれしくて。
「!これからもよろしくね!」
そう言ってジローちゃんがはめてくれた左手の薬指の指輪。
あたしはうれしくて、うれしくて。
幸せいっぱいの今日のデート
夕飯を食べて行こうってことになって
2人ではいったレストラン。
注文したものを食べ終えて
話している途中で
ジローちゃんは、うなり始めた。
「うーん・・・」
「・・・ジローちゃん」
行儀が悪いって言われるかも知れないけど
レストランのテーブルに両肘ついて
両手で顔を支えて悩むジローちゃんの姿は
かわいかった。
「ジローちゃん、相談ならのるよ?」
「うーん・・・」
「あたしじゃダメ?」
「そうじゃないよ、そうじゃなくて・・・」
あたしの指で
ジローちゃんがくれた指輪が光る
銀のリングに小さな白っぽい石のついた
かわいい指輪
ダイヤだったらどうしようって
高そうでちょっと不安になってみたり。
「・・・にね」
「うん」
「にあげるものを考えてたんだ」
「あげるもの?」
ジローちゃんが打ち明けた
悩みごと。
「あたし、もう指輪もらったよ?」
「あのね、言葉」
「言葉?」
「うん。言葉を探してるんだ」
「これから先もを幸せでいさせてあげられるような、消えない言葉」
指輪は形
2人が一緒にいた三か月の形
指輪は形
これからも一緒にいられるお願いの形。
「うーん・・・見つからない」
「・・・・・」
行儀が悪いって言われるかも知れないけど
レストランのテーブルに両肘ついて
両手で顔を支えて悩むジローちゃんの姿は
かわいかった。
そんな風にあたしへの言葉を探してくれる
あなたは。
「・・・えーっと」
「ジローちゃん」
「ごめんね、。まだ見つからない。」
「・・・今の言葉で十分だよ」
‘これから先もを幸せでいさせてあげられるような、消えない言葉’
「あたしは、ジローちゃんからいっぱい幸せをもらってるよ」
付き合って今日で三か月。
形も言葉も今までくれたもの全部
消えないよ。
ジローちゃんがくれるものだから。
「でも、あげたいよ。俺はこれからもに幸せって思って欲しいよ」
「ジローちゃん、その言葉もあたしに幸せをくれてるよ。」
「でも・・・」
あたしの指で
ジローちゃんのくれた指輪が光る。
「あのね、ジローちゃん。あたしはジローちゃんにたくさん幸せをもらったから。だから今度は・・・」
あたしが、ジローちゃんに
幸せをあげる。
End.