君にすがる、
みっともない俺のこの感情を
解く術を、俺は知らない。
『私的慕情』
「ん・・・ちょうたろ・・・」
あがる体温。
離れるのが惜しいあなたの唇。
「ね、さん続きしてもいいですか?」
「・・・」
ただ小さくうなずいてくれるあなたがかわいくて、
毎回こんな聞き方をしているなんて、
本当のことを言ったら
あなたは、
どうするかな。
「ふっ・・・あっ・・ん・・・・」
きっと、赤くなって
「さん、気持ちいい?」
少しだけ怒る。
「・・長太郎・・・」
もっと、名前呼んで。
「ごめっ・・ごめんね・・・」
「・・・謝らないでください。」
さんは、
ずっと跡部さんの彼女で、
それは
彼女の感情の問題じゃなかった。
「ごめんね・・・・ちょた・・・っ・・・」
婚約者だと、ご両親に決められて。
でも跡部さんは
さんが好きだったから。
「・・・今はちゃんと、俺の腕の中にいますから。」
「ごめっ・・・なさい・・・」
謝らないで。
そんな言葉が聞きたいんじゃないから。
「さん、もっと名前・・・呼んで?」
「んぁっ・・・長太郎・・・あっ・・・ん、ん・・ちょうた・・ろ・・・」
誰があなたを好きでも
たとえ初めてあなたを手に入れたのが
俺じゃなくても。
(・・・そう考えると悔しいけど)
今この腕の中。
あなたがいるから。
「っ・・・・・・・」
だから、謝るんじゃなくて名前を呼んで。
ごめんじゃなくて好きだと言って。
「・・・長太郎・・ん・・あっ・・・だ・・い好き。大好き・・だよ。」
君にすがる、
俺のこのみっともない感情を
解く術を、俺は持たない。
「俺も・・・大好きです。」
愛しいあなたの声で
もっと呼んで、もっと言って。
愛しいあなたを
俺は放しはしないから。
end.